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銀色の風  作者: 塩華抱
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序章 -風を感じる-

「心地よい風が吹いている...」

場所は丘の上、一人の少年が、わざとらしくそう呟いた。

しかし、その場所に風などは吹いていなかった。淡々と照り付けられている太陽の下、人々は存在している。

そんなことも関係なく、少年はこう呟くのだった。

「心地よい風が吹いている...銀色の風だ」



この世界、「ラル・ワールド」には‘風‘が吹かない。

つまり、常に‘凪‘の状態にあることを、人々は既に認知していた。

自然に流れる、心地よい風を、人々は体感したことが無いのである。

しかし、小さな村、「モルガ」に住む一人の少年、レンは、そのことを理解していない。

いや、それどころか彼は、いつも「常に風を感じている」と、言い張るのである。

村人たちは、いつもそんなあり得ないことを言う彼を、罵倒していた。

「やい、レン!また丘の上に登って、何をしようっていうんだ。まさかまだ、風が吹いてるとか、言い張るんじゃないだろうな?」

レンの3つ年上であるレイジュは、丘の上に登る支度をしていたレンにそう言って馬鹿にした。

「違うんだよレイジュ、風が俺を呼んでるんだ。だから俺は行かなくちゃならない」

ワクワクした目をしながら、レンはそう言った。

「フン、勝手にしろ、崖の上から落ちても知らねぇぞ」

レイジュはそう言い捨てて、そそくさと去って行った。場所はレイの家の中である。



丘の上に登ったレンは思った。

「どうして皆ここに来ないのだろう。ここにはこんなにも心地よい風が吹いているというのに」

息をめいいっぱい吸い込んで、めいいっぱい吐く。

自然な空気とともに、自然な風が踊っている。

風は、ここにある。見えないけれども、確かにここにある。

「銀色の風が吹いている...銀色の風が...」

風は確かにそこにある。

レンは時間も忘れて、丘の上で風を体感していた。

誰しもが存在しないと思っている、風を...。


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