魔女を探せ
ない
僕には6日前まで彼女というのがが存在していた。
僕は高校2年生になって人生で初めて彼女ができたこともあって僕は凄くはしゃいでいた。
僕の彼女は所謂”不思議ちゃん”というやつだったのか、とても変わった人だった。急に「私は幼少期は魔女の下で暮らしてたわ」とか「私は少しだけれど魔法が使えるわ」など、非現実的で意味の分からないようなことを言う人だった。
だが彼女は6日前に死んだ。いや、彼女が言ってた言葉を借りるなら「死んだ」ではなく、「魂が抜けた」というべきだろうか。
彼女がまだ生きていたころ、こんなことを言っていた。
「ねぇ、貴方は死ぬってどういうことだと思う?」
彼女が発した声は僕らがいる図書室に響き渡った。幸い放課後のこの時間では人っ子一人いないが。
それよりもいやはや、難しい質問だ。死ぬということの意味など普通の人間には分かりっこないだろう。
「難しすぎて分かんねーよ。そんなの分かるのは神くらいじゃないか?」
そう答えると彼女は無表情のまま顔をこっちに向け
「あなた時々つまらない回答をするのよね.....」
「うっせ」
そうすると彼女は「じゃあ教えてあげるわ」と言わんばかりに立ち上がり
「死ぬというのは、魂が抜けるということよ。わかりやすく言うと身体は器、魂が中身、ここで例えるなら水といったところかしらね」
「ふーん。今なんでそんな話を?」
「少し驚くかもしれないけど私は6日後に死ぬわ」
淡々と言う彼女に一瞬理解ができなかったが.....死ぬ?どういうことだ?また冗談か?
「な、なぁ、冗談でもそういうこと言うの良くないと思うぞ」
その時の僕は何故か分からないが冗談で言ってるようには思えなかった。
「あら、私が冗談を言ってるように聞こえたかしら?本当は分かっているのでしょう?」
やはり冗談で言ってはいなかったようだ。まぁ、彼女の話は毎回、どんな話でも真剣にしているようでならなかったし、謎の説得力があった。
「.....詳しく聞かせてくれ」
「ええ、いいわ」
彼女は神妙な面持ちでこちらのほうを見据えた。
「以前君に魔女の下で暮らしてしていた、と言ったことがあったはずよね?」
「ああ」と返答した僕だが.....え?あの話冗談じゃなかったの?え?あれ伏線?
「あれには理由があったの」
彼女は一回大きな深呼吸をして意を決したようにこう言った
「私は幼いころに両親を亡くしているわ」
「え....?いや、けどこの前君の家に行った時少なくとも君の母親はいたはずだけど....?」
そう。僕は以前彼女が体調を崩して学校を休んだ時プリントを届けに行ったことがあったのだ。
「ええ、確かに今両親は生きているけれど、昔に一回死んでいるということよ」
「それで魔女によって君の両親が蘇えさせてもらったってこと?」
「へぇ中々堪が鋭いじゃない」
そうすると彼女は「まぁ、厳密に言えば少し違うけれど」と羽虫が飛んでいる位の声量でそう言った。
「それで?それと君が死ぬことと何の関係があるんだ?」
「えぇその話もしたいのだけれど、その前にしなくちゃならないことがあるわ」
僕は「しなくちゃいけないこと?」と彼女の言葉を驚いたように反芻した。それもそうであろう、自分の彼女が死ぬことの説明よりも優先せねばならないことなんてあるのだろうかと疑問に思うし、驚きもする。
すると彼女がこう言った。
「魔女を探すのよ」
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ないていってんだろ