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爪
仕事に疲れ、電車に揺られ恋人の待つ家に帰ってきたら、机の上に爪切り。私はそれを見てさらに疲れてしまう。確かに明日は休みである。できないことはないが、今日は勘弁してほしい、本当に疲れている。
このことをどう告げるべきかを考える。
遅めの夕食を共に取っているときは言い出せず、その後のお風呂でも言い出せなかった。
そして、リビングでくつろいでいるとき、思い切って今日はゆっくり寝させてほしいことを彼女に告げる。
すれば、彼女はキョトンとした顔になり、笑い出す。
「違うよー。全然違うよぉ」
なぜか正座になって膝の上で握っていた私の拳を、彼女の手が優しく包み込む。
「毎日疲れてるみたいだからね。マッサージしてあげようと思って」
爪、邪魔でしょう。と彼女が微笑む。
かつて私が一目ぼれしたその顔に、疲れとかその他諸々がすべて吹きとぶ。
よし、やろう。いますぐしよう。
問答無用で彼女に迫る。
「え?まって。ちょっと、まって」
頬にキスし、首筋に舌を這わせた時
「爪!そう!爪切らないと!」
ちょっと痛い位が好きなくせに、そんなことを言うものだから、右人差し指だけ切らないでおいた




