殺戮の女神降臨?
翌日、朝早く少女を休ませた民家へと入る。
念の為取り敢えず、寝てるか起きてるかわから無いので。
寝室の扉をコンコンとノックして見る。
「ふえ?はぁい?どおぞ?」
どうやら起きているみたいだ。
扉を開けて室内に入ると、既にベッドに腰掛けて朝食を食べているみたいだった。
「疲れは取れたかい?」
「うん、有難う助かったよ。」
満面の笑みを浮かべる少女は、やはり何処か懐かしさを感じる。
ふと、彼女の背中の翼が消えている事に気付いて首を傾げた。
「あぁ、翼?
出してると目立っちゃうから、普段は収納してんのよ。
昨日は疲れ過ぎて、仕舞うの忘れちゃったんだわ、まぁオフレコでね、パニマ様の加護持ちシャア元王子?」
俺は自己紹介しただろうか?
いや、して無いな。
「えっ?なんで知ってるんだ?」
「ああ驚かしてごめんね。
この辺りの精霊さん達が教えてくれたのよ。
あたしはパニマ様の使徒で有り、君と同じ日本からの転生者パルーニャ。
パニマ様の命により、君に会いに来たの。」
半神半人のパルーニャ。
魔王の眷属を駆逐する、別命殺戮の女神。
時代時代に現れる魔王の眷属狩りが有名な女神だが、そうか…彼女も元日本からの転生者なのか…。
え?眷属狩り?
さぁっと青ざめて、ある事に気付く。
「ま、まさか、コルベット王国に魔王の眷属が現れたのか?」
「兆候が見られたの、だからあたしが派遣されたのよ。
でもそっちはオマケね。」
「オマケ?」
俺はキョトンとして彼女を眺めた。
「本当に菜奈も転生したんだね…乙女ゲームの攻略対象者とかさぁ、マジウケるんですけど。」
ビクッと固まる。
オレの前世の名前を知る者?
「つーか、ヒロインに捨てられるとか。
性別変わっても、相変わらずダメな方ダメな方を選択するドジっ子なのね。」
ヤレヤレと肩を竦めて、何処かの外国人見たいなリアクションを始めた。
「るせぇ!昴はロリババアじゃねえか!
何千歳何だよ。」
思い出した!
悪友で親友の乙女ゲーマーはこいつだ。
「ロリババアじゃないわ、合法よ合法。
訳750歳位?
神の血筋だから、ほぼ不老不死だし。」
無い胸を反らせて言った。
どうでもイイです、こんちくしょう!
「まぁ取り敢えず、今回あたしがここに来たのは、幾つか用事が有ったの。
一つは魔王の眷属の気配がしたから確認。
もう一つは菜奈…いえ、シャア君に会いに来たの。
もう一つはシャア君のパニマ様からの加護を、覚醒状態に鍛えに来たのよ。
んで、最後の一つ。
ここの結界の強化ね。
魔王の眷属が出てからのスタンピードは、魔物の凶悪化が激化するの。
そうなる前に対処し無いと、ここ以外も危険になるわ。」
パルーニャの言葉に頷くと、そのままパルーニャを連れて、砦館へと向った。
それは、静かにスタートした戦乱の先触れのような出来事だった。
と、後になって思うのだが、まだまだ先の話である。




