百円ドラゴンエッグス
文化放送「小説家になろうラジオ」の
「タイトルは面白そう」のコーナーに
出てきたキーワードをもとにした短編です。
今回のキーワードは「ドラゴン」です。
東京都内で噂になっている都市伝説。
夕暮れの街の片隅に突如出現っするガチャガチャの販売機。百円を入れてハンドルを回すと中から謎の卵が出てくる。選ばれた者が手にすると、卵が孵った時にその者に超常的な能力が宿る。しかし、そうでない者が手にした場合、大事なものを失う。
中学一年生の都市伝説マニアの少年・都坂キミタカは友人の犬養シロウと宝生ヒバリとともに問題の販売機を発見する。
「見つけた……!」
数年前、生物学者の父が卵を手にした直後に失踪した。
「おいキミタカ、本当にやるのか?」
「やめた方がいいんじゃないタカちゃん? こんな得体の知れないもの」
「父さんの手掛かりになるかもしれない、俺は回すぞ!」
シロウとヒバリの心配をよそに、百円を投入しキミタカが勢いよく音を立てながらハンドルを回すと、中から鶏の卵より少し大きい赤い卵が飛び出した。
――一週間後、
卵を温めるも一向に孵る気配がない……。
そんな中、夜の街で子供が昏睡状態で発見される話を耳にする。
更に、黒い卵 を持った怪しい男の目撃情報が……。
「もしかして、父さんが?」
キミタカ達が夜に見回りをすると、怪しい男と遭遇。しかし、父さんではなかった。
「見られたからには、このままでは返せねえな!」
男の影から一頭の黒い竜が顔を出した。
「喰らい尽くせ、黒竜!」
黒い竜がシロウとヒバリの身体をすり抜けると、二人は意識を失い倒れる。
すると黒い竜の口の中に人魂のような光が二つ。
「シロウ……ヒバリ……」
「次はお前だ。行け、黒竜!」
黒竜がキミタカ目がけて襲い掛かるその時、赤い卵が光り出し、中から小さな赤いドラゴンが生まれた。
赤いドラゴンはキミタカの影に飛び込むと、影が赤く染まり竜の形をした炎へと変化する。
炎が黒竜を螺旋を描くように巻き込み、締め上げていく。
そして黒竜の頭に、炎の竜が灼熱の息吹を吹きかけると黒竜は灰となって消えた。
黒竜が奪った子供たちの魂が持ち主の下に帰っていった。
その後キミタカは意識を失い、夢の中で赤いドラゴンの話を聞いた。
自分たちが異世界から来た生命体『魔獣』であり、キミタカの父に保護されていた事を知る。
そして知ったのは異世界生物を悪用する組織『クロウリー』の存在。そしてキミタカの父も捕らえられている事。
キミタカはドラゴンに導かれ、魔獣との共生、そしてクロウリーと戦う財団に入隊することとなる……。