ご注文はドラゴンですか?
「オラオラ!集中しろチンタラすんなや!」
何処ぞのヤンキーのようなガラの悪い女神様の指導の元、俺様は新生俺様になった。
うん、言ってみただけで実感湧かないな。
ただ、仲間内の話でもかなり強くなったそうだ。
何で実感湧かないかと言うとだな。
有る一定の強さを超えると、さらっと修行ランクじわっと上げるんだよ。
例えるなら。
石の上に雫を落として削る。
密室の牢獄に雫を落として溺れさせる。
みたいな、即効性は無いんだけどじわっとってやつ?
それでもあいつは冒険者で言うと、幻想級とか神話級みたいな。
いわゆるSSSとかG級をすぼーんと超えてるレベルな関係で、軽くが軽く無いわけだ。
しかも、飴と鞭の匙加減がハイスペックなのは、前世も今もご愛嬌だ。
お蔭で、配下達もすっかり信頼して居る。
あいつの人心掌握術は、天然なので仕方ないけども。
他人に懐か無い警戒心の塊みたいな連中の、心の壁を粉砕して琴線に優しく触れた行くスタイルは、俺にはマネ出来無い。
だから、悔しくはあるが、嫉妬は湧かないんだな、コレが。
そうだな、コレがパルーニャと初見だったなら嫉妬したりしたかもしれないが。
前世も今世も奴は変わら無い。
だからこそ、誰よりも信頼出来るんだ。
まぁ、本人には言わないけどな。
「よし、今日はここまで。」
「ありがとうございました。」
日本風の正座でお辞儀。
コレがシメで修行を終える。
俺には懐かしいのだが、配下達は初め戸惑っていた。
まぁ、椅子文化圏に、床に座る正座文化は無いしな。
濡れタオルで軽く汗を拭く。
無論パルーニャの奴は小汗一つかいてない。
因みに修行内容だが至ってシンプル。
魔法講座→準備運動→体術→武術→昼食→瞑想と体内魔力の制御→魔法実戦。
こんな感じだ。
コレは、王宮でも学園でも似たようなプログラムですよ。
パルーニャの場合、無駄要素を省いている。
俺は結構いい加減な方なので、色々力の使い方とか魔力制御に無駄が多く。
その辺りをシメる所からのスタートになっていた。
効率と魔力相性何かを調べながら、色々調整してくれた。
元々無茶苦茶な鍛錬で身体は出来ては居たのだが、その無茶苦茶がよろしく無かった。
変な筋肉の付き方で、動きに癖が出て居たらしい。
動きや身体の悪い癖になると、骨折とか怪我に繋がるからね。
分かりやすく言うと、スポーツとか例えばサッカーや野球選手の学生スターと、体調管理されたプロ選手の違いみたいな感じ?
強いからって酷使したら、学生スターは良く潰れるじゃん?
プロ選手はお金出す分食事やトレーニングをキチッと管理し、何としても選手を長持ちさせたいわけですよ。
活躍してくれたらドル箱なわけですし。
それはともかく、その辺りの筋肉の修正なんかも、時間をかけてやってくれた。
「あ、そうそう、ねぇシャア。
ロボットって好き?」
「は?」
唐突に言い出すパルーニャの言葉に、俺は首を傾げる。
「シャアの名前なら、やっぱりロボット乗らなきゃだよね?」
何の話だ?
「ロボットって…ファンタジーから一気にSFにぶっ飛んだな。
てか、俺の名前でロボットって何だ?
アニメの話かな?
俺はほとんど野郎向けアニメも少ししか見なかったからさ。
マジ全然分からないんだが?」
すると、キラキラしていた奴の瞳からハイライトが消えた。
え?地雷なの?
「ゴーレムでロボット作れるのよあたし。
シャアだし、赤くて三倍ゴーレムロボット作ろうって頑張ったのに。
知らないとか、知らないとか。
ロボットはロマンなのに!」
何だか分からないが、頑張ったらしい。
プルプルしている。
ショック受け過ぎなんだが。
これ、俺が悪いのか?
「えっと…サンキュー?」
首を傾げて言うと、がっくりしながらパルーニャは俺の手を引いて地下へと向かった。
それは俺の知らない区画、座敷童子系精霊さんの許可無いと入れ無い場所へと連行されたのだった。
「な、なぁ、ここって…。」
「精霊ちゃんの許可は貰ってるわよ?
だってここもと我が家だし。」
…さらっと今何をおっしゃってるんすか?
「うん、あんたにはあたしとジン…幸村の血が流れてるのよ。
ここ立てたのあたしらだし。」
「うえーーーーーー⁈」
絶叫する俺に構わずパルーニャは続ける。
「この世界に二度転生したの。
一度目は男で伯爵、幸村は国王になって親友だった。
娘は偶然娘になったから、知らずに悪い運命変える為に頑張ったんだけど、頑張り過ぎて早死にしちゃったの。
二度目はパルーニャになった。
あいつは銀狼族の奴隷になってて、娘は猫族奴隷になってて。
で、助けた時にお互い分かったのよ。
又出会ったって。
そんで、色々冒険者して。
種族的にあいつらが先に死んだ時、パニマ様に招致されたのよ。
転生の輪に彼らは入るが、私は半神半人。
地上で彼等の生まれ変わりを待つのか。
パニマ様の使徒となり、時々地上に関わるかってね。
流石に無駄に過ごすのもアレかなって、つい軽くうけちゃったんだけども。
いやぁ、ちょっと関わるかどころか、魔王の眷属狩でこき使われましたがね。」
ダイジェスト版、スバルん人生遍歴を聞かされる。
ぽかーん。
二度目?
詳しく聞くと、どちらも乙女ゲーム世界が元になって居て。
一度目鬼畜系乙女ゲーム世界のヒロインの父だった。
二度目は甘々な乙女ゲーム世界で、魔族や色んな種族と恋する半神半人なヒロイン。
ダレだよ!
乙女ゲーム攻略対象者で笑ってた奴。
ぐぬぬ。
しかも、俺と違ったのは、記憶覚醒時期と凶運を変えて行った手腕だろうか。
どーなってんだ?
俺は事が済んだ後だったぞ?
「はい、ついた。」
不貞腐れていたので一瞬気付かなかったが、部屋の構造がめちゃくちゃ広くて、なんていうかとても近代的だった。
ふと下を見る。
床が半透明にボンヤリ見えるのだが、どう見てもなんか居る。
赤いメカメカしい見た目の、ゴーレムロボットだった。
「頑張り過ぎて、超イカシテルでしょ?
褒めて褒めて!」
世界観ぶち壊しだろこれ。
ジト目になって眺めていると、それに気付いたのか、口を尖らせる。
「元ネタのロボットには似せて無いわよ?」
何を言ってるのか、俺様分からん。
つーか、これどーすんだ?
配下と父上にどう説明するんだ?
魔王の眷属には有効だろうけど、何処に置くんだよ?
てか、ここからどーやって出すんだ?
転移?とか?
今後のごちゃっとした事案に、俺様ガクーッと肩を落とす。
「ったく、スバルんにはかなわねぇな。」
たははと乾いた笑で小さく呟く。
パルーニャは、にこにこと、機嫌直してゴーレムロボットの説明を始めて居たが、俺は話半分で良く覚えて無い。
後で又聞くの、面倒だなぁ。
とか思ったりもして居る。
次の日、パルーニャの頭にモフモフの白い龍が乗って居た。
反則的に可愛い。
今度のご注文は、ドラゴンですか?