続編ヒロイン?登場
冒険者ギルドが交代要員を連れて来た。
迷いの森から漏れ出る魔物退治に、同じ者だけだと修行にもなら無い為、半年置きにメンバーを半分位入れ替える。
残るのは一年契約の者達となるので、先発組と新入りが程よくズレる仕組みだった。
レデュウ村に来る者達は、ブッチャケ選抜部隊だ。
王都へと帰還すると、実力も上がった彼らは依頼も引く手数多になって知名度も上がる。
いつの間にか、一種のステータスへと変わって行った。
農業ギルドの方は、二年周期で入れ替えている。
やはり半数をズラして派遣させて来るのだ。
流石に冒険者よりは期間が長いのだが。
長期作物は、基本シャア達と攻略者達の担当にして有る。
特に攻略者達は、各ギルドの上層部にいつの間にか収まって居る。
やはり、実力やスペックは下手な庶民より高いしな。
そんなわけで、新入りとの顔合わせだ。
一通り挨拶が終わってから、顔馴染みの所へと向かった。
「シャア君シャア君!お久さ〜♪」
「バッカ!テレサお前馴れ馴れしいだろ?
シャア殿に失礼だ。」
「細かいなあカドラーは!
だからモテナイのよ?」
「あはは、お久しぶりですテレサさん、カドラー殿。」
厳ついドワーフ盾重騎士とアホっぽい魔女のエルフなお姉さんが来て居る。
王都ギルドでたまにお世話になった顔馴染みな実力派先輩冒険者だ。
生真面目なカドラーと面倒見の良い明るいテレサは良いコンビで、種族が違うけれど仲が良いパーティだ。
「あれ?今回はセルドラ殿は?」
彼らのもう一人のパーティメンバーで回復神聖魔法の使い手、セルドラは人族のチャラ男風なイケメン優男だが、その見た目と違い人当たりも良く全然チャラ男では無かった。
「あぁ、セルドラは王都ギルドで複数の怪我人が出てね。
今回は、そちらの対応が有る程度終わってから来るのさ。
あいつより上位な回復魔法使い手になると、かなりお金が掛かるから。
皆引き止めに必死なのさ。」
むさい冒険者怪我人にとり囲まれるイケメンとか、薄い本が厚くなるな!
いやそうで無く。
「怪我人…又スタンピードですか?」
「いや、それがな。ちょっと変なんだよ。」
「変?」
「王都の近くのへレスの泉。
カレイド街側にあるカレイド古墳群のダンジョン。
ハルハト村近くのハルハト南方草原。
ドルトバ港町のドルトバ海岸。
マシュード川上流にあるケゴーン滝。
この五箇所で、殺人事件が有ったらしい。
だが、血糊だけで死体も遺体も何も無かったんだよ。
調べた結果、魔物では無く大量な人の血だって話だよ。
物騒な話しさ。
それから、新種のモンスターがその辺りで湧くようになってな。
結構強いみたいでね、怪我人も増えたって話しさ。」
「確かに変だな…あの辺りは幾つか神殿も近いから、これまで弱い魔物位しか今まで出なかったのに…。」
ぼんやり呟いてから、ふとある事に気付く。
「な、なぁガドラー?
この国の地図、有るか?」
「地図?ああ、大雑把なのなら有るが。
えーっと有った!」
ガサゴソとアイテム袋から地図を取り出して
テーブルへと広げた。
「やっぱり…。」
「どうかしたのか?」
不思議そうに他の冒険者も覗き込む。
「あのさ、謎の血糊の有った場所聞いて思ったんだけど、繋げると王都を取り囲んで五芒星に…。」
それまでザワザワしていた冒険者ギルドが静まり返る。
「本当だ、偶然にしては気味が悪いな。」
「何かの儀式?」
「何の為に?」
シーンと静まり返る。
一瞬の静寂の後、パルーニャがボソリと呟いた。
「王都の結界力を削ぐ魔法陣ね。」
「結界を⁈」
「まだ大した力にはならない嫌がらせレベルだけれど。
近くの魔物の活性化位にはなるかしら。
犯人は魔族か魔族を装った国家転覆を狙う者達って所かしら?」
「お嬢ちゃんは誰だい?
見かけ無い娘だね。」
「あ、こいつは俺の…。」
慌てて間に入ろうとするが、シャアをパルーニャは手で制す。
そして、何か言う前にバタン!と大きな音で扉が開かれた。
「すみませ〜ん!遅れちゃいました。
新しく配属されたミシェルア、回復神聖魔法使いでぇす!
えへへ、よろしくお願いしま〜す。」
甘ったるい場違い全開な声に振り返ると、柔らかそうな髪質の、ツインテールで淡いピンクブラチナゴールドな髪。
垂れ目の緑の瞳。
正統派美少女だが、彼女はパルーニャをぽかんと眺め、見る見る顔を赤らめた。
「嘘⁉パルーニャたそ何でおるん?
ハァハァ。
生パルーニャたそ可愛いぃぃい。
パルーニャたそマジ女神。
触ってもいいかな?良いよね?
同性だもの合法よね!」
「ミシェルア…あ!ここの続編ヒロイン!
てかなんか近い近い近い!
つーか怖い。
ちょっとシャア!
あんたの続編ヒロインでしょ?
止めなさいよ。」
二人の追いかけっこが始まり、俺も巻き込まれた。
実にこの会話は日本語で俺らにしか分からないから、他の冒険者達はぽかんとしている。
「ふへ?続編?何それ俺聞いてない。」
「しまった!続編見せる前にあたしこっちきてたわ。」
「えええ?シャア王子もパルーニャたそも同郷なの?
うわっ話したいよぉ。」
彼女はヒートアップ。俺共々パルーニャも捕縛されてしまった。
続編ヒロイン?強い⁈
少しして、ちょっと騒ぎ過ぎて怒られてしまい、現在別室にて三人で会談なう。
なんと、俺が辺境送りになったRPG外伝が続編として出ていたそうだ。
システムとしてはよく有るRPGと、スチルの有る乙女ゲームとギャルゲーセット寄りのゲームだ。
そんで、主人公が俺かミシェルアを選択出来たそうな。
ストーリーは、辺境送りになったシャア、もしくは辺境へと修業に来たミシェルアが、砦で仲間を集め、信頼度を上げて行く。
その過程で、魔物を倒したり。
村を発展させたり。
王都転覆を狙う謎の貴族と闘ったりしつつ。
恋愛や友情を深めて行くゲームだった。
そして、このミシェルア…俺とは逆で前世男なガチオタ。
ゲームは楽しければジャンルこだわらずに何でもやる方で、特に乙女ゲームはプレイヤーなヒロインが可愛いケースが多くてやっていたそうな。
後、ギャルゲーヒロインの見せ方とやはり違うので。
やり始めた当初は、新鮮だったらしい。
で、先程からパルーニャに凄くハァハァしてます。
見た目は可憐なのに、なんてこったい!
俺のゲームのヒロインズは、ビッチと百合男の娘とかアレなのしか居無いのかヨ!
俺は幾ら何でも前世女だからと言って、ホモに走る気は無いから。
せめて純朴なヒロインプリーズ!
「だからね、あたしは中古で結婚済みなシャアの先祖な凄いおばあちゃんなの。」
「ロリババア最高デス!
中古とか気にするのは変態か底辺童貞だけですよ?
運動していても破れるのに、アホかと。
それに可愛いが正義なので問題無いです。」
問題ありまくりですな。
「シャア〜助けろよぉ。」
「てか、シャア王子とパルーニャたそはどんな関係…まさかもうラブラブ?
くっ、出遅れた⁈いや負けないからね!」
「俺とパルーニャは前世からの親友で現世は俺の先祖なんだよパルーニャ。」
「なんだ、全然問題無いじゃないですか!」
「問題有りまくりです!」
「あはっ、照れちゃって可愛いなぁ、ゲームだとおとなしいからそれほどじゃなかったんだけど。
今のパルーニャたそボクのストライクですぜ!」
どうやら会話になって居無いようだった。
「まぁ冗談はさて置き、魔族出てきたみたいですね。
ボクは回復はソコソコ出来るんですけど、浄化魔法のレベル低いので、鍛えてくれませんか?
パルーニャ様。」
真面目にハキハキと話し始める。
どうやらパルーニャの反応見て楽しんでいただけ見たいだ。
どっちがどSなのやら。
パルーニャはやり辛そうに、渋々承諾した。
数日後、げっそりしたパルーニャと、ツヤツヤなミシェルアが俺の砦館の訓練室で見かけられるようになった。
何かが吸い取られる気がするらしい。
だって、男の娘だもん!
というサブタイトルつけるか迷ったのは秘密ですぜ!
でも、ミシェルアちゃんは前世が男なだけで現世は女の子です。
シャアが男の娘の使い方間違っただけですが、実質はTS娘ですな。
そのうち突っ込まれそう。
所で、私の作品では初の日本人男子前世→異世界初転生女性。
かも。
思った以上に大変な変態さんですね。
因みに、ミシェルアちゃんの加護は、パニマ様とマルルン女神様です。
マルルン女神様の加護は、神殿入りした神官見習い研修の時に付与されました。
但し、ミシェルア本人は多産系女神の巫女とか神官にはなりたくなかったので(現世女でも、多人数の男と神の務めでも身体の関係を持つとか前世男の記憶がアウトォォォォ!と叫んだ。らしい。)すぐに辞めた為、加護が有る事を未だに知りません。
にしても、乙女ゲームをベースにしてるのに。華やかな要素が無いね。