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髪を切る
親友が髪を切った。私が男の人に告白をされた次の日に。彼女の艶やかな、何重かの光の輪を冠する長い髪。
多くの時間を経て完成したそれは、彼女にとっても大切な物であったはずで。
「髪、どうしたの!」
朝の教室で彼女を見た時、私は人目に憚らず大声を出してしまった。おはようと言おうとした所で固まった彼女は、実に何でもないように、
「いや、気が向いたから」
と言った。それを聞いた私は開いた口が塞がらず、彼女を差した指もそのままで「何で」とこぼした。
自分でも思っていた以上に私は彼女のあの髪が好きだった。
「ちょっと、どうしてあんたが泣くの!」
私は自分でも頭の中がよくわからなくなっていた。
「私、私……!」
しゃくりあげると、息が詰まって喋り難かった。
「ちゃんと、告白断ったのに!」
その言葉に彼女は眉を顰め、首を傾げ、やがて大慌てで私の顔にハンカチを押し当てた。
「そうだけど、そうじゃないよ」
そして、彼女が私にゆっくりと諭すように話しかけてきた。
「ホント?」
ぼやける視界の向こう側に、眦を下げた彼女の顔が見えた。
「本当だよ」
私は彼女の胸に飛び込んだ。




