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朝
それなりに早い平日の朝。ケトルの湯が沸く音と、古いトースターが低く唸る音。カップに即席コーヒーが入れられる音。それらが、朝限定のオーケストラを構成する。それは、私が毎日聞いている音楽である。
朝食は、後フルーツとヨーグルトで出来上がる。
トーストの良い匂いが、部屋に充満し始める。それと共に、布擦れの音が微かに。
私は引き戸一枚隔てた向こう側で、着替える恋人に思いを馳せ、湯が沸き切るのを待つ。
やがて、カチリとケトルが鳴り、彼女が引き戸を開ける。
「おはよ」
「朝ごはん出来てるよ」
短い会話の間に、彼女が微笑みながらこちらへと寄ってくる。
そして、唇が触れるだけのキス。
「ありがと」
「どういたしまして」
他愛のない会話と食事をして、最後に二人、苦いコーヒーを飲む。
世界はこんなにも平和で、私は、この瞬間に一番幸せを感じるのだ。




