表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

一話 神は雄弁な無口

 ・・・目を開けると白を基調とした落ち着いた部屋の中だった。


 俺は病院にいるのか?・・・おかしい、なぜあんな事になって生きている?


 鏡がないのでわからないが、見える範囲の身体には傷ひとつないようだ。


 腰掛けていた黒いソファーから立ち上がりあちこち動かしてみたが異常もない・・・。


 とっさに避けてかすり傷ひとつ負わずにすんだ?いや、俺は自分を貫く鉄筋の感触を覚えている、多少は避けられてもそんなもの誤差程度だろう。

 ・・・いやまて、なんでそんなことを覚えている?なぜ鉄筋棒だったと認識している?

 バイク事故を起こした友人なんて「走っていたらいきなり病院にいた、何があったか何でここにいるかさっぱりわからない」と数年を経てもその瞬間を思い出していないというのに。


「・・・ま、考え込んでも仕方ない」


 ひとり呟き、もうひとつの考えを抑え込みながら周囲を見回す。


 灰色の床、アイボリーの壁、白色の天井、全体的な大きさは十五~六メートル四方といったところか・・・窓がない、出入口もない。

 つまり、俺はソファーひとつの部屋に閉じ込められていた。


「これはアレか、やはり俺は死んでいると言う事か?」


 ひとしきり壁を叩き耳を押し付け床にも同様の試行錯誤を行った後、俺はそう結論付けた。そうでもなければ間尺に合わない、死後の世界がどうこうとか考えたこともなかったがその考えを真面目に検討する必要がでてきたのだ。


 ソファーに座りなおした俺は、困惑する頭を無理矢理落ち着かせるため自分の脈を取り始める。

 ・・・ちゃんと脈はある、心臓は動いている・・・つまり、俺は生きている?ほっとしたのも束の間、最初の疑問に立ち戻る。


「じゃあこの状況はいったいなんだ?」


 生きたままこんなところに閉じ込められて落ち着いていられるのはそんなに長くはない、狂気に陥る前に脱出しないとまずい。


 ・・・その時だった。


 パサリ、と、空中から数枚の白い紙が現れ落ちてきた。


『ごきげんよう、落ち着きましたね』

 拾い上げた紙には先ずそう書いてあった。


『私はあなたがたのいわゆる神と言う存在です』

 神が紙を使ってお知らせする・・・洒落か。


『あなたはお亡くなりになり、その部屋で生き返りました』

 やっぱり死んでいたか、妙に納得した気分で続きを読む。


『そこであなたには別世界での生活を命じます』

 は?いや待て、いきなりそんなことを言われても困るぞ。慌てて他の紙を捲って見るが真っ白だ。


『落ち着いて下さい、順次表示されます』

 ・・・・・・・・・・・・・・・仕方無い、こうなりゃ付き合うしかない。盛大に息を吐き出しながら紙を睨み付ける。

 以下多少ダラダラと記された紙には。


・俺は歪みの多い世界においてその歪みによる事故で死亡した。

・そして揺り戻しによる異常によって偶然この部屋に現れ、なぜか蘇生された。

・蘇生させたのは神だが、当初は元に戻すつもりだった。

・だが、思わぬ事情が重なって処理が送れて死亡が確定してしまった。

・そのため、そのまま元に戻すと巨大な歪みが発生して世界が大変なことになる。

・そこで、蘇生する世界を変更して歪みを最小限にとどめる。

・ちなみに、蘇生は偶然だったが再び死亡させるのは忍びないので安心して欲しい。


 といった事が訥々と書いてある、いろいろ突っ込んで聞きたいところだが・・・。二枚目以降には、その別世界の事やそこでの俺の状態がざっくり書いてある。


 別世界の名はゴナーガーセン、文明としては大体西洋の中世時代らしい。3つの大陸、無数の島々に人間、亜人間、魔人が暮らし、様々な動物や魔物が闊歩しているらしい。

 魔人や魔物というとおり、魔法が現実に存在しそれを行使する技術が発達している。国家としては大魔法帝国が~神聖魔王王国が~エルフ連邦に~ドワーフ国で~獣人衆で~


 ・・・このあたりで俺は紙を放り投げたくなった。


「別世界過ぎるだろう!?なんだそのどっかの映画みたいな世界は!せめて俺の世界と同程度の文明やら住人やら生物やらにしてくれ!魔法なんざ空想の産物で充分なんだよ!科学技術はどうした!なにサボってんだダヴィンチ!」最後のは完全に八つ当たりだ。


 ・・・ひとしきり喚いて落ち着いた俺は、仕方無くいやいやながら紙を捲り俺の状態を確認する。


『前述の通り刺激的な世界なので、移動後即死亡を防ぐためあなた自身の肉体的精神的性能を引上げて万が一に備えます』

『会話や読書きの不自由による不幸な事故を防ぐため、翻訳能力を付与』

『当然魔法の資質も充分与えるので安心して欲しい』

『魔法が普通に存在する世界で魔法を行使しないのは許しません』

『社会情勢地理歴史等はあまりにも膨大なためにその都度表示します』

『そのためこの紙は破棄せずに保管しておくこと』


 ・・・魔法使い決定・・・いや、そういう職業があるとは限らないな、使える事だけが確定だ。

 ・・・・・・何でこんなことに・・・。


 そして、壁一面にメッセージが表示された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ