時間仮説
二日後出勤日に
「おはようございます」
と店長に挨拶すると
「おはようございます。裏にあるテーブルで会議しようか」
と話し合いになった。
「何かまずいことですか」
たずねると、
「マユさんは、熱心でいいね」
少しだけほめてくれた。
「まずは、三つの原則の話しをしよう」
三つとは、こういうものだそうだ。
一つ、オートリバース機能を使うと、トンネルに穴を開けるようなエネルギーのため、金属を疲労させやすいため、トケルンが壊れてしまう。
オートリバースとは、つまり緊急避難のことで、設定しておくと便利だが、店長はおすすめしないらしい。
二つ、未来よりも危険なのは過去だ。
理由はこのダストテンダーが開店するより前に戻ると、店長と話しができなくなり、時計が壊れてしまったあと、修理できずにこれからの生活や経験を無駄にするかもしれない。
三つ、秒をきざむほど細かい移動ほど危険だ。
過去の経験では、一分に六回移動を繰り返した場合、金属劣化がおこり、手持ち金属がすべて壊れて、移動者は記憶をなくすほどの衝撃をうけたらしい。
つまり、のんびりと移動時間を確保するほうが、より遠くに移動しながら、長持ち便利に使えるということらしい。
「店長は、時間移動を利用した、悪さは考えていないのですか」
こう聞くと、
「妖精と時間仮説を教えようかな」
という話しになった。
「時間管理と移動を平気でできるのは、時間の柔軟化という要素に任せて、葉が落ちるのを待っているからだ」
「例えば過去の自身が存在する空間に、移動した時点で、過去の自分の記憶を上書きするだけで、変化はホンの少ししか動かせない」
「できるのは過去では、管理と観察だ。だから書き換えるなら、未来だ」
「一番分かりやすいのは、未来におこる事情をすべて過去のひとに説明するとする。それをおこなうのなら、そのあと説明時間分だけ、過去消費を起こす」
「そして、移動から戻ると寝ていた夢のような存在にしかならない。これを俗にいうと妖精パラレルシフトと呼ばれる」
「幻の妖精をみつけて、それをほかの相手に理解してもらい、その相手が妖精を見つけられるように努力すると、努力が一生分かかり、未来においついてしまうこと。未来のことは未来にしかないんだよ」
妖精パラレルシフトはそういう意味の言葉なのだそうだ。
「けれど、一人だけ妖精をみつけたひとがいる」
「妖精をみつけた、ですか」
「博士の話しは今度にしよう。でも博士は妖精をみつけたようだ」
と言われてしまった。
ここまで説明を受けとると、
「トケルンは使い方は、まだ慣れないかな。そんなに日付経っていないし」
と聞かれる。
「まだ不慣れですけど、少なくとも愛着は湧いてきましたよ」
「そうか」
店長が不意にいう。
「もしかしたら、きみはそのうち幻の妖精に出会うかもしれないな」
「幻の妖精?」
とりあえず、
「わかりました」
と伝える。
「今度はどんな依頼ですか」
「公園にあるサークルが不安定なのは話したかな。危険もあるが、その不安定な要因には、未来の要素のうち現在進行形の様子で、おそらく時間管理が変更され続けているのだと思う」
「依頼は、たぶんうまくいかないかもしれない。けど、できるかぎり細かな事情を知りたい」
それは、ある日程から一年ごとに、ダストテンダーにいきつき、その場にいる店長からの依頼をメモし、不安定なゆらぎが起こったら、どの地点に飛ばされているのかを三年期間ほど試してほしい、という依頼だ。
「現時点DT00から三回分。その三回で何か起こるかもしれない。戻れなくなる危険や体調不良、いくつか続くかも知れないけれど、受けてくれるかな」
そのつもりで出勤してるわけなため、
「はい」
と返事した。
すると、まずは今日テストで、サークルが不安定かを確かめるから、留守をまかせた、と少しの間の留守番を頼まれた。
「一時間後で戻るから、それまで」
と言われて、店長と細かな仕事の打ち合わせをする。
打ち合わせは、拾いもの屋さんがきたら、査定表示をみながら、個別判断することと、責任者不在だから、と日程を教えてもらうこと。
並べた商品は、時計デバイスは説明が大変だから、それ以外の品物なら、割引は適度にして販売していい。
あとは、固定電話が鳴る場合には、ロクな用件はこないから、出ないで留守電をきいておいてくれ、ということだ。
それで、店長は調査にでかけてしまう。
その一時間の店長不在の間には、以前きた拾いもの屋さんが、別の二人を連れてきた。
「いらっしゃいませ」
どうやら、拾いもの屋さんは、連れてきた二人の訓練らしい。
集められた金属品物だけ、査定してどういう価値かを判定した。
それより先は、
「ごめんなさい。責任者不在だから、後日でいいかな」
とお願いした。
話しをきくと、拾いもの屋はホントに誰にでもなれるらしく、ひたすら歩いて金属拾いをするらしい。
あとは、拾いもの屋の人脈を把握し、場合によって交渉すること。
また来てもらうときには、もっと話をきこう。
「ありがとうございました」
二時間ほどして店長が戻ってきた。
「ただいま」
と帰ってきた。
「一つ報告、使っていた古い指輪が錆びて壊れたよ」
と説明に入る。
やはり公園のものは、移動を複数回すると、不安定になるそうだ。
一度過去時間に飛ばされ、それで三十分調査に使ったりと、大変そうだった。
こちらも拾いもの屋さんがきたこと、電話が一度きたことを伝えた。
もし、依頼をこなしにいくなら、アイテムの調整をして、それからがいいといわれて、錆びた指輪の二号機を店長に修理にだした。
あとは、通常業務時間となり、依頼はさらに二日後に実行となった。
期間があくため、その間は、時計デバイスのトケルンと仲良くなることに努める。
ホントのところは不明らしいが、デバイスと仲良くなると、錆びの進行具合がおそくなる、という伝説があるらしい。




