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貌
私は顔を覚えられない。先生の顔、兄弟の顔、親の顔、果ては自身の顔さえ。私にとって表情なぞ、路傍の石を見分けるほどに難易度が高いのだ。それでも、周りの理解でそれなりに良い人生を送れていると思う。最も、公言はしていないため、理解者はごく一部だが。
学机で益体もないことを考えていれば、ホームルームが終了し、下校とあいなる。
肩に学生鞄をかけ、廊下に出る。すると、美少女が視界の端から真ん中へと入り込んできて、そのまま陣取る。目が合うが、直感的には知らない人。しかし、理性的には知り合いだと判断する。
「さ、帰りましょ」
その声を聞いて、ようやく誰か判別がつく。彼女は、私の一番の理解者である幼馴染だ。
「ねえ、今日はどんな風に思った」
見れば、彼女が口角を上げていた。この質問は会うたびにされているもので、私の回答もお決まりのもの。
「かわいい子だなって」
顔が覚えられない私にとって、美醜の判別などつかない。そもそもの基準がないからだ。しかし、なぜか彼女だけは「美しい」と感じる。
会うたびが初対面。しかし、彼女は私にとって宝石で、特別だ。
私は、彼女だけは間違えない




