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理想的な光景
愛する彼女と私が手をつないで歩いていた。指にはリングがはまっていた。
夕方、少し気温の落ち着いた時間。夕立の心配がない空の下、他愛無い会話をしていた。
女二人ということで相応に苦労してきて、これからも苦労するだろうが、だからこそ今この日常がたまらなく愛おしかった。
理想的な、夢のような一時。
私は笑っていたらしく、彼女が私に微笑みかけた。
夕焼けの柔らかくなった光と、少しの冷たさを含んだ風が、私と彼女を包み込む。
彼女の髪が靡くごとに、私の心も思い人に靡かされる。
風景の美しさと相まって夢見心地な、この上ない多幸感が私の心にじんわりと広がる。
だが、これは夢なのだ。
私は、ゆっくりと目を開け、やがて体を起こした。
薄暗い部屋に私は一人で、愛しい彼女は視界の端の写真立ての中。




