60/101
寂しいの
寂しいの
私は、両親が不在しがちな家庭で育ったためか、昔は相当な寂しがり屋だった。中学、高校と年齢が上がるにつれて、静かな家に対する妙な焦燥感は小さくなっていった。
しかし、風邪をひいて一人で寝ている今日、またその胸に吹きすさぶ焦燥が再来していた。
寝たり起きたりを繰り返し、静かな家に耳が痛くなって、そのたび私は泣きそうになる。
次に目を覚ましたのは夕方だった。
すると、何やら台所からこちらに向かって歩いてくる音があった。お母さんだろうか?
「起きてる?」
返事は、喉が嗄れてできなかった。だが、向こうは返事が聞こえたかのように部屋に入ってきた。
良い匂いのする盆をと共に入ってきたのは、母ではなく幼馴染だった。
「お粥。食べれる?」
そう言って彼女に渡されたお粥を、私はゆっくりと食べる。会話はなかった
「――さま」
食べ終わっても、やはり声は出ない。その後もてきぱきと彼女に看病され、また布団に寝かされる
「じゃあ、私は帰るから」
そう言って立ち上がる彼女を、私は手を伸ばして引き留める
「寂しいの」
私の言葉に彼女は、私が寝るまで付き合ってくれた。
焦燥感はもうなかった




