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ペアリング

風が吹きすさぶビルの屋上。手に持つ、冷たくなった缶コーヒーを私は一人飲む。

彼女、同性だったが私の恋人が死んだ。自殺だった。まさに私が今立つ、フェンスの向こう側から飛び降りたのだ。

なぜ、彼女はここから飛び降りたのだろうか。そんなことを、浮いたつま先を遊ばせながら考える。

不幸だったのだろうか。

指にはめたペアリングを見て、彼女との思い出に浸る。

二人で一緒に住み、共働きでそれなりに裕福でもあった。喧嘩もしなかったし、セックスレスという訳でもない。自殺の前日も、やることはやっていた。

不幸ではなかったはずだ。女同士で甘受できる全てを、お互いに与えあった。

さえ渡る空に目を向けて、考える。

彼女のベッドでの言葉を思い出す。

何となく、合点がいった。

彼女は幸せだった。そして、いつか来る不幸せが怖かった。

だから、飛び降りた。幸せを永遠にするために。

「不幸な女だ」

私は靴を履き直し、寒い我が家に帰ることにした。

彼女が遺した遺書はなく、テーブルの上には、彼女が指を通すことのなかったペアリングがあるだけだ。


「私は世界一幸せな女ね」

彼女の言葉を口の中で転がす。

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