閑話 闇の贄
魔族サイドです。
とある廃墟城。
血溜まりが、凄まじい勢いで発生しては消えて行くのを繰り返す。
血溜まり中央で、赤子が一人眠っている。
赤子は血塗れて穢れる事も無く、まるで居心地の良い揺りかごに居るかのような無邪気な寝顔だ。
その赤子が、まるでバキュームカーか掃除機のように血溜まりを気化させ、どんどん吸収していると誰が信じよう?
「やはり我らが王になられる若君は、沢山召し上がられますなぁ。」
総じて容姿端麗な魔族だが。
特に美しい美貌の魔族の男は、普段の冷淡さがなりを潜めたように嬉しそうに笑う。
「ふふっ、アスモよ。
これでは足らぬかも知れないな。
又贄を増やして参るかな。」
もう一人の屈強な魔族が、挑発的獰猛的な笑みを浮かべる。
「アスタロ駄目よ、余り狩り過ぎると王族が警戒するわ。
覚醒前に若君潰されたら困るのは我らよ?」
細身の性別が分からない中性的な魔族が、窘めるように止める。
「ふん、王族なぞどうでも良いが。
まぁベリアの言う通り、若君が覚醒する事を邪魔される訳にはいかぬからな。
ちっ、面倒な。」
つまらなそうに、アスタロは舌打ちをする。
「しかし、チョロチョロネズミは動いてますねぇ。気付いては居ないようですが、邪魔だし少し遊んで殺るか?」
クスクスと優しそうな笑顔で、ぶっそうなことを言う魔族は、長い髪をかきあげてアスモに流し目。
「王族の諜報部隊、一部の冒険者ギルド員、後は…そうですねぇ、殺された親族辺りから頼まれた傭兵辺りが動いてますね。
多少の異変…殺人事件か魔物のスタンピード程度でしか認識しては居ないようですが、数はまだ少ないようですね。」
「へぇ、まぁそんな程度か。
つまんねえな。」
興を削がれた様子で、ソファーにドカッと座る。
「アスタロマジ脳筋だなぁ。」
「筋肉最高だろうがよ!」
アスタロとアスモのやり取りは、じゃれ合いのようなものだった。
「レヴィアはぁ、おっきな魔法バンバン撃てればぁそれで良いよぉ。」
幼い美少女風なレヴィアは、舌っ足らずにあざとく笑う。
但し見た目通りの歳ではない。
「まぁいいさ、それよりも王都の結界は弱めた。
次は迷いの森…、いや精霊の都の世界樹の子供達を潰さないと俺らの力の半分も出せないぜ?」
「まぁ、その前に精霊どもを封じようぜ。
倒せるけどよぉ。
あいつら消滅させるのに、俺らの力を使うと共倒れだから時間かかりすぎる。」
「魔王様が覚醒為されば、魔族以外全て滅ぼして神殺しに行けるのになぁ。」
「我らの悲願、神よりも崇高なる存在へと進化し。世界を征服せねばな。」
「全ては魔王様の御為に!」
「我等は魔王様の手足となろう!」
「「「「魔王様万歳!」」」」
四人の声は廃墟城に響き渡る。
久々の更新。
お待たせしました。