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サイダー
アスファルトからゆらゆらと陽炎が立つ、真夏の下校途中。私と友人は太陽から逃げるように、駄菓子屋の軒下へと滑り込んだ。
「暑い」
この一言がどちらの物だったかは分からない。たぶん二人とも言ったように思える。
友人が駄菓子屋の中に入り、私は軒下のベンチに座り込む。しばらく俯いて地べたを歩くアリを眺めていれば、
「ほれ」
彼女の声と共に、首筋に冷たいものが一瞬触れる。見上げれば、サイダーを見せびらかす彼女。
「ずっと当てときたい」
私は素直にそう思い、頭を下げる。
アリはいなくなっていた。
「ほら、私のあげるから」
もう一度ひんやりしたものが触れられ、私はそれを顔を上げて受け取る。ビンにはまだ半分以上残っていた。
喉を通るサイダーは冷たく、そして炭酸の刺激が暑さで鈍感になっていた感覚を呼び戻す。
「あー生き返るぅ」
手に感じる結露と、サイダーの冷たさも気持ちがいい。
「そう言えば、今の間接キスだね」
何気なくそう言ってビンを返そうとすると、彼女が熱気にのぼせたようで顔が真っ赤になっていた。
「どうかした?」
「どうもしない」
彼女が残ったサイダーを一気に飲み干す。




