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五話 推定死霊術師の排除

 鬱蒼とした森の中を俺は足跡を追って風のように移動する、スケルトンが邪魔な下草を掃って移動しているので非常に楽だ。


 ・・・こいつら完全に追跡されるとか考えてないな、それだけ余裕なのか・・・それとも罠か。


 それにしても身体が軽い、動き、感覚、反応がまるっきり別物だ、肉体強化って奴はあぶないな、足元に気を配らないと自分の動きについていけなくなりそうだ。


『そんなあなたに朗報です』

 さっきまでだんまりだった手帳が久しぶりに振動してそんな事を書いてきた。朗報ね・・・どんなニュースだ。


『もちろん魔法です、あなたの戦い方は格闘的ですから』

 いつ俺の戦い方を見たんだよこの神様って奴は・・・。まあ、棍棒を見ての事なんだろうけど。それになんで格闘で魔法を使えるんだ。


『魔法であなたの弱い所を強化します、ね、簡単でしょう』

 ああ簡単だな、俺がとっさに理解していない点を除けばだが。・・・えーと、つまり、速さに対する頭の処理と足周り・・・地面との足付きの問題か。


『正解です、”思考加速”で頭の回転を高め、”防滑”で足元の滑りを防ぎます』

 なんか滑り止めのスプレーみたいな魔法だな、頭のほうは単語じゃなくて熟語だし、もうちょいそれっぽいのはないのか?それとも”加速”だけとか。


『”加速”は肉体的にも加速してしまうのでお勧めしません、楽を覚えるとろくなことになりません』

 魔法を強制するお前が言うな、無茶苦茶楽だぞ魔法!つまり思考+加速で・・・ん?思考って魔法なのか?・・・いや違うな、思考は加速の影響する対象か、なるほど。あ、さっきの棍棒作製をすっかり忘れていた、西遊記の如意棒をイメージしたけど単語じゃなくて短文だったなアレ。


 などと、どうでもいいやり取りをしながら一時間ほど追跡すると、森の中に明るくなった広場みたいな場所があり、足跡はそこに向かっているので迂回して様子を偵う。


 ――そこは二十メートル四方くらいの空地でそこに隊列を整え正に出発直前といった武装したスケルトンの一群がいた。十体か・・・集落を二つとも落としていたかな・・・さて、黒幕は・・・奴か。

 俺は黒い布切れを被った陰気臭い奴に目を留める、赤黒く目が光る骸骨の杖まで持って全身で悪い魔法使いだって自己申告している。

 スケルトンは特に変わった所は・・・なんだあの剣、妙に赤く光っているぞ、なんだかやばいな。


『あれは簡易的な魔剣です、魔法によって死者をスケルトンに変えますし切れ味もかなりあります』

 それも奴の能力か、厄介だな・・・叩き折るか。とかやっているうちに奴等の準備が整ったようだ。自慢気にほくそ笑んだ黒幕を中心に四体が守るように配置されているが隙だらけに見える。


 よし、そろそろ行くか、まずは”思考加速”!”防滑”!


『別に気合入れなくても・・・あ、効果がすごく高まってる』

 気合を入れる意味はあったんだな、よしよし・・・俺は全力で一歩を踏み出し加速する!速い!なんだこりゃ!そして脚は滑る事無く地面をしっかりとらえている。


 稲妻のように黒幕の横手から飛び出した俺は護衛のスケルトンをすり抜けそのまま驚愕と憎しみの面持ちで俺を見る黒幕を棍棒で殴りつけ、奴はくの字に折れ曲がり近くの木に激突して弾け飛んだ。・・・あれ?なんて威力だよ、俺がダンプカーみたいじゃないか。

 その後は簡単だった、命令者を失ったスケルトンは動きも鈍く次々と棍棒の前に砕け散っていった。


 ――数十秒後、あたりは砕けた骨と彈け飛んだ死体が散らばるちょっとした戦場だった。いや、戦場で間違いないのか。まあ、これで奴はもう二度とあの村に手を出せないだろう。


『二度と出せません、それより魔剣と杖を回収します』

 ああ、あまりにも簡単に倒せたから忘れてたがまたスケルトンができるからか、なら砕くか。


『砕くと色々面倒なんで”浄化”したほうがいいです』

 浄化?その魔法で魔剣はどうなるんだ。


『やってみてのお楽しみです、ついでに破片や死体も浄化しましょう』

 そうしとくか・・・あ、スケルトンを蘇生したら村人として生き返ったりはしないのか?


『残念ながらスケルトンとして創造された時点でその死体は生物としての存在から外れてしまっています、蘇生はできません。他のアンデッドに関しても同様ですので気を付けるように』

 アンデッド?スケルトンと同種の元死体なのか?覚えておこう。それじゃあ気合を入れて・・・。


「”浄化”!」

 言葉にして魔法を行使した瞬間、広場一面が静まり返った。なんと言うか・・・静か過ぎて耳鳴りがするくらいだ、しばらくじっとしていると元に戻ったが変わった魔法だ。


 で、どうなった・・・おお、ちゃんとスケルトンも黒幕も光になって消えていく、成功だな。魔剣は・・・ん?青く光ってるぞ?今度はなんだ。


『聖剣になりました、もちろん簡易的なものですがそれなりに強力です』

 おいおい随分凄いなさすが魔法だぜ、っていうか楽しすぎじゃないか。


『これを村人に渡せば自衛に充分な戦力になります』

 ああ、そういう事か、そこまで考えるとはさすが神様だ頭いいな。よし、持って行こう・・・抜身の聖剣を十本どうやって持っていくんだ、ロープでもあれば纏めて持てるがその辺に蔦もないしどうするか。


『”魔法庫”に収納すればいいでしょう、それと杖も忘れずに』

 魔法庫?収納庫みたいなものか、”魔法庫”おお、イメージしたよりでかい物流倉庫みたいなのが目の前に出てきたぞ、この棚に置いておけばいいのか。


『そうです、くれぐれも杖を忘れないように』

 くっ、全力で目を逸らしてたのに・・・仕方無い。というのも今までは骸骨の頭だった杖は、浄化によってなのか村にあった教会のシンボルのような形の頭に変化して眩いばかりの神々しい光を放って・・・聖剣よりやばい奴じゃないかこれ?さっさと仕舞い込もう。


 後は何もないな・・・広場の周りに無数の動物が集って頭を垂れてこっちを拝んでいる光景は無視してさっさと撤収する。


『あの辺りは一時的に聖域になりました、しばらくはそのままです』

 見えてないぞ、そんな副次効果があるなんて聞いてないからな。


 ――そして十数分後、俺は村に戻ってきていた。走って帰るだけならこれ位の時間なんだな。


「やあお帰り、無事済んだ様だね」


「ああ、ただいま、終わったぜ」

 無言で抱きついてきたユーナの突進を受け止めながらダイナに報告する。・・・だから笑うなって。


「驚いたよ、森の中から物凄い浄化の波動が溢れてきてさ。・・・君だろう?」


「そんな事よりさっさと蘇生させるぞ」

 お見通しだよみたいな顔をしているダイナを無視して広場に向かう、説明が面倒だ。

五話の裏 待機組のお話


 嵐のようにキリガネ君が走っていったあと、僕は改めて村だった場所を見渡す・・・本当に酷いな。ユーナちゃんはご両親だろう遺体の側に跪いている、可愛そうに。そうだ仕事しないとな。


 魔法の腰袋から細い杖を出して彼女に遺体から離れるよう促す、結界に影響されるからね。そして手早く遺体の周囲に魔法陣を描き術式を定着させて発動式を詠唱する・・・よし、結界作製成功。

 それにしても・・・普通は最低でもこれくらいはするのに彼は面白いなあ、素材に魔法陣を刻み込みもしないで丸太を棍棒にしちゃうなんて。しかもあれは削って整形したんじゃなくて押し固めてその形にしてたよね、たぶん下手な鍜治が打った剣より硬いだろうなあ。


 あ、ユーナちゃんそのあたりの箱に座っててね、疲れるでしょう。僕は周りに警戒用の結界張って来るからね、保護の結界張ったから箱から離れないで、うん、いい子だ。

 ・・・なんでだろう、彼女から祝福された気配を感じるんだけど?見習い修道女なのかな。


 ちょっと気になるけどさっきと同じように村の周囲に結界を張る、さすがに範囲が広いから魔法陣描くのも時間がかかるねえ。・・・・・・・・・・・・よし、期間は一日で充分だろう。術式定着結界発動・・・うん、これで大丈夫。


 はいただいま、あとはゆっくり待ってるだけだよ。うんうん、大丈夫、彼ならすぐ帰ってくるさ・・・ってなんだ!?森から物凄い波動が来たけど!?あ、これ浄化の波動かな?多分間違いなく疑うまでもなく彼だね・・・こんなことまで出来ちゃうのか、全員蘇生できるって冗談じゃなさそうだなあ。

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