1話 旅立ち
王国、連邦、帝国、共和国、諸島と様々な国が存在するが大都市と呼ばれる国は必ず教会の保護下にある。
世界は教会により管理されている。その代わりに教会の保護を受けている。
そんな世界は間違っていると唱える国もあるが反抗を唱えるものなら数年内に忽ち滅びる。滅びの裏には教会より派遣されし審問官が存在していた。
「審問官」と呼ばれている。
これは1人の青年が教会の指示により世界を旅をする物語である。
バレンティア教国
過去に一度だけバレンティアは戦争をした事がある。圧倒的な戦力を前にして戦争は終結し、戦争をしていた各国はバレンティアに従う盟約により教会を建てたと言われている。
ここには教組がいると言われている。その姿を見たものは誰もいない。また謁見は限られた者しか許されてはいない。
謁見の間に呼ばれる3人がいた。その3人は三賢者と呼ばれている。
アラン・アルベルト 魔法剣技の始祖
ロッコ・アデール 魔法兵器の始祖
レイナ・アルバーヌ 大魔法の始祖
三賢者は片膝をつき、頭を下げ、目を瞑る。これが謁見の姿勢である。玉座は白きカーテンで覆われている。
教組が声をかける
「今日呼ばれた意味はわかるか?」
3人は返答に困っている。現に3人は突然招集されたのである。
「申し訳ございません、分かりかねます。」とアラン
「そうであろうな。今日来てもらったのは時期は分からぬがまた戦争が起こるとの予言があったからだ。」
「それはすぐに終わるのでしょうか?」とロッコ
「終わらぬ。そして今回はしっかりと準備せねば我らも滅びるやも知れぬ。」
「準備と言うのは?」とレイナ
「うむ、主らの弟子を世界に旅立たせよ。」
3名はびっくりする
「主らがびっくりするのは分かるが主らでは目立ち過ぎるであろう?」
そう3人はどこに行っても人混みが出来てしまう程、有名である。
「あの者らは真っ白じゃ。何も汚れておらぬ。それ故に旅をさせて世界を見てきて欲しい。」
「畏まりました。旅をさせるだけで宜しいのですか?」とアレン
「今は旅をさせるだけで構わぬ。またその者らに審問官の地位を与える。」
審問官は教会に属してはいるがそれぞれの判断で国家や人を裁く事を許される。言わば、歩く執行人である。
基本的に悪事などは教会に訴える事で神官が調査を行い、裁判を行い刑を実行する。
「なんと!?」と3人
「頼んだぞ」
「畏まりました」と3人
「いつかは分からぬがお主らの弟子には直接会いに行くと伝えておいてくれ」
「はい」と返事をして、謁見の間を後にする。この事を各々の弟子へ伝える為に…
魔法国家 アルバーヌ
大自然に恵まれた場所、山頂には白き教会がある。木々には鳥がとまり鳴いている。朝の挨拶である。
そこに1人の少年がいた。
クロロ・アルバーヌ
髪が黒い子供が何かを叫んでいる。
レイナは溜め息をつき、クロロの声が聞こえる所へ向かう。クロロは木に吊るされていた。
余りにも言うことを聞かないからレイナが吊るしたのである。
「クロロ、少しは反省した?」
「ねーちゃん!魔法の発達には実験は必要なんだよ!」
「だからと言って何でも爆発させるはダメよ」
「でもさ、今回のバリアは完璧やで!」と得意げに言っていた
「ねーちゃんじゃない、先生と呼びなさい」と注意をする
「はーい!でさ、昨日から反省してるからそろそろご飯食べよー」
「本当に反省したの?」
「反省しました」と元気よく答えるクロロ
縄を解くとレイナはクロロをゆっくりと降ろす。レイナはクロロを抱きかかえ食堂へと向かう。
子供用の椅子に座らせる。正面にレイナが座ると次々と料理が運ばれてくる。
クロロの顔をみて考える。
クロロを悪戯好きでわがままに育ててしまった。でも、この子が可愛くて仕方がない。
クロロはレイナ以外には懐かない。誰かがいると無口になる。理由はレイナ以外には話したくないからと答える。
レイナに育てられて17年経っても全く成長しない。クロロは8年前に火事に巻き込まれる。それ以来、身体は全く成長しなくなった。
レイナは不老ではあるが不死ではない。細胞を再生させる事で若いままでいる。30歳程度で止めている。
目の前にいるクロロを撫でる。シチューを食べたのか口の周りにシチューが付いている。ハンカチで丁寧に拭き取り、決意したように話しかける。
「クロロ、あなたはこれから1人で旅をするの」
ブンブン顔を振る
「クロロ、教組様のご指示なの」
「いや!絶対にねーちゃんと離れたくない!」
これ何度も繰り返すが全く言う事を聞かない。
クロロはわがままではあるが馬鹿ではない。魔法は中級魔道士レベルである。身体を動かすことも好きでよく走り回っている。
本を読むことは嫌いではないがレイナに読んでもらう事が1番好きなようだ。教えたことはすぐに覚えるし無邪気に自分だけを慕うからこそ可愛いである。
学校に通わせた事もあるがつまらないと言いすぐに辞めてしまった。
以来、レイナの下で学び育ってきた。
クロロは魔法使い達にはファータボム呼ばれている。妖精爆弾である。
黙ってじっとしていれば可愛いのだがすぐに爆発させてるのでそう呼ばれいる。
クロロの頬っぺたを突きながら、わがまま言うとママが悲しむよ?と言うとクロロは黙ってしまった。
クロロは母親に守られたから生きている。
「わかった」と呟く
レイナはクロロを抱きしめる。
それからしばらくして、クロロが旅立つ
クロロはどこに行けばいいのかも分からない。教会から与えられたのは審問官である紋章を手の甲に付けられた。
クロロはレイナに行ってきますと手を振った。レイナもクロロに手をふる。
クロロがもう一度後ろを振り向こうとすると誰かに押された。
その瞬間、クロロは爆風で吹き飛ぶ。「わぁ!」とそして地面に叩きつけられる
クロロの小さな身体が地面に叩きつけられる。風の勢いが弱まり、ゆっくりと起き上がると目の前には、あるべき街がなくなっていた。
正確には火山が噴火したのである。クロロは呆然とそれをみる事しか出来なかった。
熱風で何が燃えようが、ただ目の前の噴火を見つめている。
クロロはその後、救助される。
魔法国家アルバーヌはこうして滅んだのである。