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あばかず
雨がよく降るのは、今が紫陽花の季節だから。でも傘を忘れてしまったのは私の不注意のせい。私は、下校途中に雨に降られ、急いで軒下に入ったはいいものの、途方に暮れてしまっていた。
何かないかと辺りを見ていれば、違う制服の女の子が走ってくる。よく見れば、久しぶりに見る幼馴染。
軒下まで来た彼女に話しかける。
「傘忘れるなんて珍しいね」
記憶の中の彼女は傘を忘れるような子ではない。
「久しぶり。今日は偶々、偶々、ね」
そう言いながら、鞄からタオルを取り出し、髪を拭き始める。彼女は、雨に降られたにしてはあまり濡れていなかったように思えた。
「最近、どう?」
雨に打たれる緑を見ていると、彼女が唐突に聞いてくる。
「どうって?」
彼女に目を合わせれば、タオルを投げ渡される。
「彼氏とか」
「いないなぁ」
嘘をつく必要はない。タオルで髪を拭きながら彼女に同じ質問をする。
「いないよ。私、好きな人いるもん」
はにかむ彼女を揶揄ってやる。
言葉に違和を覚えるのは、鞄の中に折り畳み傘が見えているのは、黙っておくことにした。隠すことが下手な彼女のために。
雨はまだ、止みそうにない




