ミケ姉さん小話1
大好きなロビンの子供を授かって、嬉しくて嬉しくて実家の母達に手紙を書いたら、侍女が3人も送られてきました。
その日はお休みだったサラちゃんが色々な人に聞いて作ってくれた、特製のお昼ご飯を二人で食べていた時でした。ドアをノックする音が聞こえたから、誰だろうと思って開けてみると目の前にいたのが実家に居る家族からの紹介状を持った侍女たちだったというわけ。
一人は顔見知りというか実家に居たころに面倒を見てくれていた侍女のアニス、後の二人は父親と兄から送られてきた侍女だった。
「お久しぶりでございます。ミケーレ様。お元気そうでようございました」
「久しぶりだね、アニス。それで、こちらの御嬢さんたちはどんな御用で来たのかな?」
アニスとの再会に心が弾むけれども、ここには知らない二人が居る。何となく旧友との再会を邪魔された感が否めないけれども、とりあえず話だけは聞いてみることにした。
「ロア公爵様からこちらのお手伝いをとのご依頼を受けてお伺いいたしました、マヌエラと申します」
「お初にお目にかかります、ドロシーと申します。宰相様のご依頼でこちらにお伺いいたしました」
「ふうん……。申し訳ないけれども、アニス以外は帰ってくれるかな? ご覧のとおりこの家にはそんなに使用人を入れるスペースなんてないんだよ。それに、気心知れている人の方が私としても助かるしね」
マヌエラは乳母としての経験も豊富だと言い、ドロシーの方はお子様の教育には私をどうぞお使いくださいと言ってきた。マヌエラは兎も角、生まれても居ないのにドロシーの方はいらないと思う。一体兄は何を考えているんだと少し頭を抱えたくなった。
とりあえず、乳母を使う気もなかったから、二人はさっさと帰ってもらおうと思ったら、ずうずうしいことに思った以上に粘られてしまった。
どう断ろうかと少しばかり思案した結果、三人にローテーションでやってきてもらうことにした。
私が動けない以上家事をやってくれるのがサラちゃん一人だから、お手伝いは必要だと思った結果である。
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1日目:アニス
初日はアニスが来てくれた。他の二人は宿屋に泊っているみたい。
アニスはやってきて早々に、我が家の家事を掌握しているサラちゃんに話を聞いている。女主人である私に聞くんじゃなくて、サラちゃんに聞くとは……。流石だ、アニス!
「しかし意外でした。思っていた以上に、部屋が片付いているんですから」
「あはは。それね、サラちゃんに矯正されたんだよ」
「それはようございました。冒険者として宿暮らしならばまだしも、定住するならそうはいきませんからね。サラちゃんとは先ほども話しましたけども、本当にミケーレ様以上にしっかりしている子ですね」
主従関係よりも友人と言ってもいいアニスは私に対して結構辛辣だ。実家に居たころはそれこそ生活力がなかったから色々叱られたりしたんだよね。冒険者として生活すると決めてからアニスには色々教わったけども、出来るようになったことよりもアニスに匙を投げられたことの方が多かったから、今の生活に驚かれても無理はないなと思った。
それよりも、さっそくサラちゃんと会話を交わしているとは驚いた。むしろ、微笑みながら『サラちゃん』と言っているアニスに驚いた!
自分に厳しく他人にも厳しいアニスが人を褒めることはほとんどないもん! しかも初対面で!!
後でサラちゃんに聞いたら、早速アニスお姉さんと呼んでいてびっくりしたもん。二人とも基本的に真面目な性格だから、うまくやっていけそうで安心した。