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人生、一方通行
私は誰かを愛したことはなかった。愛する事はないと思っていた。しかし、付き合ってと言われれば付き合ったし、セックスをしようと言われればセックスをした。それは、曲がりなりにも理解しようとしたからで、自分の中では誠実な行為だった。
だけれども、結局はわからなかった。もはや自分はそういう感情を持たないのだろうかと、思い始めた時に、私は彼女に出会った。
彼女とは色々な話をした。
朝ごはんのこと。
仕事のこと。
趣味のこと。
猫のこと。
夕焼けのこと。
缶コーヒーのこと。
いつからか彼女と話していて、私は自分の胸が締め付けられるような、それでいて気分の悪くない、不思議な感覚に陥った。最初、私はそれが何か分からなかったが、いつからかその感情の名前を察し始めた。
私は、初めて誰かを愛し始めたのだった。そして、幾つものことを悟った。
もう私は戻ることはできない。愛を知らない、誰かを愛したことのない自分には。
もう私は戻ることはできない。彼女を知らない自分には。
そして、
「私と、付き合ってくれませんか?」
その言葉がとても重いものだということを、私は自分が使って初めて知った。




