閑話 続編ヒロインは女神と王子と戯れる?
カーテンから零れた朝日が差し込み、自然とミシェルアは目覚める。
日本では寝坊助さんだった事を考えると、身に付いた生活習慣と言う物はすごいんだなと思う。
こちらでは家族は存命だが、子沢山な農家だった為に口減しで教会へ預けられた後、能力的に多産系巫女にさせられそうになって逃げて冒険者になった。
前世男がビッチ職とか無理だしな!
コツコツ小銭を貯めて先輩達から野営の仕方や護身術や短剣の使い方や魔法を習い。
回復神聖魔法使いとして活動するようになった。
初めはソロだったけれど、臨時で他のパーティーに参加するようになったら重宝されて、あちこちから引っ張りだことなった。
やはりパニマ神の加護が有るからか、能力の伸びしろも多く、成長も早いと言われた。
男が居るパーティーはなるたけ避け、男が居たとしてもなるたけ紅一点にならず、人畜無害そうな人の所を選ぶ。
勘と前世の男だった記憶がどうやら危険察知能力として作用したらしい。
今の所、ヤバイパーティーには遭遇していない。
ファーブラの文明は日本と比べると科学方面は劣っている。
だが、魔法が発達したこの世界では、考えるとなかなか発達し辛いのも分かるのだ。
科学や数学的な物とファンタジーな魔法が結び合うには、ファーブラは高度に熟成されたデーターと知識と技術と経験が足らない。
多分、パニマ創造神様が異世界人で特に魔法を概念やお伽話的にでも知識としてある日本人の魂を欲しがる理由の一つに、完全な科学的文明人の中では魂を転移転生させた後に生きやすい上、世界も発達出来る下地を買っているのかも知れない。
実際、パルーニャが神の理想的な使徒、天使以上神様未満な半神から本当の神界人へと進化した経緯も、ゴーレムロボや領地経営の技術などからだろう。
ゆっくり起き上がり、顔を洗う。
ついでに生活魔法で全身をリフレッシュさせると、服は下ろし立て髪を梳か状態に。
顔や肌はマッサージや風呂上がりのように、プルツヤに変わる。
そこから鏡を見ながら、化粧水を地肌に染み込ませ塗り込む。
厚化粧にする為ではなく、日差しやホコリなどから肌を守る為だ。
ミシェルアの前世は男だった。
だが、だからこそ。
こんな可愛い顔の女の子である今の自分を磨かないのは罪だと思って調べまくった。
因みに、秋葉原辺りの地下アイドル追っかけしていた頃に、ファンとして彼女らに綺麗になって欲しくて、手作りのアロマ化粧品やアロマ香水なんかを作って差し入れしていた時期が有り。
使ってくれた地下アイドルちゃんの一人から効果を褒められた。
調子こいて年に二回のイベントスペースで、同人誌以外に、そのアロマ関連の化粧水やアロマ香水をついでに置いてから、前世のサークルはソコソコ人気となった。
尚、夏に喜ばれたのは、日焼けケアの化粧水だった。
なので、その辺りの知識は前世で構築されて居た為。
ファーブラに有るものでアロマ関連の物を作り出し。
今世では自身に使った。
理想的ナチュラルメイクに仕上がりに、ミシェルアは満足そうな表情を浮かべ鏡台から退く。
プルツヤ唇には、手作り蜂蜜リップを塗って保湿も完璧だ。
ちなみに、暑化粧になる口紅やファンデーションやチークやアイシャドウなどはしない。
まだ未成年にガッツリ塗りたくるのは寧ろ肌が悪くなるからしたくないからだ。
すっかりナルシスト風味なミシェルアだが、本人には自覚もなく。
本気で女の子は綺麗になれると信じている。
後に、ミシェルアブランドとしてこのアロマ化粧品関連はブレイクするのだが。
それは別の話。
「おはようございます〜、朝粥定食下さいな。」
シャアのメイド長でもあるクルルさんとその娘のメルルさんや乳兄妹のケイトさんの三人と、料理人として王宮から後からやって来たベランナと言うちょっと男前な性格の20代の女性と、同じ20代のアスターと言う大人しい男が、この砦に住む者のご飯をいつも用意してくれた。
ミシェルアは初めこそ砦の外の家に住んでいたのだが、訓練の為に砦の一区画に住まわせて貰っている。
ここ、どんな魔改造してあるのか。
外装よりも中はメチャ広い。
イメージは巨大なモール店だろう。
広いはずであると確信したのは、地下階層にゴーレムロボを収納していた辺りだろうな。
あんなもん、普通の砦に入りきらんよ。
因みに、ベランナとアスターは姉弟なのだそうな。
アスターはベランナに引き摺られて来たんだろうな、とだけ察した。
食堂へ向かい朝食を貰って食べる。
木の実とキノコの朝粥と、水牛のモッツァレラチーズの乗ったサラダ。
そして温めた水牛のミルクだ。
水牛は子牛程の大きさで、馬の代わりに水田耕作や物の運搬に使われている。
地球でいうパッファローのような大きな種類では無いのだが、力も強く餌も少なく。
主に雑草を食べてくれる。
又、病に強く頑丈で、繁殖力もそこそこだ。
普段は農耕やミルク用がメインなのだが。
食べても美味しい為、水田扱う農民に人気があった。
増えたら他の地方に売れば良いので楽なのだろう。
「おはようミシェルア、早いな。」
「おはようございます〜シャア君。」
ここの主シャアが来た。
彼は前世の同郷者で、ミシェルアと違い今世男前世は女性だそうな。
その為か、ミシェルアになってからも馴染めない異性への拒否感や嫌悪感が余り湧かない。
ミシェルアは、乙女ゲームの二作目プレイヤーヒロインなのだ。
だから、幼い頃より愛らしく美しく、野郎共の目を引いてしまっていた。
流石にね、前世男だったから、男の下心は分かる。
コレだけ可愛い娘だしな。
でもだからこそ、気色悪いと思ってしまった。
出来れば関わりたくなかった。
しかし、乙女ゲーム本編に入った途端状況が一変。
シャアの隣のパルーニャが居た、別作品のヒロインが居た事で、色々シナリオが本筋からズレている事を知ったのだ。
シャアをそれから眺めてみた。
幼いショタショタしい童顔俺様美形。
しかし、不思議と嫌悪感が湧かず、きさくな性格のシャアとは仲良くなれた。
多分ゲーム補正とかでは無く、彼の前世が同郷で女性なのがデカイのかも知れない。
あたしと同じアンバランスな転生仲間。
恋ではないが、共犯者とか相棒を見つけたような感覚なのだ。
それを本人に言ったら、何故か真っ赤になって照れまくられた。
王族だったから、彼は爛れた人間関係でどすヨゴレてるかと思っていたのだが。
以外に純情らしい。
うん、穿った見方をしてゴメンよシャア君。
肉体的な訓練と、能力的訓練の後、最近は地下のロボゴーレムロボを操縦訓練をしている。
俺のゴーレムロボは緑色の魔法少女風なデザインだ。アシスタントシステムは、猫耳メイドアイドル風な愛らしい美少女になって。
で、名前はドリームにした。
なんか全体的に夢っぽいからだ。
ロボを操縦訓練する事よりも、アシスタントシステムの育成が楽し過ぎる件!
尚、パルーニャの訓練はドSだった。
可愛い娘でなきゃ耐えなかった、と思う位にはかなり鬼畜だったよ。
ふふ、鬼畜攻めパルーニャたそかわゆす。
と、脳内変換してるのは秘密だ。
さて、そのパルーニャたそだが、彼女も同郷転生者からのパニマの使徒女神になった。
元々人だったのを考えると、彼女はかなりの下剋上だと思うよ。
二人も同郷転生者な為か。
彼等の面倒見が良い性格のお陰なのか。
ミシェルアにとって居心地の良い関係に変わって行くのに時間は掛からなかった。
さらに言えば、この頃からミシェルアはシャアに心惹かれ始めていたのだが。
いかんせん前世の記憶に引き摺られ、無自覚だ。
そんな感じで知らぬ間に、シャアと親密度を緩やかに上げているミシェルアなのだが。
後に面倒な事にも巻き込まれてしまうのを、この時の彼女は気付く事はなかった。