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第七話

第7話です。

驚く程に何も進んでいないな?

やっと設定が固まってきたので設定ゆるゆるだったのが少しだけゆるゆるじゃなくなりそうです。

よろしくお願いします。

気を失っていた。

意地だけで意識を保っていたようなものだ。

当たり前の話だろう。


「よう」


魔女衣装のヤヨイさんが、丸椅子に座っている。

腕組みによって胸が際立っているようだ。

何度虚しくなれば良いのだろう。


「生きてますわね」


「不安か?」


「いえまったく。口に出してみただけですわ」


むしろ生を実感している。

楽しかったと笑顔で言えるくらいだ。

まあ、心配事がないのかと聞かれればないとは言い難いが。


「どれくらい寝てました?」


「一時間」


「短っ」


「短いな。フィジカル化け物だろ。お前」


こういうのって一日とか5時間とか、少なくとも1時間は短いだろう。

ヤヨイさんも賛同していることだし。

なんか小説読んでるけど。


「コレットによく言われますわ」


「そうか。まあいい、動けるか?」


ヤヨイさんの隣にお盆が見える。

その上には温かい、見慣れた料理が見えた。


「栄養補給ですわね」


「自分で食えるか?」


「よゆー」


「立てるか?」


「心配しすぎでは?」


立つのは、問題ない。

歩くのも、問題ない。


「化け物だろうこれは。本当に14か?」


「失礼ですわね。14歳の乙女ですが?」


運動した後ってお腹減るよね。

あと、空腹って最高のスパイスだ。

安静にしなければということもなく、食欲の減衰もなく。

すぐに全て平らげた。


「ごちそうさまでした」


「お粗末さまでした」


「ん?」


ヤヨイさんが首を傾げる。

私も首を傾げた。

確かに味が違うなー、なんだかマリアっぽくないなー。

そんなことは思ったが。


「ヤヨイさんって料理出来たんですね」


なんとなく、口をついてでた言葉。


「できる。一人暮らしだぞ私は」


少しムッとして答えてくれる。

一人暮らし、一人暮らしか。

憧れることはあるし、いつかは一人暮らしになるだろう。

それがいつになるかは分からないが、最終目的はあのクソ親父をぶん殴ること。

そうなれば、あの親父ならば、勘当ものだ。


「一人暮らし、ですか」


「どうした」


うん、一人暮らしはいいものだ。

何となく、憧れる。


「いいものです?」


「一人暮らしがか?ふむ。いいもの、だな。いいものだ」


「どんなところがです?」


「どんなところ?あー、っとなぁどんなところ、どんなところか」


額に手をつき、うむうむと考え込んでいる。

一人暮らし、なるものは正直想像がついていないのだ。


「好きなように研究ができる、好きな事が出来る、プライベートが分けられる、ピンとこない。すまんがずっと一人暮らしだったからな」


「━━━いや、十分。ビジョンは浮かびましたわ」


「ん、そうか。なら良かった」


そう言って、栞を挟んだ本を読み進める。


「《初めの魔導師》」


「これか?」


題名を盗み見る。

絵を盗み見た。

初めの魔導師、青い髪の子供。

青い髪、ヤヨイさんは黒髪。


「ええ、それですわね」


「ただの童話だよ。実話でもなんでもない」


「そうなんですか」


なんとなく、気になっただけだ。

それと気になったのはヤヨイさんの表情だろうか。

童話というその本になにか思い入れがあるようだ。

作者は、うん名前は違うようだ。


「で、魔法のことですが」


「試し打ちするか?」


「したいですわねぇ」


「そうか。そうだな。説明は?」


「お願いします」


「おーけー。まずはあの試練についてだ」


あの試練はたしかに魔法を使えるようにする試練だ。

モンスターが現れるのは、試練を受ける者に対して魔法を使うための魔力を集めるため。

最後の試練のごとき夢は試練を受ける者への魔法を使うための鍵。

試練はまだ完了していない。

確かに魔法は使えるが期限付きの、それも最下級のみの縛りもある。

今ならば十分だろう。


「って感じだな」


「ふむ、試練はまだ完了していないというのは?」


「まだ続きがあるってだけだ。あれは第一段階だな。最終段階までいけば、全属性も自身の力量に応じて使えるようになる。段階が進めばモンスターも強くなる。試練も比例する」


「ほほお、楽しそうですわね」


「喜ぶのはお前だけだろうな」


あれより過酷な試練と聞いて思わず心が躍る。

そうするとヤヨイさんは呆れたように言った。


「仕方ないじゃないですか。よし、試し打ちしますわよっ」


「その前に食器の片付けだ」


「あっ、そうですわね」


「その後に三人と会うぞ」


「おっ、そうですわね」


「面倒くさがるな」


「うん、そうですわね」


「━━━」


「いてっ」


額を小突かれる。

恨みがましくヤヨイさんを見つめるとさっきより一層呆れた目で私を見ていた。


「お前を心配してるんだ。このまま眠らせないつもりか?」


「あっ、それはダメですね。行きましょう」


「変なところで素直だな」


「家族に対して心配をかけるのは愚かなことです」


「それにしては馬鹿なことをするんだな」


「人は愚かなものです」


「そうか」


何度か、何度もか。

呆れた声を聞くのは。


「分かった。馬鹿なんだな」


「初見でわかるものではないですか?」


「はいはい。とりあえずキッチンに行きますよっと」


「ほーい」


人が自分を見る目というものは意外とわかるものだ。

貴族社会ならば一層、それは培われることだろう。

そんなものがなくとも、今ヤヨイさんが私を見る目はただの愚か者を見る目である。

分かりやすかった。


「ん?あっイザベラ様。ご無事で」


「ご無事です。これ食器」


「ありがとうございます。二人には会いました?」


「まだですね。何処です?」


「中庭に。会いに行ってください。お皿洗いなんてしている場合ではありません」


「心配をかけたわね」


「私は問題なく。それよりもお二人です」


「了解。行ってきます」


「頑張ってくださいねー」


蛇口を捻り、水が出る。

洗剤をスポンジに垂らし、泡が出た。

キュッキュッと皿が洗われる。

そして私は扉を開けて中庭に向かう。

ヤヨイさんについていく形で、だ。


「━━━やりあってるな」


「そうですね」


一つは魔力、一つは力。

扉を開けた先に広がっていたのは、一種の地獄。

中央に魔法陣が形成され、その中で戦っているのはコレットとセイナである。


「━━━」


言葉を失った。

それは戦いというレベルではない。

殺し合いといえる、そして今の私とは次元が違った。

魔法陣内は音が遮断されているようだ。

声は聞こえず、音もない。

しかし技と技の応酬は美しかった。

氷、炎、雷、水、雨のように降り注ぐそれらは確実に命を流し、燃やし、灰とする。

防戦一方に思える力は、そうではない。

機を伺っているのだろう。

隙を晒したら一瞬で勝負がつく。


「いい勝負してるな」


「そうですね」


「お前はまだまだ成長できるだろ。問題はない」


「そうですね」


「気もそぞろか」


セイナはお世辞にも近接戦が得意とは言えない。

コレットに近寄られれば終わりだろう。

コレットも、魔法は不得手だ。

知っているとはいえ、近づけなければ得意分野に持ち込めない。

二人とも決定打をだせていない状況が続いている。

どちらも、奥義といえるものをまだ出せていない。

終わりを見たい、しかし終わりを見ることは二人の死に直結する。

止めなければと、手を伸ばす。


「待て」


その手を、ヤヨイさんが掴む。


「死ぬぞ。私に任せろ」


「できますの?」


「当然だ」


「お願い致しますわ」


おーけーだとニコニコ、魔法陣に向いて歩いていく。

パチンと指を鳴らすと青い魔法陣が消える。


「━━ッ!?」


耳をつんざくでかい音。


「「グオッ!?」」


そしてその後に続いた二人の情けない声。

瞬きしてる間に何があったのだろう。

二人とも倒れている。


「もういいぞー」


「あ、はーい!」


呼ばれたので行く。

走っていく。


「何したんです?」


まあ気になっていることだ。

二人の目を回して倒れているところなんて見たことはない。

顔を真っ青にしてトイレに駆け込んでいるところは見たことあるけど。


「突然吹っ飛んだ」


「んなわけないでしょう」


「事実だ」


まぁたしかに、そうとしか見えなかったのは同意だ。

だがまぁ、しかし、なにかしたのは明白だろう。


「何するんですか師匠!」


「いてて、何するんですか」


「起きた」


「「お嬢様!」」


「あらら、大丈夫なの?」


「ええ!ええ!お嬢様がいましたら疲れなんてないに等しいです!」


「そうですよ。お嬢様さえいれば私たちに疲れなんて概念はありません」


「んー、謎理論だけど無理はしないでね?」


「「はい!」」


「好かれるのはいいことだな」


「こんなに好かれるようなことした覚えないんですけどね」


私が起きたということだろうか。

おーきーたー、とかなんとか歌って謎の踊りを見せている。

ヤヨイさんと見つめあい、引きつった笑顔で二人を眺めた。






三人は全員、別々の分野を極めているので化け物です。

ヤヨイさんはチートレベルですはい。

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