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第二話

義妹のお披露目とかいう名目のお茶会が開かれるらしい。

ぱちぱち、すごいねー。

元平民から貴族になれたんだって。

そう、みんなから憧れるねー。

まあそんなわけないんだが。

卑しいとかそんな感じに陰口叩かれるのは目に見えてるネ!

本人たちはそんなこと気にしないどころか気づきすらしないんだろうが。

オメでたい頭でなによりですわ。

私?私も出なきゃいけないんでしょうね。

貴族のお茶会なんて夫人方の陰口大会みたいなもんだ。

私は嫌だね。

ここで本とかコレットと殴りあってた方が万倍マシですねぇ。

でも行かなきゃいけないんですねぇ!

お断りできるもんならしたいですよ(震え声)。

いやー、ヒッキーになりたいですね。

仕事やってたらある程度無視できる前とは違いますねぇ。

しかも腹割って話せる友達もいねぇのよ。

使用人はあくまで使用人だし。

一線越えようとはしてきてくれないのよね。

上司と部下ってやつだね、うっわぁ心が。

だから余計に肩身が狭いっていうね、辛い。


「敬われるだけってのもつらいなぁ」


誰もいない、私だけの部屋でそうつぶやく。

ストレスマッハよ、その上この後お茶会なのよね。

馬車には義母アンド義妹がいるんですねぇ。

どこで心を休めればいいのか、私にはわからん。

隅っこで空気になってりゃいいのか、うん公爵令嬢だからバレますねぇ。

どうしてこうなった、とんでもない業背負った記憶なんてあらへんぞ。

神様には心がないのかな?恨むわ。


「お嬢様。馬車の用意ができました」


「わかったわ」


気が重くなる。

不思議と足取りも重くなり、それに気が付いたのであろう。

使用人、普段はあまり話しかけてこない最年少で無口のマリアが通り過ぎたところで。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫よ、ありがとうね」


「―――ですが」


「珍しいわね。問題ないわよ、お茶会が嫌なんていつものことでしょ?」


感情の起伏が乏しすぎる彼女の顔、表情から心配していると伝わってくる。

もろに気遣われるの辛いなぁ、しかしやらねば。


「お帰りをお待ちしています」


「行ってくるわ」


嫌だなぁ、ほんとに嫌だなぁ。

ため息アンドため息って感じですな。

うむむ、鬱ですよ鬱。

完全に憂鬱ですねぇ。


馬車に乗りこみまして、目の前には義母と義妹がいます。

いるんですよ、憎き相手が。

深く無言で、一言も発する気になれない。

家族が何たら、家族だからなんたら、そんなもん関係ないんだよなぁと外を見ます。

返答も億劫になってきた。


暗い森の中、そこを走り抜けている馬車。

何か暗殺目的の奴が来るかな?そんなことを妄想しながらいるんですけれど来ないですわ。

暗殺された報告は結構聞いたことあるけど私のところには来ないんですよね。

ああ、チンピラをぶん殴りたいっ!


「―――はぁぁッッ」


気晴らし=暴れるな私は野蛮なんじゃろな。

陰口叩いて気晴らしするの嫌やなって。


「どうしたの」


「わかるでしょ」


聞かれて答える。

どっちが聞いているのかなんて気にしていない。

ただ、簡単に答える。


「あんたたちと同じ空気吸ってたくない」


心の中でつぶやいたつもりだが、口に出た。

どちらかが家族なのにとつぶやいたのを聞いて更にため息を吐く。

幸か不幸か、私がそう言ったあとすぐに馬車は止まり、御者が扉を開ける前に力任せに扉を開ける。

バーンと、ギリギリ扉が引っこ抜けない程度に収まってくれて私は馬車を飛び出した。


作法を思い出す。

公爵令嬢として恥知らずにならぬように気分を落ち着ける。

そして扉を開けて中に入っていった。


割と久しぶりである。

てかどこから金が出ているのかわからんくらいには頻繁に開催されているお茶会。

今回は公爵の再婚、娘や妻のお披露目とあっていつもの倍くらい人が集まっている。

忙しい人や興味のない人も出席しているからだろう。


「あれが平民の」


「どうやって取り入ったのかしら」


「卑しい顔」


HAHAHA、乾いた笑いがでかけるぜ。

陰口のバーゲンセールだなぁ、草ですぜ。

ようし、唯一といっていい目的のお菓子を手に入れてコレットやマリア、セイナの入れるものには劣る紅茶を手に入れて、隅っこに移動。

ゆったりティータイムの始まりだァ。


「イザベラ様」


「あら」


お、いたのか。

うむ、貴族環境で屈指のいい子なこの子。


「お久しぶりです!」


「ええ、久しぶり。元気だった?」


「もちろんです。イザベラ様こそ、大丈夫でしたか?」


私を気にしてくれてたのか。

相変わらずいい子だなぁ、可愛い。


「問題なかったわ」


「本当ですか?」


上目遣いのウルウルした目はズルい。

これでは嘘をつくのに罪悪感が沸いてしまうぜ。


「大丈夫よ。でも、そうね。あなたの近況を教えてくれる?」


「はい!」


可愛い可愛い妹のような存在の彼女。

やがて遠くに姿を現す父と義母義妹。

目の前のお嬢様はシャー、と猫のように睨みつけている。

やめておくれ、やめておくれ。


「何もしないように」


「ええ、ええ。分かっておりますとも」


いやー、そんな気配しないヨ?

身を震わせてキレかけてるやんけ。

ステイ、ステイ、暴れるなよー?


陰口大会の中、いったんお披露目は終了。

三人はお茶飲んでますねぇ!

あらら、ローラちゃんが周りを見渡してますね。

私を探してるのかしら、あこっち見た。


「お姉さまー!」


う わ き た。

何で来るんですかねぇ、頭お花畑ですか?


「離れててくれる?」


「え」


「お願いね」


にっこりと笑顔を向けると渋りながら離れていくんだ。

ようし、カリスマ最強。


「どうして来るんですの?」


いんやぁ、気配消してたのに嗅ぎつけたのかー。

嫌ですわ、嫌いですわ。


「お一人なんですか」


「嫌味?」


「い、いえ!珍しいと思って」


珍しい?私がお友達いっぱいいると思っているのかな?

馬鹿だろ、私はボッチだぞ。


「何故私にそんなに執着するのですか?」


「もちろん、家族ですから」


はっ、と笑ってやりたい。

なんで私を家族だと思えるのか、善人とはここまで醜いのか。

いや、善人とはあの子のことを言うのだ。

コレは善人ではない、ただの馬鹿で偽善者だ。


パシャッ、そんな音が聞こえてその音の方に向く。

白いドレスが紅茶で濡れている。

犯人はすでに姿を消していた。


「ああ、災難ね」


と、頭を抱えた。

犯人は心当たり、推測するにはしそうなやつが多すぎて分からん。

どう解決したものか、代わりのドレスは用意していないのか。


「え、ええっと」


「着替えてきなさい。犯人探しても意味はないわ」


「そ、そうなんですね。着替えてきます!あ」


「ないの?」


「はいぃ」


なんと愚かなことか。

甘ちゃんが過ぎないだろうか、怖いなぁ。


そんな時である、向こうから父の姿が見える。


「これはどうした」


「え、」


HAHAHA、こういう展開ですか。

私に助けを求めるように見てくる。

怖いわねぇ、絶対に私を睨みつけてるよん。

見たくねぇなぁ。


「なんという。馬鹿な姉だ!」


あきれたように私を睨みつけ、罵声を浴びせてくる。

お茶をかけた人間はほくそ笑んでるやろなぁ。


ローラは私をかばう、私は何も言わない、父は罵声を言い続けローラを褒めている。

ボケめ、面白いなこれ。

流れで帰れってことになりました、やったぜ。

いやぁ、街に行きたいですねぇ。

街に行きたい(切実)

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