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冷たい廊下
「なんか、ごめん」
友人がベッドサイドでシャツを着るのを見て、私の口からついて出てきた言葉だった
「なんで謝るの」
そう言われると、苦しい
「わがままだったというか、なんというか……」
それに対し、そうと言いながら、シャツに巻き込んだ髪を出す彼女。そして、沈黙が訪れ、部屋に響くのは彼女の着替えの音だけになった
「今日のことはできれば忘れてほしいなー、なんて」
彼女が着替え終わり鞄を持った時、その背に声をかける。
時計の針の音が、何度か聞こえた。
私は、鞄を肩にかけて立つ彼女に、違和を感じた
「後悔、してる?」
見舞いに来ただけの友人に迫り、セックスをしたのだ
「してない。と言えば嘘になる」
心が弱くなってたから、なんて言い訳は通用しない。
時計の針の音がうるさい。
「私、結構、うれし、かったんだよ」
振り向いた彼女の眼には、涙。
心臓の音と、時計の音と、彼女の走り去る音、最後にドアが閉じる音
「まって!」
私は跳ね起き、上着をはためかせて、部屋を出る。
廊下に、彼女が蹲っていた。肩を震わせていた。泣いていた。
ごめん、その一言が重く廊下を転がる。




