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月を探して
空に光瞬くものが無い夜。私は幼馴染を、田舎の電灯もない道を歩き、探していた。私にとっては大切な人である幼馴染は、こういう星の無い夜に徘徊する。
なかなか見つからない彼女を探しながら私は、昔徘徊の訳を聞いたとき「月を探してるんだ」と言われたことを、思い出していた。
やがて、私は橋の上から川を覗き込んでいる彼女を見つけた。
「探したよ。ほら、帰ろう」
手を取り引っ張るも、彼女は動こうとしない。
「どうしたの?」
「月がね、見つからないんだ」
川を見る彼女の顔は私からは伺えなかった。
「それは大事なことなの?」
「うん」
「家族とか私より?」
語気を強めて問うも、彼女はそのまま沈黙してしまう。
「私より、月とかわけわからない物の方が、大切なの?」
彼女がこちらを向いた。
「私は、怖い。暗い夜が怖いの。君が何処かに行っちゃう気がして、怖いの」
彼女の手を握り締める。
「私、君が好きなんだ。だから、どこにもいかないで」
私は嘘偽りない心を言った。
「私が、月じゃだめですか」
彼女が目を見開いた。そして、
「何言っているんだか」
帰ろう、と彼女が手を引いた。
「本当だよ」




