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四話 ダイナストと言う男

「いやあ驚いたよ、聞いていた村がいきなり廃墟だからね、いやまったく驚いた」


 そう言ってあたりを見回す俺と同じくらいの背丈の男・・・年も同じくらいか?腰に短刀を携えてブーツに短いマントを羽織っている、これがこの世界の普通の旅人の格好なんだろう。

 二度驚いた栗色の髪の男はダイナストと名乗り、ダイナと呼んでくれ恥ずかしいからと恥ずかしげもなく言った。


「俺はキリガネだ、俺もさっき着いたばかりで驚いている」

 名前に関して恥ずかしい思い出でもあるんだろう、俺もわかるのでそっとしてやる。


「わ・・・わたしはユーナです」


 そういや名前知らなかったな、あわてて自己紹介する少女・・・ユーナを眺める。


「それで、あそこに倒れている方々は・・・」


 冷静だが充分に哀惜の眼差しで死体を眺めるダイナにユーナは辛そうに答える。


「村のみんな・・・死んじゃってた」


 俺の裾を強く掴み涙ながらにそう訴えるユーナ。


「すまないがこのままにしておくわけにもいかない、広場に集めたいので手を貸してくれないか」

 やるならまとめた方が楽だからな。


「わかった、君が焼くのか」


 まあ、普通はそうなんだろうな、今までの俺ならそうだった、だが今は違う。


「襲撃してきた連中を始末してから生き返らせるから焼かない、・・・焼くなよ」


「・・・え?生き返らせる?これだけの人数を全部?」


 ざっと数えて五十人ほどの死体を見て呆気にとられてこっちを見るダイナ。やるんだからやる、俺はそうするだけだから問題ないし魔法だからできるだろう。


「俺がいない間この子の事を頼む、心配だからな」

 次々と死体を集めながらユーナの事を任せる、いつ持っても死体の感触は慣れないが。


「・・・わかった、これ以上痛まないように保存の結界を張っておく」


 ほう、そんな便利なものもあるのか、腐らないなら助かるな。


「そういうことだから、ダイナに付いていてもらうんだぞユーナ」

 死体を集め終り井戸で手を洗ってから軽く頭をなでてやると


「・・・うん」


 不請不請といった面持ちで頷くユーナ、ダイナは何でか知らんが信用できる奴だ、安心しろ。


「一人で大丈夫かな、敵に関して何か知っているのかい」


 そんな俺に心配げに聞いてくるダイナ、無理もない初対面だしな。


「敵はおそらく五体程度、ある程度の刃物で武装している、ただし足跡が変だ」

 最初に村の様子を見た時に確認したが、足跡は今になっておかしいと気づいた。


「足跡が変・・・どこにありますか」


 ダイナが不思議そうに聞くので案内する。


「ここだ、ぬかるんでるから跡が残っている」

 まるで鳥の足跡みたいな、でも確実に違うと思う足跡を見てダイナは即座に言った。


「これはスケルトンの足跡じゃないか、知らないのかい」


「すまんな、平和なド田舎にいたもんでさっぱりだ、どんな奴だ」

 そのド田舎世界の日常にいる危険生物は人間だったからな。


「スケルトンは骸骨に魔力が宿って出来上がった魔物だ、自然にそうなった場合と何者かが創った場合がある、どちらにせよ普通の人ではひとたまりもない」


 ほう、天然物と養殖物か、今回の場合はどっちだろうな・・・。

「まあ、どちらにせよ排除するから一緒だな」


「・・・君なら大丈夫そうかな、ただし、創られていた場合は創造者・・・おそらく死霊術師が近くにいる事がある、気を付けて」


 やや気後れたように新しい情報を語るダイナ、そうかそういう奴がいるのか。

「もしかしなくても、その場合この村を襲った目的はアレか」


「材料調達・・・だろうね、おそらく小さな集落を落としてからここに来たんだろう、後は・・・まあ、そんなものだね」


 最後はユーナに遠慮してだろうぼかした言い方だったがだいたいわかった。さっさと排除するに限るな。


「じゃあ行ってくる、ちょっと待ってろ」

 軽く声をかけて足跡を追おうとしたら。


「丸腰で行くのは無謀すぎる、武器を貸すぞ」


 ダイナが慌てて腰の短刀を差出すが。


「ああ気にすんな、これでいい」

 と、村の入り口に転がっていた直径三十センチ長さ五メートル程の丸太を手に取る・・・んー、ちょっと扱いにくいか。


”これは重さは軽くてよいが太過ぎるし長過ぎる”

 そう、魔法で圧縮し密度を上げて八十センチ位の棍棒にしてやった、格好はほぼ野球のバットだな。


「・・・やりすぎで森が消滅しないか心配になってきたよ」


 棍棒の感触を確かめる俺にダイナが苦笑いをしながらそう言うので。


「そんときゃ森も蘇生させるさ」

 使えって言うなら使いまくってやる、どこまで使えるかわからんけどな。・・・そういやユーナは静かだな。


「キリガネ・・・さん」


 なんだよその今にも死にそうな声は、もう少しはっきり喋っても怒らないぞ俺は。

「どうした、ユーナ」

 ビックリさせない程度の声で返事をすると。


「・・・が、がんばって」


「お、おう・・・ありがとよ」

 ・・・すごい気恥ずかしい、純真無垢な子供の応援って効くぞ。俺が単純なだけだろうけどな。あとダイナ、後ろで笑うな!


 こうして、俺はスケルトンと黒幕退治に出発した。

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