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魅惑的な悪魔
美しいステンドグラスが様々な色を床に落とす白亜の殿堂が、荘厳な気配を漂わせる教会。それが祀る神の御前で、一人の女性が祈っていた。その女性は教会に仕える修道女であり、彼女のほかにこの場には誰もいなかった。
長い時間目を瞑り、祈りを捧げていたが、とある女性の声にその目を開ける。
「いつもながらに、熱心ね」
修道女が立ち上がり、最前列に存在する長椅子に目を向ける。そこには、見た目清楚で美しい女性が笑顔で座っていた。
「去りなさい。ここは悪魔の居て良い場所ではありません」
悪魔と呼ばれた女性が、仄かに笑みを深める。
「私は神ではなくあなたに会いに来たのだけれど?」
その言葉に、修道女は彼女から目をそらす。その顔は僅かに朱に染まっていた。
「そ、その手には乗りません」
悪魔は昔から修道女を様々な手で誘惑していた。最近は、その姿を彼女の好む物に変えて蠱惑していた。
「そう、残念。また、来ますね」
悪魔が本当に残念そうな顔をして、立ち上がる。
修道女はそれを横目に見ながら、得も言われぬ感情を抱いていた。
「では」
悪魔が歩いて教会から去る後姿を、修道女はずっと眺めていた。




