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31日の夏物語  作者: Monty
8/28

8月7日

目覚めのよい最高の朝!とまではいえないが、聴きなれた音楽とともに何度目かのこの天井を見上げながら俺はまた朝を迎えた。


昨日は完全に地獄としかいえない1日だった。


さすがに1日ではすべてを終わらせることができなかった俺は、咲と今後の課題の方針を決めてから何とか眠らせてもらえた。


最初にここに来たときは、田舎ということもありとてもすごしやすく感じていたが、さすがにお盆まで一週間を切ってきて暑さもさらに増してきたように感じる。


時刻はまだ7時ながらも、もう外ではミンミンゼミが大きな声を上げて鳴いていた。


俺は昨日の疲れが抜けきっていない体を起こし、朝食を食べるために居間に向かった。


なんだか、この食卓が当たり前のようになってしまっていることに誰も違和感を覚えないまま今日もおいしいおばさんの料理をいただいた。


今日の予定としては、昨日咲によって止められてしまった花陽さんのところに向かい色々と話を聞くことにする。


靴を履き勢い良く外に飛び出したが、その勢いは真夏の鋭い熱戦によってとめられてしまう。


なんだか、気温だけでなく太陽の光すらも強くなっている気がする。


俺はこの日差しに打たれながら、歩いて30分ほど掛けて花陽さんが住む村長の家へと向かった。


「すいません!花陽さんいますか?」


インターホンがないために、大きな声を出して中にいるであろう人に呼びかける。


この前、おじさんが呼んだときは村長が出てきたので今日もかなと思いながら待っていると、いきなり扉が開いた。


この日、俺を出迎えてくれたのは村長ではなく花陽さん自身だった。


「おはよう。今日はどうしたの?」


今の花陽さんの表情からは、おとといの発言は一切感じられない。


やはり、できるだけ隠そうとしているのだろうか。


しかし、ここまで重たい事実を知ってしまったからにはそのまま生活できるわけがない。


「いきなりごめんね。少し、この前の話がしたくて。もし嫌なら、俺は帰るから」


花陽さんは少し黙り込んで考えてから、「いいよ、上がって」といって中に入っていった。


俺は花陽さんの後ろについていく。


そのまま案内されたのは、客間や居間ではなく花陽さんの部屋であった。


「失礼しま~す」


俺は部屋に入ってから、怪しまれない程度にぐるっと見渡した。


部屋の中はシンプルで、勉強机と小さな折りたたみ可能なちゃぶ台に、飾り気のないベットと本棚のみだった。


「とりあえず、ベットに座って。気にしなくていいから」


俺は、ゆっくりと座らせてもらう。


花陽さんは、勉強机についている椅子に座ってこちらと対面になるような形になった。


「いきなりだけど、この前の花畑のときの話をしてもいい」


「私の命のことだよね。詳しいことは話せないけど、私心臓が弱いの。運動に大きな支障はないけれど、突然心臓が止まることがあるの。原因は不明で、今まで何度か止まってるんだけど、お医者さんからはもう次はないかもしれないって。心臓が止まるのにも周期があって、周期どおりだと8月の終わりか9月の初めってとこ」


「そう...なんだ...」


現実を知った気がした。


そこまで仲のいいわけでもなく、関係も長くない。


でも、こうして関わった人がすぐ死ぬかもしれない現実に思考は追いつくわけもなく、ただ座っているだけではなかった。


そうして、そこにとどめの一言が加わる。


「だから...だからね...。これ以上、私に関わらないで」


花陽さんは、笑顔でなきながらそう言ってくれた。


俺は、無言で立ち去ることしかできなかった。


後ろの花陽さんの部屋からは、小さな泣き声とともに小さく「楽しかったな...」という声が聞こえてきた。

今回もお読みいただき、ありがとうございます。

話も少しずつ深いところに入っていき、各々の葛藤を描くことが多くなり私としても楽しいです。

評価もいただけて、やる気につながっております。

これからも、短い間ですがよろしくお願いします。

では、また明日の話をお待ちください。

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