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ミケ姉さんの楽しい鬱憤晴らし(ミケーレ視点)

ブックマーク1000件記念の銘水様のリクエストです。


 アニスが押しかけ侍女として、母達から派遣されて一年と少しが過ぎた頃だった。

 アニスが来てから半年ほどで娘のエーファが生まれ、夜泣きや数時間間隔での授乳で寝られないし、ロビンが居ない子育てってこんなに難しいのかとしみじみ感じました。本当にアニスを派遣してくれた母達には感謝してもしきれなかった!

 子育てもアニスやサラちゃんだけでなく、ギル君のお母さんをはじめとした近所のお母さんたちにも協力してもらって何とかこなしつつ、エーファもそろそろ一人立ちができるくらいになった。ロビンも娘が出来たことで、エーファがお腹の中に居た時よりも頻繁に帰ってきてくれるようになった。冒険者ギルド的には悲鳴を上げるような状態らしいけど、他のサボりがちなSランクたちを動かすとか、Aランクにテコ入れするとか動かせよと言いたくもなる。

 とまぁ、天下の剣聖も、自分の娘に関しては、もうデレッデレで将来は俺より強い奴にしか嫁に渡さんとか言う始末。Sランク冒険者の剣聖より強い人ってほとんどいないよね? 娘の嫁入り先を真っ先に潰してどうするのかと少しだけ心配になった。

 え、私? 娘の好きな人と結婚すればいいと思うよ? 実際、私がそんな感じだったしね!


 予定では今日の夕方ごろにロビンが帰ってくる頃かなと考えながら、女4人で午後のお茶をしているときのことだった。

 玄関のドアをノックする音が聞こえたので、エーファをアニスに任せてドアを開けた。



「お久しぶりですミケーレさん。申し訳ありませんが、ロビンさんはいらっしゃいますか?」


「いらっしゃいフレディ君。ロビンはまだ帰ってきてないけど、どうしたの?」


「Sランク冒険者ミケーレ殿。ギルドマスターからの伝言をお届けに参りました」


「聞くわ。中に入ってちょうだい」



 ドアの向こうにいたのはフレディ君だった。いつものような笑顔ではなく、どこか緊張した面持ちでギルドマスターからの伝言と思われる二通の手紙を差出した。

 私はそれを一瞥すると、フレディ君を家の中に入って待つようお願いをしました。そろそろロビンが帰ってくるころだから一緒に説明をしてもらった方が良いだろうしね。

 

 フレディ君を家に招き入れてから、程なくしてロビンが帰ってきた。

 帰ってくるたびに増えていく乳児用のおもちゃを片手に、リビングに飛び込んできたロビンと待っていたフレディ君が鉢合わせをしてしまい、どちらも大変恥ずかしい思いをしたみたいだけど、気を取り直してフレディ君が持ってきた話を進めることにした。



「魔王の居場所が分かったとの報が入りました」


「……」


「つきましては、Sランク冒険者『剣聖ロビン』殿、『剣姫ミケーレ』殿には、バザルト王国の王城へ召集がかかっております。詳細はこちらの召喚状に記載してありますので、ご確認ください」


「わかった」



 正直、私もロビンも勇者には手を貸したくはないけれども、Sランク冒険者としての義務として行かなければいけなかった。

 召集された集まりは何時かと聞くと、まだ2か月程の猶予があった。それもそうだろうな、各地を転々としているSランク冒険者を召集しようと思ったら、私たちみたいに一つの街を拠点としている人の方が稀だから、彼らを探す方が時間を取られちゃうしね。各地を放浪しているSランクの中には、未開の地で世捨て人のような生活をしている魔導師のおばあちゃんも居たりするから仕方がない。

 サウスソルトの街からバザルトの王都までは馬車の移動で1か月くらいかかるから、余裕を見て出発したとしても、ロビンはしばらくゆっくりできそうでよかった。これで、すぐに出発しろとか言われたらどこかに八つ当たりをするところだったわ。

 フレディ君はサラ宛の手紙も持ってきたようで、どうやらこの機会に将軍がサラとの距離を縮めたいみたいで、私たちがバザルトに行くのなら一緒に来てはどうかという内容だった。サラは少し悩んだみたいだったけども、アニスがエーファの面倒を一緒に見てもらえると助かりますと言ってくれたおかげで、サラも一緒に行くことになった。

 ええ、家事に関してはアニスから戦力外通告されていますからね……(泣)



 それから私たちはギルドで用意された幌馬車に乗って、バザルト王国の都までやってきた。エーファが一緒だったから余裕を見ておいてよかった! 何とか前日までに到着することができた、日程的にはかなりギリギリになってしまったけれども、道中は魔物が出てもロビンとギル君が瞬殺していたからかなり安全だったしね!

 え、なんでギル君が一緒かって? 越えるべき強者が居るってことを教えた方が良いんじゃないかと思って、ドミニクさんに言って私が強制的に連れてきてみた。実戦経験を積ませるには少しばかり旅をさせた方が良いと助言したら、よろしくお願いしますと二つ返事で任されてしまったよ。

 まぁ、ギル君を連れ出した本音としては、サラのお義父さん(将軍)との対面が見ものだろうと思って……(照)

 それを言ったら、みんなに呆れられたけどさっ!


 都に付いたらまず宿屋! と思ったら、アニスに実家で奥様方がお待ちですよと言われ、出鼻をくじかれてしまった。

 どうせ実家に呼ばれているのなら、宿を取るのも面倒だし私の実家に泊ることにしたんだけど、私とロビンは夫婦だし公爵家が元職場だったアニスは兎も角、いきなり公爵家に連れてこられてしまったサラとギル君は借りてきた猫のようになっていた。

 勇者が都にいると考えるとサラは安全な場所に隠しておいた方が良いと言ったら、二人ともしぶしぶ納得されてくれた。


 実家で家族紹介等々していたら、サラとギル君が母達に捕まってしまった。

 二人とも可愛いもの好きだから、明日は確実に着せ替えで時間が潰されるだろうなとちょっと気の毒な視線を送っておいた。

 二人からは裏切り者ぉって感じの視線が刺さったけど、母達に捕まったのが運のつきだと思って頑張って! アニスは兎も角、他の侍女たちが手をわきわきさせていたから、逃げられないだろうなぁ……。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++




 翌日は思っていた通り、サラたちは着せ替え祭りになっていた。

 ごめんよ、私たちは行きたくはないけれども魔王退治の会議があるんだ、きみたちの骨は後で拾ってあげるから、勘弁してね。

 そんな感じで、私とロビンは王宮へ足を向けた。

 ロビンは勇者に会いたくないとばかりにさっさと会議に使う部屋に行ってしまったけど、私は顔なじみの侍女や元同僚と話すために別行動をしていた。

 おお、騎士団が訓練をやっていると思って、遠目で訓練風景を眺めていたら、見たくない物が視界に入ってきた。 





 はい、勇者が居りました。




 一応、眺める程度に訓練の様子を見ていたけれど、私が手ほどきをしてから身体能力は上がったのは確かでも、技術に関しては上達をしているとは言えなかった。


 っていうか、全然進歩してないね。あのバカ。


 あれほど基礎を無視するなと叩き込んだのに、自分でやりやすいように改良しました!と言わんばかりの奇抜な体制からの攻撃。

 攻撃するにしても無駄な動きが多すぎて、何を想定しながら動いているのかさっぱり分からない。

 フェイントを入れていると見せかけてはいるけれども、足さばきは並より少し上程度だし、実際は上半身がただ素早く動いているだけで、しかも動きは単純でテンポを捕えてしまえば切り込める無駄な動きだもん。騎士団の連中でも勇者の突飛な行動に対処するのは簡単だろうけども、身体能力が桁違いなため力押しされている状態だろうな。基礎が出来ていた分、私が教えていたころの方がまだマシな訓練風景だった。


 冷ややかな視線を送りつつ彼らの訓練風景を後目に、勝手知ったる以前の職場の廊下を歩いていると、元同僚たちが私に気が付いたようで、声をかけに来てくれた。母達にサラちゃんとエーファを預けておいてよかった。こんな強面の男連中がわらわらと集まってきたら、二人して涙目になること間違いなしだ!

 まだ時間も少しあったから元同僚たちと話し込んでいると、私が居ることに気が付いたリョウがこちらに向かってきた。



「ミ、ミケーレさん!? どうしてあなたがここに……」


「休業中とはいえSランク冒険者だもの、召集されて来たに決まっているじゃない。そうじゃなかったら、あなたには会いたくはなかったわ」



 私が会いたくなかったと言ったら悲しそうな顔をしたけれど、どうして私がお前なんぞに会いたいと思うのか全く理解が出来ない。

 しかも、どうしてここにいるかだと? 少し考えればSランク冒険者として召集されたと分かるだろと言いたいけども、こいつは昔から女と話すきっかけを作るためにワザとこういう手段を取っていたことを思い出した。



「そんなことを言わないでください。見てください、俺結構頑張っているんです! Sランク冒険者として、あなたに並べたんですよ!」


「へぇ。実力で上がったとでも言いたいの?」


「……そんなに言うなら、俺と勝負してくださいよ!! 俺の実力をしっかりとみてくれれば、見直してくれるに決っているんだ!」


「ふうん、そんなに言うなら一戦やってみる? 誰か、訓練用の剣を貸してくれない?」



 いや、訓練風景を見ていたけども、実際あれだしなぁ……。

 ぶっちゃけ隙だらけ。手合せするのどころか声を聞くのも嫌だけど、この伸びまくった鼻っ面を叩き折るのも一興かもしれない。そう考えたら、本気を出して叩きのめしてやるのがベストだろう。

 後ろに控えていた従卒に訓練用の木剣を二振り持ってこさせた。

 勇者に剣術を教えていた時に使っていた物と同じ型だ。後々で得物のせいにされても困るから、不公平にならないように同じ型のもの。振って確かめてみたが、どちらの木剣を選んでも差はないだろう。


 顔なじみだった元同僚が、審判になると申し出てくれた。じっと視線がこちらから離れないのは、この困った野郎をいい加減どうにかしてほしいと言う懇願のようだった。


 開始の合図と共に勇者が先制攻撃を仕掛けてくる。

 まさに猪突猛進というのはこのことだ、でも単純に素早いだけで別に何か技巧を凝らしているわけではないので、ただ避けるのも勿体ないから、避けつつ足を突き出してみたら見事にすっ転んだ。


 うわぁ……。マジで馬鹿だ……。


 としか言いようがなかった。

 敵の全体像を見る癖がついていないから、勇者は見事に引っかかった。相手を見て攻撃するか判断する知恵がある分、猪の方が利口かも知れない。

 呆然としている勇者をよそに、周りで見ていた騎士たちもあまりに無様な姿に肩を震わせて笑いをこらえているのが良く解る。

 まぁ、呆けているところにトドメを刺しても大して面白くないから、首根っこを掴んで無理やり起こした。



「剣を使うまでもなく終わるってどういうこと? 2年前から全く上達してないね。所詮勇者ってこんなもの?」


「まだだ、俺は、まだ、負けてない!」



 いや、負けてるやん……。

 さっき豪快にすっ転んで、膝に土をつけてたじゃん(呆)


 この言い分には流石の騎士たちも呆れ顔になった。こちらとしては、負ける気はしないからいいんだけど。とりあえず、勇者の希望でもう一戦することになった。


 二度目の勝負は合図と共に猪突猛進はしてこなかった。一応こちらの様子を窺っているものの、正直隙だらけです。訓練中にも見た変なフェイントをいれているけれども、こちらが殺気を出したら慌てたように切りかかってきた。カウンターで胴を払ってハイ終了。

 トドメに剣を握った拳を顔面に叩きこんでみた。

 思いっきり鼻血を吹いて痛みでもがいているけれども、騎士たちは誰も助けなかった。この程度の怪我は騎士団の訓練では良くあることだからね、甘ったれるなってことでしょう。



「隙がありすぎ。教えたことがなってない。そんなんで、私に単純な力押しで勝とうなんて100年早いよ」


「くそぉ……!」



 挑んでくるからには、何度も相手をしてやるけど。

 三戦目は一応打ち合いになったけど、やっぱり変なフェイントで隙だらけ。背中に回ってボコッと一発殴って終了。フェイントが私に効かない原因が早く動いていないためと判断したのか、二戦目の時より早かったのは確かだけど、フェイントは効かないっつうの。(呆)

 四戦目はカウンター待ちみたいだったけど、技術も実力でも差があるのになんでカウンター待ちしようとするかなぁ。私がフェイントを入れたら面白いように引っかかって、脳天に一撃入れて終了。

 そんな感じで十戦近くやったけれども、勇者は一つも有効打を入れられずに終わった。

 勇者の顔がボッコボコに腫れ上がっていて、こりゃしばらく王宮で軟派はできないなと思ったら笑ってしまったわ。



 なんでこんなに弱いのに、Sランクに慣れたよなと騎士たちがこそこそ話をしていたけれど、冒険者ギルドのSランクはある程度の実力と名声さえついていれば結構簡単に取れるんだよね。

 勇者の場合は、初めから勇者って二つ名が付いていたし、身体能力だけならこの国でも有数の実力はあるからね。王国の重鎮たちは、勇者に実践経験を積ませるために冒険者登録をさせたけど、勇者は楽に名声を挙げようと思ってサラを見つけ出して、サラの魔眼の能力が加わったことでパーティとしての能力の底上げではなくて討伐の効率化が出来てしまったのが勇者の鼻っ柱を伸ばす原因になったんだろうと分析してみた。実力を伸ばすどころか、自分の実力に胡坐をかいてしまっては、重鎮の思惑が裏目に出たとしか言いようがない。

 実際に私とロビンもサラと出会ったころに、サラが勇者パーティに居たときの癖で魔物の弱点を教えてくれたから実際にやってみたことがあったけれど、本当にあれは反則的だわ。致命傷になる箇所がピンポイントで分かるんだもの。私やロビンレベルの人がそのポイントに一撃を入れればほぼ即死状態に持って行けた。

 これは、勇者がサラを離さなかったのも無理はないと思ったわ。

 彼らのやり方は魔物ハンターとしてはかなり優秀だったみたいだから、死線をくぐることはほとんどなかったに違いない。ただ、弱点狙いで不意打ちして魔物を討伐したとしても、魔王との戦いで役に立つとも思えない。そうなると、勇者の実力の底上げ対策を早急に練った方が良いのではないかと思った。



「やっぱり、ミケーレさんが居ないと……、俺……」


「甘ったれるんじゃないわよ」


「え……」


「あのときは職務だったから面倒見たけど、教えたことをぜーんぶ忘れて無様な試合をするくらいなら教えなければよかった。教えたこともまともに続けられない輩は、弟子でもなんでもないと思うけどどうなの? 試合をする前の訓練風景も見ていたけど、あの変なフェイントはなに? 隙だらけじゃない。いくら身体能力が高くても、持っている技術が付け焼刃じゃ、私に負けても当然よ。今後、剣を教えたのは私だとか言わないでね、あんな変な動きを教えたとか思われたくないもの」



 言いたいことを全部言ったら、ちょっと気持ちがすっきりした。勇者は屍のように動かなくなったけど。

 これ以上声をかけることもないので、訓練用の木剣は審判役を買って出てくれた元同僚に渡し、時間的には早いのだけれども私は会議で指定された部屋へと足を運ぶことにした。

 いやぁ、もっとボッコボコにしても良かったけど、話をしているのが苦痛になったから仕方ないわ~。




++++++++++++++++++++++++++++++++++++



 会議に当たって既に集まっている面子は、バザルト王国の国王をはじめとした重鎮、宰相は私の兄です。それから、将軍が率いる騎士団の師団長やら精鋭が壁際に控えている。精鋭は兎も角、師団長に関しては見覚えがない人もチラホラいるから、私たちが離れてから入れ替わったのだろう。後は、冒険者ギルドの幹部とSランク冒険者が私たちを含めて10名程と勇者のパーティが居る。勇者のパーティに関しては正直どうでもいい。


 この会議は魔王討伐に当たって、戦力の割り振りをどうするかって話し合いなんだよね。 

 まず、魔王討伐には勇者と聖女のみで向かうことになるから、この話し合いにはあまり関係がない。

 なぜなら、魔王の居場所に近い程、魔素がかなり濃いから、異世界出身の魔素に侵されていない身体を持つ勇者と、魔素の影響を受けにくい体質の聖女しかたどり着くことができないらしい。

 濃い魔素溜まりには強い魔物が生息するため、勇者たちが無事に魔王の元にたどり着くために間引きをする必要がある。そこでこの場に呼び出されたSランク冒険者と、騎士団の戦力をどのように振り分けるかという相談になるわけだ。

 大方のSランク冒険者たちは、根っからの戦闘狂だったりするから、よほど戦力的に相性が悪いとかがなければ、特に問題もなく話は進んだのだけど……。



「勇者の近くの持ち場は絶対に嫌だ! ロビンと一緒じゃないと絶対に行かない! そんなことやるなら産休中だしボイコットしてやる!」

「ワシも勇者という名ばかりの小僧に力を貸したくはないわ!!」


「ミケーレの言い分はわかった、事情は知っているからな。だが、何故モンターニュ将軍まで!?」



 私と将軍がゴネた。


 依頼された以上、仕事はやるよ? なんでゴネたかって、場所が気に食わなかったんだもん。だって、勇者ときたら自分の特権で強い人は自分の近場に配置しようとするんだよ!? しかも私とロビンを離したうえで!!

 そんなことだから、集まった人の殆どはなんか勇者に呆れていたし、私は勇者の近くになんか居たくはないし、産休のブランクあるし、ロビンと一緒の後方が良いとゴネてみた。 え、将軍? サラのことがあったから一緒になって駄々をこねてみたみたい。

 この場には、私たち夫婦と勇者の因縁を知っている人ばかりなので、そんな事情ならと一応納得しているみたいだけども、一緒になってゴネた将軍に対してはみんなして首を傾げる状態になってしまった。勇者すら事情が分からずに、将軍からものすごい怨念が込められた視線を送られていてかなり弱腰になっている。



「おお、宰相聞いてくれるか! ワシの娘がな、この小僧の奴隷にされておってな……。私情とはいえ、このような扱いを娘が受けたと思うと、腸が煮えくりかえってくるのだ!」


「そんな、俺が奴隷として引き取ったのは商人の子であるサラだけだ!」


「そのサラの義理の父親がワシだと言うておる! サラの母はワシの後妻だからな! なさぬ仲とはいえ妻の生き別れになった娘だ、ワシも血眼になって探したが、貴様のパーティで奴隷として働かされておったわ!! 娘はまだ10歳にも満たないうえに強制的に戦闘の場に駆り出されたうえに――――むぐう!!!!!」


「将軍! それ以上は、サラが傷つくでしょう!!」



 まぁ、将軍に負けじと勇者が言い返したものだから、将軍の逆鱗に触れちゃってサラの奴隷時代のことを全部暴露しそうになっちゃった。寸でのところでロビンが止めに入ってよかった。色々、バラされた勇者に対する視線はかなり冷たいものになっているけど、これは自業自得だよね。

 その後はもう会議はなぁなぁでお開きになっちゃった。戦力的に私よりも騎士団を指揮する将軍が居なくなるとものすごくきついものがあるから、王様も一緒になって説得にかかったんだよね。

 王様は武術指南役だった将軍に頭が上がらないから、最終的には狙い通り私とロビンと将軍の配置は勇者パーティよりも大分離れた位置が持ち場になった。やったね!


 ただね、そうなると色々と将軍の不満が凄いことになっちゃって、将軍の副官の胃に穴があくのは確実なことになるから、第二王子の進言で訓練場が将軍の鬱憤晴らしという名の地獄の訓練が始まることになったんだって。

 逆鱗に触れられたドラゴンに諸悪の根源をお供えしたって、後から元同僚に聞いた。

 そのお供え物が私との練習試合で無様な姿を晒していたからこうなったとかなんとか……。

 単純な武力ならば私とロビンよりも上の人で、激憤している状態な将軍は誰も相手をしたくない相手だからね、ある意味魔王の前の前哨戦としては申し分ない。これで勇者も死線をくぐりぬけることもできるんじゃないかな、多分。



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