5hss「喜怒哀楽」
この六作品はユリトピア内で行われた、お題を決めて、500字以内でssを書くという企画の物です。
なお、私自身の同一の物と、他作者様が書かれたSSがまとめられたものが、pixivに投稿されています。
直リンクはなろうの規約上、どういう扱いになるのかわかりませんので、pixivにて「yuritopia@ますとどん」とユーザー検索をすれば投稿されていることを確認できると思います。
≪喜んで≫
休日の公園というのは、色々な人間がいる。鉄棒を占拠する爺、砂場で山を作る子供、陰の下で喋る親。
そして、ハモニカを吹く私。
ハモニカと言うものは、あまり人気がない楽器だとは思う。周りの友人は皆ギターだったり、ピアノだったりを讃頌する。元友人曰く、ハーモニカはモテないよ、らしい。モテるために吹いている訳でもなし、ハモニカだし。結局私はそいつをぶん殴って縁を切った。
しかし、それでも
「おねーさん上手ー」
と目の前の女の子が喜んでくれるくらいには、上等な物なのだ。
「ありがとね」
お礼を言って、休憩に入る。
「お姉さん、貸して貸して」
吹いてみたくなったらしい彼女に、ハモニカを手渡す。
「それ、やるよ」
楽し気に吹く彼女を見ていて、半ば自然に口が動いた。
「どうして」
大きな理由はではない。ただ、嫌になってしまったのだ。少しでもそう感じたら、もう楽しく吹けなくなってしまうのだ。
「お姉さんのこれ、もっと聞きたい!」
私が黙っていると、女の子が大きな声でハモニカを突きつける。純心な目だった。
「お前だけだよ、そんなこと言ってくる奴」
私は、私の好きな曲を、ハモニカで吹く
≪怒って≫
「もう、いい加減にして!」
家に帰ったら幼馴染にいきなり頬を叩かれた。
鋭い痛みの後、じんわりと熱がこもり始める。
「だって、しょうがないじゃないか」
帰ったらいきなり叩かれたせいか、不貞腐れた声になってしまった。
「私はあなたを思って言っているの。それが分からないの」
わかってるよそんなこと、その言葉を飲み込み押し黙る。そして、黙っていれば一方的に言い募る彼女に
「うるさいなあ!」
と怒鳴ってしまった。こっちは疲れているんだと、叫んでしまった。
一瞬の沈黙。彼女の頬に一筋の涙。
「馬鹿!バカバカバカ!」
胸を何度もたたかれる。泣き声と、軽い衝撃。
こちらとしても、泣かせる気はなかった。急に頭が冷える。
命がけで街を守る正義の味方を、心配してくれるのは彼女だけなのだ。
「お前だけだよ、そんなこと言ってくる奴」
片腕で強く、抱きしめる。
「ごめん」
本当に守りたいものは、とても小さかった。
≪哀しむ暇もない≫
私には、器量のいい彼女がいる。同性同士の恋愛だから何かといわれることはあるが、それでも二人楽しんで生きてきた。これからもきっとそう。
「ねえ、ありきたりだけど地球最後の日ってどう過ごす?」
「そうだなぁ。恋人と過ごす、かな?」
「ふふ、私も」
益体もない話をしながら、二人家路を歩く。
道端のタンポポの黄色が見えた。
ここは一つ、花より君が美しいと言ってやるべきか。
そんなことを考えていれば、彼女が手をつなごうと言ってくる。勿論と手をつなぐ。
もうすぐ夏。
スーパーで買ったアイスはまだ溶けないだろうが、それもこれからの季節、どうなるかわからない。
幸せだなぁ
その言葉をどちらが言ったかは分からない。もしかしたら、二人ともが言ったのかもしれない。
その時
光と轟音と衝撃とが、空から落ちてきた。
暗転
≪楽しければ≫
幸せとは何ぞや。
彼女と結ばれてから、そんなことを漠然と考えるようになった。そのことを食卓で彼女に言えば「ためらわないことさ!」と格好をつけて言う。それに私は笑ってしまう。
「で、なんでそんなことを?」
スパゲッティをくるくる回しながら、彼女が聞いてくる。
「んー、これでいいのかなーって」
単純に不安なのかもしれない。女同士では、どうしても世間一般の『幸せ』とされるものを得られないことは多々あるのだ。
知らぬ仲ではない。思っていることを全部話す。
「んー。幸せってなんだろね」
能天気な彼女は、ニコニコとそんなことを言う。悩みなどなさそうに。
「私はね、幸せじゃないことを幸せっていうんだと思う」
丸めたスパゲッティを口に含みながら彼女が言う。
「つまり、不幸じゃなけりゃ、いいんだよ」
「それは何とも屁理屈な」
「屁理屈でいいのだ。幸せなど、一般化できない物ナノダ」
空の皿でフォークをくるくる
「例えば、好きな料理を食べれば幸せだろう。普段の君だ」
フォークでスパゲッティと私を指す
「でも実は、私はスパゲッティ嫌いなのだ。でも幸せなのだ」
彼女があっけらかんと笑った
≪楽しくないコメディー≫
「告白スイッチ『あ』」
いつも奇天烈な恋人が、いつにもまして頓狂なことを言う。手に持つのはティッシュ箱。
「愛してる」
ため息が出るわ。
「告白スイッチ『い』」
「いつまでも愛してる」
惚れた弱みかもしれない
「告白スイッチ『う』」
「生まれてきてくれてありがとう」
悔しいことに、こいつはオンリーワンだろう
「告白スイッチ『え』」
「永遠に一緒にいよう」
いい加減愛想もつきそうだと毎日言っている気がするな
「告白スイッチ『お』」
「おっぱい揉ませろ」
私たちは今からセックスをするつもりだったんだぞ!だから二人とも裸なんだよ!いまさら恥ずかしがるなよ!
「いい加減愛想が尽きそうだ!」
≪喜んで≫
下駄箱に謎の紙が1枚。
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私は、友人の元に走った。
彼女は、私と同じ気持ちだったのだ。それがとてつもなくうれしかった。
例え、彼女が言えなくたって私が言ってやるのだ「すき」と。そして、彼女を抱きしめてキスしよう。
遠くに、これから恋人になる人が見えた。
「沙希!」




