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バンジー!!
ビルの谷間に風が吹く。足元は遥か地面が見える金網。
顔を上げ、向かいのビルの窓の奥からこちらを見ている愛しの人を認める。
「飛ばなきゃダメぇ!?」
聞こえるはずもないが、私は彼女に向かって叫ぶ。すると彼女は頷き、足元のスケッチブックを開いて見せる。
『飛べ』
「……」
下を見る。猫の額ほどのハンモックが見える。
彼女を見る。彼女は私が好きになった笑顔で下を指さす。
「愛してるよ」
覚悟を決め、大きく前に飛ぶ。
「愛しているよぉぉぉぉ!!」
風が鼓膜を叩き、涙が後ろに飛んでいき、髪が渦巻くのを感じる。
「フべ!!」
突如体に上へと引っ張る力が働き、ゆっくりと減速しながら地面へと近づく。
そして、地面から延びるポールに手を伸ばす。
「届けぇぇ!!」
そこにあるのは結婚指輪。
彼女から私への愛の印。
私はそれを手に握りこむ。
「しゃあ!!取った!!」
私と結婚するなら覚悟を見せろと不遜に言い放った彼女の、呆れながらも嬉しそうな顔を幻視する。
私も思わず顔を緩ませたところで、ゴムの揺り戻しが襲い掛る。
「死ぬ……」
指輪は絶対に放さない。




