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目を瞑る
化粧とは何か都合の悪いものを隠すためにするものなのだろうか。
私は、昔そのようなことを考えた。
しかし、今となっては、それは化粧の一側面でしかないことを私は知っている。今、私の前で目を瞑っている、誰よりも美しい女性が、化粧とは良いものを更に引き立たせるという側面があることを教えてくれた。
私は、そんな果てしない美女の化粧係だ。
今も次の番組のための化粧を施しているのだが、すっぴんも綺麗な彼女に、私が化粧を施す意味があるのかな、などと思って手が止まっていた。
「ねえ、まだ?」
「た、ただいま!」
催促されて、ようやく手にもつ化粧筆を動かし始める。
それが終われば、彼女の美は更に磨きがかかっていた。
「これで終わり?」
「ええ、終わりですよ」
終わりを告げれば、彼女が目を開け、不満げな顔になる。それでも、美しい。
「終わりなの?」
完璧である。彼女をいつも見ている私がそういうのだ、間違いはあるまい。
「あっそう」
彼女が頬を膨らませる。可愛い
「じゃあ続けますね」
そう言って、次の工程へと移る。
それにしても、なぜ『彼女』が不満げなのか、私にはよくわからなかった




