8月4日
本日も流れるかのようにラジオ体操の音楽とともに目が覚めた俺。
おそらく今日も案内があると思っている。
今日は置いていかれないように注意しなければ...
そう考えながら居間に行きいつも通り挨拶を済ますと、ある違和感に気づいた。
いつもはとっくにいてもいい時間なのに、今日はなぜか咲がいなかったのだ。
「おじさん、咲ってまだ起きてきてないんですか?」
「ん?ああ、今日はそういえば見てないな。いつもならもう来てるもんな。あれだったら見てきたらどうだ?」
「じゃあ、ちょっと見てきますね」
咲が起きないなんて珍しいこともあるんだな、なんて思いながら俺のとなりの部屋で過ごしている咲の部屋に行ってみる。
「咲、まだ起きないのか?」
扉の前で声を掛けてみるが、一向に声が返ってこない。
心配になった俺は扉を開けてみてみると、なんとそこにいたのは!
.............
「咲ちゃんどうだった?」
「本人曰く、『夏風邪』だそうです」
まさかの、風邪を引いていたのだ。l
少し苦しそうにしていたのでもしやと思っておでこに触って確認してみたところ、予想通り熱があった。
少なくとも、今日一日は安静だ。
そんなこんなで朝ごはんを食べ終わって少し待っていると、今日も花陽さんがやってきた。
「おはよう、花陽さん」
「おはよう。あれ?咲ちゃんは?」
「えーと。夏風邪になったみたいで...」
これを聞いた花陽さんは少し悲しそうな顔を一瞬したが、すぐに表情を変えてこう言った。
「なら、今日は看病してあげて。別にそんなに案内する場所があるわけじゃないから、一日ぐらい大丈夫だし。それに、看病してもらうとうれしいからね。じゃ、また明日来るから」
そのまま、花陽さんはすぐに帰ってしまった。
俺は、花陽さんに言われたとおり、1日咲のことを看病することに決める。
そうと決めたら、すぐに使っていいタオルと常備している風邪薬を貰う。
それと同時に、台所を使っていいかの確認も取る。
言うとすぐに用意してくれて、しかも俺が何を作ろうとしてくれたのかも察してくれて多少の準備までしてくれた。
マジで優しくて、少し感動した。
俺は一度咲の元に行く。
「咲、入るぞ」
そこには、夏の暑さに加え風邪によって汗だらけの妹の姿があった。
俺はすぐさま、近寄って声を掛ける。
「咲、大丈夫か!?とりあえず濡らしたタオルを持ってきたから、これで一旦体を拭いたほうがいいぞ」
「ん、ありがと。でも、だるいからおにいちゃんがふいて」
「え?」
一瞬、思考が止まった。
咲が小学校高学年辺りになってから俺への当たりが強くなり、いつしかいっしょにいる時間が減った。
俺としてもどこか寂しかったが、仕方ないと思っていた。
そうしたら、まさかのこの発言だ。
俺が動揺しているうちに、咲は上を脱いでこちらに背中を向けていた。
「はやく...して...」
俺は緊張しながら背中をふく。
その間、自分に、これは咲の本心ではなく風邪によって思考がうまく働いていないだけだ、と言い聞かせ続ける。
「お、終わったぞ」
一通り背中をふき終えた後、一声掛ける。
「うん。さすがに前は自分でやる...恥ずかしいし...」
俺はこのとき、久しぶりに妹のことを本気で可愛いと思った。
俺はしっかりと意思を尊重してやり、すぐに部屋から出て台所に向かう。
この次にやったことは、おばさんが準備してくれたものを使っておかゆを作った。
一応両親が共働きなのでたまに帰りが遅くなるのと、咲が部活の関係で遅くなることがあったため、1人で料理する機会も少なくなく、人並みにはできるのだ。
とりあえず作りはしたが、まあ、普通といったところだ。
部屋に戻ると、寝ている咲がいた。
「咲、おかゆ作ってきたぞ」
すると、すぐに体を起こしてくれた。
俺がおかゆを咲の近くに置こうとしたとき、咲がこちらに向かって口を開いてきたのだ。
俺もそこまで察しの悪い男ではないので、だまって食べさせてあげる。
一口では特に反応がなく、やはり普通だったのかと思いながら食べさせてあげる。
思いのほか食欲はあった様で、少なめとはいえ食べきってくれた。
そのあと薬を飲ませてから部屋を出ようとしたとき、小さな声でこう言ってくれた。
「ありがと。おいしかっよ」
...と。
俺はそのまま部屋を出て片づけをし、自分の部屋に戻った。
その日1日、俺は咲の可愛さで頭がいっぱいな状態で過ごすこととなったのだ。
今回もお読みいただきありがとうございます。
連日、私の住む場所では暑さが絶えず、暑さに弱い私はもだえながら生活しています。
リアルタイムで見てくださっている方々も、ぜひ熱中症にはご注意ください。
では、また次までゆっくりとお待ちください!