ただいま。
最初に僕の頭に浮かんだのは“懐かしい” という気持ちだった。
そして、第一声は……。
「ただいま」
僕がそう言うと、どこからともなく。
『おかえり』
ああ……。 なんて懐かしい。
その場所に着いてから僕は“全て”を思い出していた。
そう、僕、私、俺、おい、拙者、何人もの自分を思い出した。
不思議と冷静だ、本来がこれなのだと自分の中で納得している。
『急な帰省だったね』
目の前の懐かしい“ ”は優しい口調で心地よい声で囁いた。
「そうだね、でも様々ないい経験ができたよ」
そうかい、と“ ”は微笑んだ気がした。
続けて“ ”は、どこか寂しく問いかけてきた。
『もう、行くのかい?』
あまりに寂しそうなので私は
「いいや、少しだけここで過ごそうと思ってるよ。 また少しだけよろしくね」
そこではすぐに住む場所を与えられ食事は勿論、娯楽に自分の容姿、次に転生する世界の下見など。 文字通りなんだって出来た。
それからどれだけ経ったか。
「そろそろ行こうと思うんだ」
俺は“ ”の元へ行きそう言った。
『そうか、わかった後で手続きをしよう。 扉の前に後で来てくれ』
そう言い残し“ ”は消えた。
最後に下見を行い拙者は巨大な扉へと向かう。
『やあ、もう行くところは決めたのかい』
もちろんだ、とおいは答える。
そしてゆっくり目を閉じ、僕は行きたい先を思い浮かべた。
巨大な扉はゆっくりと小さく音を立てながら開かれていく。
最後に囁くように、何度も聞いた言葉が聞こえてくる。
『新たな一生に祝福を』