82/101
花火
「いやぁ。ついてなかったねぇ」
友人がそのように言いながら、開け放った窓から月夜を眺める。ここ、一階の居間から見える庭の草は、部屋の灯りと月の明かりをきらきらと反射していた。
「しょうがないでしょう?雨降ってたんだから」
今は晴れてはいるが、先ほどまでは雨が降っていた。そして、それにより今日予定していた夏祭りが中止になってしまったのだ。
今日の夏祭りは浴衣を着て二人デートと洒落こみたかったのだが、叶わなかった。
「まあ、二人でだべるのもいいじゃん」
彼女はそう言うも、私は何となく気分がのらなかった。
私がそんな態度だから、部屋には居心地の悪い沈黙が流れる。
「そうだなぁ……」
彼女がこちらを向き、含みのある顔をする。
「一つだけ、夏祭りしよっか」
どういうことなのだろう。私は目でその疑問を伝える。
すると彼女は、私が持ってきた鞄を開けてごらんと私に言った。言われた通りに見てみれば、そこには手持ち花火があった。
「小さい花火。どう?」
彼女はしたり顔で庭に立っていた。手には蝋燭とライター。
「勿論!」
彼女の笑顔と花火の光も混じった庭の光景は、大層美しかった。




