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嘘
友人の家に遊びに行ったある日、話の流れで、
「好きな人っている?」
と聞かれた。私はいないよと、彼女のベッドの上で答えた。彼女の残り香が鼻腔をくすぐる。
彼女はなおも、いるのいないのと聞いてきたので、
「だから、いないってば」
と答えた。
本当は嘘である。
「うーん。それで納得しちゃろう!」
好きな人に嘘をつき続けるのは心苦しい。そんなことを思って、完全にベッドに横になる。寝るわけではないと断って、目をつぶる。
視界が無くなったことで、良く音が聞こえるようになる。窓の外の音に交じって、彼女の忍び足が聞こえていた。
「ドーン!」
急に衝撃が私に襲い、ベッドが軋む。目を見開けば、彼女が私に馬乗りになっていた。
少し痛いが、それよりも彼女の柔らかさが私には毒だった。
抗議の声を上げる間もなく、彼女が私の上で跳ねる。
「ほれほれー」
同じ女だというのに、彼女はやけに柔らかく思え、揺れるベッドから彼女の香りが立ち上る。
「痛いからやめて」
顔は赤くなっていないだろうか、普段道理の声が出せているだろうか。
すると
「嘘つきめ」
彼女が悪戯に笑う。バレバレだぞと、蠱惑的に。




