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紅葉
天高く、紅葉降る秋。私と恋人は温泉旅館の一室で、鮮やかな赤い遠景を見ていた。開いた窓から風が吹き込むたびに髪が揺れ、湯に火照った体が冷やされる。
どちらからともなく、肩を触れ合わせる。
「来てよかったね」
そう彼女が言えば、私は彼女の柔らかな手を握った。
そのままゆっくりと時間が過ぎていき、紅葉に別の赤が混じり始めた。
「冷えちゃうね」
私がそう言えば、彼女が手だけでなく腕も絡めてきた。
「そうだね」
私達は、目を合わせると、唇が触れ合うだけのキスをする。
顔を離せば彼女の顔がすこし赤くなっていた。
「さ、もう一度湯に入ろうか」
そう言って、私が彼女の手を引いて立ち上がる。
夕焼けと月の露天風呂は、きっと綺麗なはずだ。
その時、一陣の風が吹き、一葉の紅葉が窓を潜り、私達の方へと飛んできた。私はそれを、空いた手でそれを捕まえる。
鮮やかな朱色の葉だった。
「君みたい」
恋人の朱色の肌も美しく。




