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お忍びで父上が来て厄介な案件もキタコレ

「シャアよ、元気そうで在るな。」

目の前で、温和そうなフリした結構キッツイ性格の父上がおられる。

こんな時、どんな顔したらええねん?

城での最後が俺様今生の別れとか思ってたから、マジビビったよ。

父上が穏やかにしておられるが…。

又こんな辺境に、単身お忍びで転移して来るとか予想外。

まぁ、側近より確かに強いからな。

流石皇太子時代、冒険者ギルドでSクラスだった男は行動早いよ。

先触れは一時間前だった。

いやまて、父上幾ら何でもこっちの予定スルーっすか。

流石国王、やりたい放題自由人。

いやまあ、魔物狩りは昨日やったし。

特に畑仕事以外今日はやる事無いから良いんだけどさ。

あ、ハイド目逸らしやがった。

あいつ出迎え予定聞かされてたな。

父上の前で溜息吐く訳にもいかず、取り敢えず対応する事にした。

何だろうな、何か問題持ってきた感満載。

「はい、皆のお陰で何とかやって行けるようになりました。」

「そうか、冒険者ギルドでも話題になっているようだぞ。」

「ははは、流石に魔物の多い迷いの森の近くなので。

定期的に魔物狩りし無いと、スタンピードは避けたいですからね。」

「ふむ、良い心がけだ。

魅了が解け、やっとそなたらしくなったようで、ワシは安心したぞ。

王籍には戻せぬし、表立って息子扱い出来ぬ身だが。

ワシと母上は、今でも其方を息子と思うておる。

それを忘れず励むと良い。」

満足そうに頷くと、俺の頭を撫でた。

少し俺は目の奥がツンとするが、泣く訳にもいかず。

何とか堪えて笑った見た。

「所で、どうして此方に?」

誤魔化す様に本題を切り出す。

多分父上の本来の訪問もコレだろうからだ。

「そうじゃな、実は其方の作った避難所を見学しに来たのじゃよ。

加護持ちの力は、磨けば磨くほど多種多様に渡って花開くという。

その片鱗を見にの。」

直ぐに案内しようとすると、父上は俺の手を掴んだ。

「もう一つ、その出来栄えを見て直ぐに使用する事になった。」

「え⁈使用?」

「うむ、実はここからは離れておるのだが。

リバール地域でスタンピードが発生しての。

退治する冒険者集めと、義勇軍を集め。

現在各地に分散させ、避難させておるのだ。

流石に冒険者ギルドは人手が多いから、直ぐに集まったのだが。

避難所が足りぬ。」

父上言葉に息を呑んだ後、頷く。

リバールは王都近くの主要都市だ。

確かに分散させてもかなりの人数だろう。

「分かりました。

今ある住宅は実験的に作成したので、比較的ゆったりとしておりますから貴族用にして地下階層を増やし。

それとは別に、新たな居住区をもう少し増やすのですね。

この辺りだと、整地してもあと二十件が限度ですが。

地下と上の階層を増やして、アパートのような形式にすれば。

多少手狭でも、100人位は受け入れられると思われます。」

シャアの言葉に、一瞬困惑する。

だが、直ぐに頷き避難所予定地へと向かった。

それはアザゼル王にとっては見た事の無い、見事な日本家屋が立ち並ぶ住宅地。

避難所とは思えぬ立派さだ。

その周りに、とんでもない早さでアパートを創り上げて行くシャアの手際に、アザゼル王は息を呑んだ。

確かに先程迄の居住区よりは手狭だ。

しかし、木で作ったオンボロの避難所よりは全然豪華で安全に見えるし。

所々に施された魔物除けの魔法や、生活に必要な上下水道などは、とんでもなく洗練されている。

太古、異世界の記憶を持った加護持ちが居た国に訪れた際に見かけた上下水道の様に、とんでもなく洗練された作りをして居たのだ。

とても精密なので、加護持ち以外再現が出来無いのと言われている。

きっとその前世の異世界が、優美で高度な文明を持っていたのかもしれない。

返す返すも、あのトキと言う女狐の所為で、とても貴重な王族で加護持を手元から失った事が悔やまれる。

だかしかし、今シャアは何処かのびのびとして居る。

王族で王宮にいたままでは、この能力も生かされず。

この楽しそうな笑顔も、多分見る事は叶わなかっただろう。

それに、死に別れた訳でも外国へ追放したのでも無いからこうして会う事もできたから、取り敢えず良しとした。

作業が終り、アパートも検分。

アザゼル王は満足そうに頷いて、シャアに言った。

「問題無かろう。

細かな生活用品や食糧は此方で用意するから安心しろ。」

「はい、有難う御座います。」

「後、王籍抜けた其方を蔑む者も出るやもしれぬから。

因縁向けられたら、ワシの認可状を見せるが良い。

アレはワシ以外破棄出来ぬ其方へ許可免状故、それに逆らうのはワシへの反逆罪になる。

今の其方ならば悪用もするまい。」

カラカラと笑ってトンデモナイ事を言ってますね、父上。

「アハハハ、まあ一・二年の我慢ですし。

そこの新居館を取り上げようとする者でも出なければ、そこ迄は…。」

「おお、それ、それよ。」

「え?」

「知っておるか?

あのレデュウ男爵砦は、加護持ちの祖先殿が作ったと言う噂が有ると。

其方の母上が婚姻前に言っておった。

奇縁よの。」

「え?うえー?!」

「ふはは、ついでにあの館は、堅牢な砦として有名での。

欲しがる騎士公は多いから、釘さしも兼ねて存分に使うと良いぞ。」

うはは、やっぱ訳あり物件か。

もう分かったよ、歴史好きがご先祖様ですかい。

ナカーマー!

もうここに来る事になったのも、きっと運命だね。

後で暇見てご先祖様の軌跡を調べてみるとしよう。

きっとここの図書室に文献とか結構有ったしな。

「はい、有難う御座います父上!」


そうして、久方ぶりの父との再会を終え、俺は避難所の名主としても稼働することとなった。

まあ取り敢えず、新たな建築物以外に。

避難所周りの防護壁とかも、念の為クルッと張り巡らせておこうと思う。

目に見える防御の壁は、魔力や戦闘力の低い庶民に精神的安心感として作用するだろう。

うん、レデュウ避難所村とでも名付けて置くかな。

趣味で簡易的だが、学校や協会や病院も作って置いた。

勉強は庶民相手なら、俺も俺の配下達もそれなりに教えられるだろうし。

治療関連も、異世界知識は俺も其れなりに知ってるし。

この世界の治癒魔法とかで簡単な物ならメイド母が得意だ。

本格的な物は避難民の中に居たら協力させるとして。

居なかったら、呼び寄せれば…。

まぁ、俺の呼び掛けでダメならコッソリ父上に掛けあおう。

うん、丸投げだな。

流石に専門の医者か治癒魔法使いが居無いのは、避難で衰弱したり大怪我している人が居たらかなりキツイと思うんだよね。

だから、それだけは要確保。


後、避難だけだと心が腐るから、舞台付きの野外公園も用意して。

色々周辺の村人招いて歌とか踊りとか芝居とかやらせるのもいいだろう。

心のケアって奴だ。

問題は、俺が何処迄協力者を確保出来るかなんだよ。

焦らず頑張って、信頼関係構築していかなきゃだよな。

もう少し広かったら、戦闘しても殺せないシステム組み込んだ、コロシアムとか作ってみたい。

ガチンコレスリングみたいなの。

迷いの森の近くだと、荒くれ者はどうしても集まるからさ。

憂さ晴らしや、戦闘訓練所代わりにして欲しい訳ですよ。

まあでも、その構想は住宅地にしちゃったからボツだけどね。

無闇矢鱈だと伐採すんのも、森の精霊さん達怒るからね。

俺がここまでって言ったのも。

彼らに貰った許可の範囲さ。

お礼は綺麗な花々を全ての季節に育てる事。

この砦はほぼ捨てられて居たから。

彼らからしたら闖入者な俺が、レデュウの末裔だからこそ受け入れられた。

どうもご先祖様は、余程精霊を大切に扱ったようだ。

長寿の彼らは受けた恩は忘れないのだ。

それがなくとも、実際森は人よりも精霊の聖域だ。

それを侵すのは、愚かな行為なんだよ。

まあそんなわけで、下準備に奔走し始めたのだった。

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