第九話
説明が多いです。
まあ、仕方ない、のか?
ハワード家の屋敷は人里離れた場所にある。
故に車でも一時間は直近の町でもかかるわけなのだが、まあいい。
一番の悩みどころは山中にあることである。
酔うのだ。簡単に嘔吐まで行くのである。
乗り物に弱いのはそうだがそれよりも悪さをするのが山特有の道路である。
グネグネとした道、いやがらせかと思うほどだ。
なので、寝る。
寝なければ吐いてしまって迷惑がかかるからだ。
「起きてください」
「着いたあ?」
「はいはい着いてますよ。一か月ぶりですね」
「そうねぇ」
母の葬式以来だ。
葬式自体は首都で行われ、その際にこの街を通った。
交流は当たり前ながらそれのみではなく、かなーり通っている。
よく抜け出して汗だくになったものだ。
「どこ行きます?」
「んー、どこがいいかしら」
冒険者組合か一番古い付き合いのパン屋か、うむ。
孤児院に加工所、町工場などなど、北で最も栄えてるだけあっていきたい場所も多い。
「貴様に任せようぞ!」
「なんですかそのノリ」
「え?気分」
「はいはい、じゃ適当に巡りますねぇ」
少しの時間、具体的には五時間ほどだろうか。
滞在可能な時間はその程度である。
セイナがいつアポを取るのかが分からないので長くいるわけにもいかないのである。
あの子ねぇ、ホウレンソウしてほしくて何回か言っているのだがしてくれないのよねぇ。
困ったことですわぁ。
「とりあえず、組合でも行きますか」
「おっけー」
再び、エンジンがかかる。
町自体は広いので歩いていたら軽く五時間は過ぎる。
組合には普通に駐車場あるじゃろの精神である。
中世のような街並みではあるが道路や歩道はしっかり整備されている。
交通量は少なく、大体は歩道で歩いている人や自転車が多い。
自動車の流通がまだ少ないことやまだ高価であることも挙げられるだろう。
「お酒は飲まないでくださいね」
「分かってるわよ。問題ナッシング」
「飲んで暴れてたんですから」
「覚えてないからやめなさい」
誤って酒を飲んで記憶が吹っ飛んだことはある。
それはそれは甚大な被害だったらしく組合にきた依頼をタダ働きしたことがある。
それで決めたのだ。
二度と、成人しようと酒は飲まないと。
「あの時の暴れっぷりといえば」
「やめてってば。黒歴史なんですけど」
「そこをいじるのが楽しいんじゃないですか!」
「何回掘り返すのよ!いい加減飽きたわ!」
「ならあのお二人にあった時の嘔吐でも」
「やめなさい」
「はいはーい」
寝起きで機嫌が悪い。
黒歴史を掘り返されたのもあるがそれがほとんどである。
「元気かしらね」
「元気でしょうよ。死んでなければですけど」
「あの人たちはそうでしょうね。たぶん大丈夫、よね?」
「しぶとそうではありましたね」
この世界には魔物が存在している。
魔物との共存や生態系の保全のためにまた、組合が存在する。
依頼を通して初めて魔物の討伐が許可されることがほとんどだ。
現地に駐留している冒険者の判断でもできることはできはする。
しかし、そういうことである。
組織とはえてして面倒なものだ。
「着きましたよ」
「ん、おー。変わってない」
中世的な建物の中でも異様な建物。
ビルほどではないが町の中で異様に高い。
遠くにあるマンションと比べるとさすがに低いが、それでもこの辺りの建物に比べると高い。
なぜだか高床式の構造になっており、階層的には三階構造になっている。
酒場部分で2階分、そしてその上に色々と部屋が分けらている三階部分が存在する。
組合長室や応接室などなど、1階は受付や依頼関連の文書、酒場が主となっている。
昔から構造も何も変わっていないと聞いている。
腐敗とかはしてないのだろうか。
少し心配だが問題ないのだろう。
「入りますよ」
「ん、はいはい」
無駄に仰々しい階段を登り、無駄に豪勢な両開きの扉を開ける。
扉を開けると昼間から賑やかな声が聞こえてくる。
冒険者たちが集まって騒いでいるのだ。
一階部分はまんま酒場、ここだけ見れば冒険者組合ではないと万民が答えるだろう。
そして2階、奥の階段から上れ、一階からも見えるロフトのような2階は壁に依頼書が何十枚とかかっている。
受付に聞かねば受けられない依頼もあるが、大概は壁にある。
冒険者はまず、冒険者としての身分証明書が必要だ。
それが無ければまず依頼は受けられない。
依頼の受付以外にも新規冒険者の受付にも、2階の受付は対応している。
冒険者は功績によってランクが上がっていく形式だ。
例外はある、基本はそうであるのみである。
入口で私は腕をあげる。
挙手のようなものだ、それで息を吸う。
「私!元気でございます!」
ただ、張り上げた。
気づいていた者もいるだろう。
しかし、この声で酒場にいる全員が私に気を向けた。
「うおおおおおおおおおお!!!!!!」
「お嬢さんだぞぉ!!!!!!」
「キターーーーーー!!!!」
熱狂、それが似合いすぎる。
ここからマリアを引き抜いたなぁ、と昔のことを思い出す。
「イザベラ様!お元気でしたか!」
「元気って言ったわよ?久しぶり」
「久しぶりだァァァァ!!!!」
興奮冷めやらぬ雰囲気。
うるせぇと思わざるを得ない熱狂的な声。
「今日はどうされました!?マリアは元気ですか!!」
「ちょっと出かけるからついでに。マリアは元気よ」
「みなさん!」
「うおおおおお!!!!!」
「ちょっと。落ち着いて。ね?」
「久しぶりのイザベラ様のご来訪!それは興奮するに決まっております!そうでしょう皆様!」
「当たり前だよなあ!!」
「ああもううるっさい!」
うっせぇうっせぇ。ただうるせえ。
私ごときの来訪でなんでこんな風に熱狂するのか。
アイドル扱いではないか。
「イザベラ」
「む?ああ組合長」
初老の男性、白髪で何かとストレスに悩まされてそうな立ち位置の男性。
エーシスの町の冒険者組合長、ラルフ・ドゥローレン。
今では冒険者は引退しているものの、現役時代はもの凄い人だったらしい。
今もものすごく強いが、それでも衰えたと言っていた。
まあ、とんでもない化け物である。
「元気で何よりだ」
「こちらこそ、ラルフさんが元気で何より」
「うむ。ここにはどれくらい滞在するんだ?」
「長くは。今日は顔出しだけです」
「そうか。幸せにな」
「ええ。では」
「みんな!イザベラを困らせないように!」
「「「はーい!!」」」
今日も元気いっぱいの冒険者たちである。
ならず者ではあるが、良き人達であった。
野次馬根性が高かったり、すぐ逃げたりもするけれど。
良きである。
「さて、どうでした?」
「───うるさかった」
「まあ一ヶ月心配してた人が現れたんです。当たり前っちゃ当たり前でしょう」
「そういうもん?」
「そういうもんです」
「そうなのねぇ」
よくわかんない、と呟く。
心配をかけたのは事実だ。
それは肝に銘じておこう。
「次はどこ行くの?」
「んー、孤児院でしょうか。今回はそこまでですかね」
「そんなに経った?」
「もう1時間経ってますよ」
コレットが腕時計を見て返事をしてくれる。
孤児院に行くなら4時間程度は簡単に過ぎるだろう。
「仕方ないわね」
「ですね。さっさと行きましょう」
再び車に戻り、音楽を流し始める。
今度は最近の流行りのロックにする。
私の好きなやつだ。
「───カーナビ使いますか」
「えっ道忘れたの?」
「てへぺろ」
「まあいいけどさぁ」
「最近記憶が──」
「まだ若いでしょあんた」
まだ20代のはず、今から痴呆はあることにはあるだろうが少ないはずだろう。
よりによってコレットは、ありえないと思う。
頭は動かしてる方だろうし。
孤児院、今は立派になっているだろうか。
まあ変わっていないだろう。
次回もめっちゃ説明かもしれぬ。いや、説明ですね。




