表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/101

春来たる

冷たい風が吹き始めた、制服移行期間。私はセーターを持ってこなかった朝の自分を呪いつつ、学校から最寄り駅までの道のりを一人歩いていた。

「寒いなぁ」

数日前までの暑さが嘘のような肌寒さに思わずそう漏らし、身体を抱く。

「君」

突然の女性の声に私は振り返ると、そこには背の高い、見知らぬ生徒が立っていた。彼女はセーターを着ていた。

「寒いの?」

片眉を上げて、あくまで自然に彼女がそう言ったので、私は反射的に頷いた。

すると、彼女は自分が着ていたセーターをやおら脱ぎ、それをぼうっと見ていた私の顔に突然投げつけてきた。

「わぶ!」

何をするのだ!文句を言ってやろうとセーターを剥げば、彼女はそこにはおらず。

「それ、着ときなよ」後ろから声が聞こえた。

また振り返ると、彼女はそう言いながら、してやったりの顔で手を振り、小走りで駅へと走っていく所だった。

その時、早くも落ちた赤い葉が私と彼女の間を冷たい風と共に通り抜けていった。

私は少し暖かく、柑橘系の匂いがする手元のそれを見て一つ思い至った。

「名前、聞くの忘れた」

温かく、赤くなり始めた身体に、私は春が来る予感がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ