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待ち人来たる
駅前の多くの人が待ち合わせに使う目印の前に、一人の女性が立っていた。その女性は不満げに時計を睨みつけ、何度もため息をつく。
そこへ、一人の女性が近寄っていく。
「待った?」
長く待たされていた女は、声をかけてきた人物を睨みつける。
「待ったわ」
「ごめんね。じゃあ行こうか」
心にもない謝罪と共に、二人が手を取り歩き始める。
「なんでいつも遅刻するのよ」
今日は20分よ、とため息をつく女に、片方の女は悪びれる様子無く口を開く。
「いやね、待っていてくれるのがうれしくて、ついね」
その答えは予想通りだったと、ため息をつく女。
「いけない人ね」
「惚れた弱みってやつさ」
愛想を尽かしそう、とばかりにいつも待たされる女はため息つく。
「愛してるよ」
フォローとばかりに手を握り込む、待たせる女。
「知ってるわ」
この一言で許してしまう、甘やかす自分が悪いのか。いや、これも惚れた弱みか、とまたも女はため息をついた。
「ため息ばかりだと、幸せが逃げちゃうよ」
「なら、貴女がその分幸せにして頂戴な」
「ええ、もちろんですとも!」
二人の影は、目的地である劇場へと消えていった。




