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偽勇者
ある日、僕は異世界に転移した。
異世界には魔王がいた。
でも、勇者はいなかった。
一時のみの偽りでいい。
勇者になりたかった。
僕が勇者だと言うと、皆は信じて僕の元には色んな人が集まった。
剣士や魔道士、格闘家に精霊使い。
女もいれば男もいた。
その中の女ばかりを選んで、僕は旅に出た。
異世界転移モノでよくあるような、チートは一切持っていない。
努力をした。
人の前では見せられないから、ありとあらゆるところで努力した。
いつか、僕は魔王の前に立つ。
そして、殺されるだろう。
勇者になれなかった僕という勇者の後をついで、本物の勇者が現れるコトを。
僕の偽りはどれだけ持つのかわからないけれど、僕は今日も仲間を連れて、世界を歩む。
仲間と共に異世界を救う旅に。
神は僕を笑うだろう。
偽物に何ができると。
人は真実を知った時に言うだろう。
あの人はなんか胡散臭かったと。
都合のいい人間でいい。
勇者という肩書きのタメに、ありとあらゆる雑用をやろう。
それで勇者と名乗れるなら。
それで僕を笑わないのなら。