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生きる意味
学校の屋上には胸程の高さの欄干がある。名前も知らない彼女は、そこを歩くのが好きだ。曰く、生と死の境界線らしい。
そして、今日も彼女は欄干の上を歩き、私はそれを注意する。
「危ないよ」
「危なくないよ」
不思議な彼女はいつもこう答える。だが、昨日の晩は雨が降っていた。
「今日は本当に危ないよ」
それを聞いて、彼女が両手を広げて回りだす。
「危ない?危なくないよ。だっていつか死ぬんだよ?死にたくなくても死ぬんだよ?だったら、自分で死にたいじゃん」
謎の論法を語る彼女の、一段下を歩く。
「死にたいの?」
自分でもおかしなことを言っていると思う。
「死にたくはない。でも、生きたくもない。生は空虚で、色がない」
欄干の上の彼女が、足を滑らせて、落ちる。
突然だった。
私は手を伸ばす。
彼女の手を取る。
「危ない!」
宙吊りになった彼女が私を見て笑う。
「別に、生きたくないんだけど」
私は、無駄にきれいな彼女の顔が、無性に寂しいものに見えた。
「私のために生きて」
意味が分からないという顔
「私があなたの人生を埋めるから。私があなたに色を見せてあげるから」
彼女が笑った




