第三話
この世界には魔法ってやつがある。
知った時はテンション上がって、やがて勝手に落胆したにゃあ。
魔法にはジャンルっていうものがあってだね。
回復だったり、攻撃だったり、補助だったり。
私に適性のある魔法っていうのは補助なのよね。
この世界に回復っていうのはないのです。
主に攻撃用のものしかありませんね。
しかも私って才能の欠片もなかったのよ。
その代わりその他のこと全部そつなくこなせるみたいです。
天才肌(魔法以外)ってやつですわぁ。
しかも自己強化だけで総魔力も少ない。
父親は私に興味ないからそんなことも知らないぞ。
知ってたらどういう反応するんだろうね、分からんわ。
「魔術書ですか?」
「うん。やっぱり諦めきれなくて」
そう話しかけてくれたのはセイナ。
声からも、書庫に来るのも彼女だけだ。
コレットは本が嫌いで、マリアは基本的に台所か中庭辺りにいる。
「お嬢様は意固地ですね」
「お母様に似たのよ」
長い赤髪、ストレートの長い髪は素直に羨ましい。
私はどれだけ髪型を変えようとしても縦ロールが崩れないのだ。
寝癖はつかないのだけどお洒落をしてみたいというそんな乙女心を嘲笑うような縦ロール。
しかも金髪ではなくセイナと同じく赤い髪だぞ。
似合わんわな、ものすごく似合わん。
ちなみにセイナが頑張って小さくするのには成功している。
「そういえば学校には通われるのですか?」
「んー?魔法学校のこと?」
「ええ、私はお教えするよりそちらの方がよろしいかと」
私ね、学校でね、虐められたことあります。
自殺未遂したこともあるんですね。
それで何年か昏睡状態になった上、母が復讐までしちゃって。
母が死ぬまで感謝感謝で支え尽くしましたよ私。
結婚もして孫も見せて、幸せな人生でしたよ。
落ち着いたらぶっ飛ばそうとしてた前世の記憶思い出して母への思いは強まったからねぇ。
私、母には恵まれてるんですよ母にはね。
実母に限るけれどな!
ということなので学校嫌です。
行きたくないです。
喧嘩はできるけど暴力沙汰にしたらいけませんよねうん。
そもそもあの子以外に私仲良い子いないし評判悪いのよね。
「行きたくは、ないわね」
嫌なこと思い出しちまったぜ。
少し俯いてしまった。
「では、外部から腕のいい魔導師を呼びましょう」
なんかすごいこと言い出したぞこの人。
そういえばコレットの親友だとか言ってたな。
元奴隷でコレットが救い出したとか。
その後に魔法学びだしたとも。
「どういうこと?」
「主の願いを叶えるのは従者の務め。ならば死力を尽くさねば。そう思い考えた次第です」
「ん、んん?呼ぶのは、誰?」
「もちろん師匠です」
私にこんな人望あったのか?
私にここまでしてくれるとかこの人完璧か?
てか魔導師、魔法使いの師匠になれるほどの人って変人しか思い至らないのだが?
?マークが無限に浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返した。
セイナは思いついたら即行動が特徴の一つである。
つまり、浮かんでは消えを繰り返している間に行動を開始していたわけだ。
うむ、もういない。
「‥‥‥ま、まあ。ありがたいわね?」
引きつった笑みが浮かんだね。
ありがてぇのよ、ものすごく。
でも、行動力化け物すぎて引いたわ。
そしてお師匠様とまともに話せんのかなって。
こう見えて私、人見知りなのよ?
いつもは精神すり減らして頑張っているのです。
よし、本を片付けよう。
そして次なる目的地に出発である。
「イザベラ様?」
「おはよう、マリア」
台所に立っているマリアちゃん。
私の朝食が見えております。
私一人にしては量が多いですねぇ、そりゃ当然ですわな。
割と昔から四人で一緒に食べてるんですもんね。
母が生きてる時は母もいてね、楽しい食卓だったぜ。
これが家族なんだよなぁ、血とか関係ないネ!
「もうすぐできますよー」
「美味しそうな匂いね。それでマリア、セイナがね。さっきね、マリアがお師匠様ここに連れてこようと出ていっちゃったのよ」
「へー、そうなんですか。は?」
「いやー、私のせいでね?責めないであげて」
「まあ、それは当然でしょうけど。うーん」
んん?怒りの表情は見えないなぁ。
それどころか少し微笑んでないかね?
ほんと微妙な変化なのだが私にはわかる。
「これで足りるでしょうか」
「あ、そういうこと」
納得した。
連れてくること自体はどうでもいいんですね分かります。
ま、私の為ならば私はだいたい許すけどね。
殺し以外なら大概は許す。
「すぐ戻ってくるでしょう」
そろそろできるので食堂へ行ってくださいね、マリアはそう言った。
マリアの料理は美味しいのだ、最高なのだ。
なので食堂へちゃっちゃと向かう。
真っ直ぐは向かいませんけどね。
毎朝日課の中庭に出てのお花鑑賞である。
乙女らしい日課にしようと始めたことだがなんだかハマりました。
「あ、お嬢様!」
「あら。ここにいたのね」
コレットが中庭にいるのはものすごく珍しい。
花に興味ないと思ったのだが、屈んでお花見てるぞ。
屈んで、んん?
「‥‥‥」
モミモミっとな。
「な、何するんですか!?」
「変わらずデカいわね」
ショートな金髪にでかい胸、私に無いもの持ってんなぁ。
私なんてぺったんこなんだぞ。
羨ましい。
女子の赤い顔はいいものですなぁ。
変態っぽくなってきた、やめとこ。
「ご飯できたらしいわよー」
「お、手伝ってきますね」
「よろしくぅ」
タプンタプンと揺らして走っていく。
ペタンペタンと私は歩いていく。
いや、いや私が胸デカイと完璧すぎるから仕方ないね。
仕方ない、はずなんだうん。
そういやローラも胸でかかったなぁ。
貧乳はステータスなんだよ、希少価値なんだ(震え声)
食堂、セイナを除いた私とマリアとコレットの三人。
コレットはセイナのことをマリアに聞いていたらしく、あの子はまたと呆れていた。
マリアのご機嫌な朝食ウマーですわ。
二人との談笑もしっかり楽しんで、後に来るであろうセイナのお師匠様の話で盛り上がりましたよ。
コレットは知ってるみたいでね、色々話してくれました。
容姿はお楽しみだとニヤニヤしてたなぁ。
まあ、楽しい性格らしいのだな。
かなりのスパルタらしい。
大歓迎なのだな!
あ、ちなみに私ね。
現在14才です。
実の家族より家族してるなこの四人。
家族ってのはこれでいいんだよこれで(某グルメ)
ブクマに評価ありがとうございます。
何となく思いついたものを書きなぐっただけなのですが読んでいただけて嬉しいです。
自分のペースで頑張らせていただきます