表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/101

苦い

流行りに便乗した

重く、それでいて速度のある電車が走る音。それが、狭く仄暗い高架下で反響し、咆哮となる。

寒い息を吐くトンネルの口をくぐり、数歩歩けば、そこには灯のともる屋台がある。私はそこの「おでん」と書かれた暖簾をくぐる。

「いつもの」

屋台の大将は女性で、女である私が秘かに思いを寄せる人でもある。

「今日もいらしたんですね」

用意されていたらしい、よく冷えたビールと出汁が染みた大根がすぐに出される。

「いただきます」

特に会話をする気はない。客は私だけではないからだ。チビチビと酒を飲みながら、長い食事とする。

ビールが残り半分になるところで、今日は客が来ないことに気が付く。ここのおでんは美味い、私以外にも常連はいる。だのに、客は私のみ。

そんな特異な状況に、手が空いている彼女が口を開き、私もそれにぽつぽつと応答をする。

電車の音と私たちの会話がトンネルに響く。

「貴女はよくいらっしゃいますよね」

「美味いから」

「ありがとうございます」

「毎日食べたいくらいには、美味い」

「ふふ、お上手ですね」

笑顔の彼女に、下手くそだよ、とは返せなかった。

ビールが苦い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ