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第一話

反吐が出るほどの善人ってどんなのなんだろう。

筋トレは楽しい。

この別館において娯楽はほとんどない。

下衆な人は奴隷をいじめて楽しむのだろうが私にそんな趣味はなかった。

いじめるのではなく、同意の元殴り合うのであればいいと思うがな。

本は読んでいたが面白くない。

御伽噺とか学術書とか、色々読んですぐに頭に入ってきた。

この身体の天才さに気づいたのがその時だったなぁ。

これまでは母とあのクソ親父のおかげで今までは寂しく思っていなかった。

あのクソ親父を見返すために努力してたからねぇ。

馬鹿王子のための教育も結構頑張ったのだ。


「水をお持ちしました」


「ん、ありがとう」


今日のメニューをあらかた終わらせてコレットから水を受け取る。

ふぅ、とため息をついて椅子に座る。


「どれだけ鍛えたらいいのかしら」


「どれだけ鍛えても損は無いかと」


「そう?頑張るわね」


んー、と伸びをしてお腹を触ってみる。

昔はぷにぷにしていたが硬くなってきている。

中々鍛えられてきている。

ぷにぷにを楽しめないのは残念だがこう、腹筋が鍛えられている実感はいいものだ。


「お嬢様」


「あー、はいはい。着替えるわよ」


まあ今ほぼ半裸ですしね。

着替えるのは当たり前ですよねー。

この間にお客さん来たらものすごく待たせることになりますよねぇ。

そんなこともあると思い!私は早着替えを覚えましたのよ!

一分あればトレーニングウェア(ほぼ半裸とズボン)からドレスに着替えられるぜ。


「イザベラ様」


「何?」


そういえば私の名前。

イザベラ、イザベラ・ハワードだ。

いやぁ、名前で呼ばれることほとんどないから忘れてたわ。

義母に呼ばれた?あんなもん意識外に追いやって別のこと妄想してたわ。

吐きそうになるのを耐えてな!


「ナタリア様とローラ様がお見えです」


「ナタ‥‥‥、ああ」


義母と義妹か。

完全に頭から消してたわ。

えー、ここ私と母の領域だお。

なんで来るんだお。


しかしなぁ、クソ親父は溺愛してるっぽいから告げ口されても困る。

行くかぁ、気が重いけど。


「分かりました。どちらに?」


「‥‥‥部屋の前にいらっしゃいます」


「は?」


何アイツら、入口にいると思ってたぜ。

でっかいエントランスはないよ?

別館だからね、気軽に来れるよ。

しかし頭がおめでたいんだろうなぁここまで厚顔無恥に来れるとはね。


「お通しして」


「はい」


いやぁ殴りてぇ。

殴りてぇ、しかし殴れねぇ。

殴り合って和解するとかそういう青春的な展開を期待。

今は無理だよねぇ、クソめ。


二人をお通ししてコレットに紅茶を入れてもらう。

美味しいねぇ、紅茶苦手だったはずなのに美味しいねぇ。

麦茶とか緑茶もいいが、こっち派になっちゃったねぇ。


いけねぇいけねぇ。

あちらさんの用事を聞かねば。


「どんなご用事でしょうか?」


そう穏やかに聞く。

頑張って、穏やかに、聞かなければ。


「一緒に住みたくて、お誘いにきたのです」


「同じ建物には住んでいるでしょう」


冗談じゃねぇ。

ここの居心地めっちゃいいんだぞ。

私の領域と言って過言じゃない。

それに母との思い出が詰まっている、

ここから去りたいなんぞ誰が思うか。


「別館に一人じゃあ寂しいでしょう?」


「ご自身の想像だけで語らないでくださいます?」


お前たちの顔なんて見たくねぇんだよ。

ぶん殴ってやろうか?あ?


少しづつ、顔が歪んできているのが分かってきた。

不快ですね、不快度数MAXですわ。

後ろにいるコレットの表情見てみろ、殺気が私でも感じ取れるんやぞ。


「私はここが気に入っています。あなた方は本館に住んでいればいいでしょう」


本館も、別館も、広すぎるのだ。

別館の他に使用人専用の寝泊まりする施設まであるし。

ちなみに私の使用人三人さんはこの別館で寝泊まりしている。


「家族なのですよ?なのに離れて暮らすなんて」


「父が望んだことです」


「あの人はそんなこと望んでなんて」


「なら何故母が死んで直ぐにあなたがたをここに連れてきたのです?」


ムカつく、ムカつく、机を割らないことを褒めて欲しい。

机の下に隠した手は、手のひらが痛い。

血が出ているのだろうな。


「私はあなた方が嫌いです。大嫌いです。母が死んで傷心しているからではありません」


さっさと出ていけ、そんな気持ちを言葉にする。


「目障りです。耳障りです。失せろ」


カップを掴んでいる手が震えてきた。

今にも取手が砕けそうだ。


「‥‥‥」


「お姉様っ!」


やっとローラが口を開いた。

親ガチャに破れてしまったんだね、どんまい。


「私達は家族なんです。いつまでもこんな状態なんて」


「お人好しなのね。それはお節介っていうのよローラ」


優しく、言ってやる。

コイツはまだ親ガチャに失敗しているだけだ。

親の因果が子に報いるってやつかね。

なので優しくしてやろう。

売女同然の義母は知らんが。


「とにかく、私に関わってこないで。その方が双方にいいわ」


「‥‥‥分かったわ。でも食事くらいは」


「丁重にお断りします」


肩を落として二人は帰っていった。

出ていったあと、聞こえなくなっただろう時に大きなため息が出た。


「嫌だわ」


「‥‥‥わかります」


苦手意識は増大、彼女らを許す気に慣れる気がしない。

いっそぶん殴ってやろうと思ってしまう。


「気晴らしでも致しましょうか」


「そうね。付き合ってくれる?」


「もちろんです」


こういう時は現実逃避だ。

一時的な嫌な感情は好きなことをして忘れるに限る。


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