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平凡な脇役Aは画面の片隅で躍る【高校編】  作者: 月葉しん


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2014/05/30 冒頭部分改稿しました

 うん、まあ昨日は仕方なく鷹成の家に行ったよ。適当に昼飯食ってから。卵かけご飯だけど。

 俺に料理など期待すんな。レンジでチン✩に、せいぜい鍋にインスタントラーメンだ。なんなら野菜をちぎって入れてやってもいい。苦しゅうない、遠慮なく野菜入れろくださいと言え。

 まな板? 包丁? はッ、そんなもん軟弱な! 男はワイルドに己の手で! マイハンドで! ちぎっては投げだ!! ふ。前世記憶辞書役になってねーぜ。

 それはともかく。弟達が帰ってきたからピカピカの一年生な勇姿を写メって、鷹成の所に行くと告げたら母上に「ついでに書類もらってきて」……と。

 ほう、そもそも他人様にお願いした物の受け取りを俺にやらせる……と。うろんげに眺めたら慌てたようにわたわたするし。

「明日改めてお礼に行くしっ。ほらっ、書類は早めの方がいいしねっ? ……ママ入学式で疲れちゃったのォォォ!」


 知らんがな。


 本当は俺に行かせて終わりにする気だったろ。東雲家に対してつくづく図太い。

 弟の方もうわぁっと驚愕に近い呆れ顔をしていたが、こいつに言わせると俺も相当だそうだ。そもそも鷹成と幼馴染やってるのが信じられないらしい。なんでだ。あいつだって別にフツーに子供だ。

 ……面倒くさいけど。ありとあらゆる意味で超絶面倒くさいけど!


「テスト勉強しに行くけど、お前も行くか?」

「嫌だよ絶対行かない。あの人の教え方鬼じゃん。いつも思うけど、にーちゃんよくあそこん家に平気で行けるよな。なにあの豪邸。庶民の行くとこじゃないよ」

「鬼は否定しないが。あそこは別にただの家という名の箱だろうが」


 無駄にデカくてセキュリティ半端なくて門番までいるけど。テニスコートだの屋内プールだの護衛軍団用の建物とかもあるけど! 家は家だし。

 といって誤魔化してみたら生温かい目で見られた。

 ……仕方ねぇだろ。それがあいつの家なんだから。

 第一、財閥サマのお宅なんだから豪邸で当然だろが。これで五十坪敷地の家とか言ったほうが怖いわ。

 ちなみに我が家であいつの幼馴染枠に入るのは俺だけである。我が弟も俺という接点があるから可能性はあったはずなのだが、見事にスルーした。

 主に弟が。

 昔から俺が鷹成といると(鷹成に)バレないように逃げていきやがる。絶対に一緒に遊ばない。


「にーちゃん見てたら絶対お近づきになりたくない。駄目、厄介ごと、絶対!」


 なんでも幼稚園の頃には既にキケンと思っていたらしい。鷹成本人がどうこうというより、その当時は周囲がヤベェと思ってたそーな。巻き込まれちゃタマランと。

 俺の状況を見ての判断ていうのが……。弟ェ。

 小学校に上がってからは、鷹成といつも一緒にいる俺が兄だと知れると、弟には年上女児が鷹成関連を探りに来たり、ツテにしようと猫なで声で寄って来てた。

それは知ってる。俺、ムカついて蹴散らしたけど。

 自己防衛の為には「知らぬ存ぜぬ近寄らぬ」が一番と早々に結論したらしい。

確かに知らなきゃ何か聞かれても答えようがないからなあ。かくして積極的逃亡で今に到るというわけだ。

 鷹成の方は俺に兄と弟がいるってことは知ってる。知ってるだけ。一応顔は知ってるけど「へー」程度で、ただそれだけ。

 だってさ、俺の兄弟ともがあいつを積極的かつ華麗にスルーして接触を持たないんだもん。お知り合いになりようがないじゃん。完全に「見知らぬ人」と化している。なんだかなぁ。

 で、俺はその後、弟の言うところの鬼にぎうぎうに絞られた。ぎうぎう。

 同じ一年なのに上から目線な指導ってナニソレ解せぬ。



 


 入学二日目にして主要三科目の実力テスト。入学許可証その他と共に春休みの分厚い課題テキストが配布され、その内容の沿ったテストということになっている。

 この結果によって三科目それぞれ1~3組、4~6組の中でクラス分けがされる。α、β、γと上から成績順だ。優劣ということではなく、習熟度によって低いものを上に引き上げ、高いものはより上の……という趣旨だ。

逆を言えばどの教科にしろ無理に上に合わせてわけのわからないまま授業を受けるよりは、背伸びせずに自分に合ったレベルの分かりやすい授業を受けたほうがいい。そのあたりの教師のケア体制は万全になっている。

 全生徒をαレベルに引き上げますよという学校側のアピールともいえる。

そのおかげなのかは分からないが、実際全国模試での学校平均偏差値は常に全国屈指のレベルを保っている。

 基本的にはαに学校側が優秀と認識する教師を持ってくるわけだが、必ずしもそれがイコール授業が分かりやすいになるとは限らない。

αの生徒へは、より高度な授業内容を講義し質問に応え、そこからより高次へのステップアップを促すことが出来る教師が求められる。当然αに属する生徒は懇切丁寧な授業をぜずとも一通りの説明で基本が理解出来て当たり前という認識だ。

 となると、生徒にとって基礎を理解しやすく噛み砕いて講義してもらえるクラスというのはγ、βという順になる。

 その為、一旦クラス分けが発表された後の一日で自主的なクラス移動を申し出ることが出来ることになっている。もっとも下位クラスから上には移動出来ないが。

 ようは自分で自分の力量を見極め選べということだ。

 もちろん定期テストごとにクラス替えが行われることになっている。



「テストまじヤバイーっ。オレ死んだぁ~」


 昨日のHLでクラス分けについて説明されての今日だ。席近くの同士平凡男子と机に寄りかかり立ち話していたら、朝の挨拶もそこそこに羽柴が机に懐いてゲーっと言った。

 鷹成はまだ登校していないから、まだ教室の空気は表面上のんびりしている。

 あ? 車まで出迎えに行かなくていいのかって? 俺は執事でもなけりゃ護衛でもねーから。ただの幼馴染だから。コレ重要。

 いきなりのチャラ男乱入にナニこの生き物と顔を見合わせるので「これが昨日言ってた同中出身、高校デビューの羽柴。噛み付かねーから大丈夫」と言っておいた。むしろ人見知りしないフレンドリーなお祭り男だ。チャラ男属性が入ってよりアホっぽくなった気がしなくもない。


「二日目でテストってすごいよね。宿題も多かったし、さすが私立の超進学校って感じ?」


 いやお前、クラス分けしようって趣旨なら早々にテストしたいだろうよ。

本音としては入学前にやりたいくらいなんじゃね?


「入って早々の実力テストなんてどこの学校でもやるんじゃねーの? 宿題はどーだか知らんけど」

「受験終わったー!ってヒャッハーしてたらアレだったから絶望したよね……。中学でやってない問題なかった!? 超悩んだんだけどっ」

「あー……」


 茶髪な頭をふるふるして恨めしげに俺らを見る羽柴に、顔を見合わせていた同士がああと合点がいったとばかりに頷いた。


「お前ら外部だもんなー。オレら基本中高一貫教育ってことになってるから、他の学校と授業進度が違うんだよ」

「そうそう。大体五年間で中・高のカリキュラムを終わらせて、高3入ったら即、受験勉強ってなるわけ。だから俺ら去年の途中から高校の教科書使ってたぜ」


 入学パンフとかにそういう事書いてあった気がするんだけどな。

さては羽柴、読んでねぇな?


「うおあー!まじかーっ。真剣にテスト自信ないッ。あ、芦沢は!? 仲間だよ、な?」

「一緒にすんな。俺は鷹成の野郎のおかげさまで内部生と条件多分変わんねーよ」


 だって中学三年間ここのテキストだのテストだのやらされたからね!? あんの鬼ッ。

 あいつ出来は良いけど、教えるのは下手だからっ。

あれだよ、苦労せず理解出来る奴って、理解できない奴がどこで躓くかとか、何故理解できないのかが分からんからダメなんだよな。

 いいか野郎ども。教えてもらうなら努力型の秀才タイプの奴に習え。苦労してモノにしてきた奴が良い。…多分な。


「ないわぁああああ! こんのいけずぅぅぅ」

「うっせ、エセ関西弁ッ。つーか、なんでそんな基本情報知らんのだお前は。受験勉強やってる時点でわかるだろ。一応入学してから困らないレベルの生徒を選抜するための試験でもあるんだぞ。当然受験問題の中にも高校の内容のもんが入ってたろうが」


 各教科ほんの二、三問だった気がするが。その割に配点高そうだったけど。


「オレ、カテキョに言われるまま仰山詰め込んで受験してんから知らへんわ!」

「疑問に思えっ」


 頭痛くなってきた。

まさか内容理解しないで完全に詰め込み方式でクリアしたんかよ。暗記か。暗記力の勝利か?


「おい、じゃあ宿題の方はどうしたんだよ」

「せやからカテキョ」

「……他力本願乙。ちゃんとパンフ読んどけぼけぇ。で、エセ関西弁になってんぞ」

「! はよ教えろください! ああああ、オレのイメージがっ」

「初めからメッキですぐ剥がれるっつーの。諦めろ」

「いやっ。まだ大丈夫っ。大丈夫」


 頭を抱えていた羽柴はパッと起き上がると教室の中心に向かってビシッと指を突き出した。

何やるのかと見ていたら指をそのままぐるぐる回し出すし。何やってんだ。


「いいかな諸君。さっきまでのオレのことは忘れるんだ。オレはたった今教室に入って来たところなんだ。『おはよう!いい朝だね……』」

「「「お、おはよう。羽柴君……?」」」

 付き合いいいな、やっぱこのクラスの連中は!


「じゃあテスト頑張ろうね」

 ヤケクソの入ったキラリ笑顔で、バチッとウインクを女子に流すと自分の席に颯爽と去っていった。

 あれか、指のぐるぐるは記憶を消去させようとかそういうアクションか。トンボじゃなく。


 馬鹿だろう。


 爆笑したいけど出来ない。突っ込み入れたいけど出来ない。実に優しいクラスメイトである。

 席について耳まで赤くしてプルプルする羽柴を生温かい目で見守るそんな微妙な空気の中、何も知らない鷹成が何食わぬ顏で入って来てようやくそれが霧散した。

 鷹成に感謝したほうがいいぞ、羽柴。


「よう、おはよう」


「ああ。なんかあったのか」

 空気に気付いたらしい鷹成が聞いてきたが大したことじゃない。

肩を竦めて首をふる。


「別に。ちょーっと笑える事があっただけだな」

「ふん」


 おい、ふんぞり返って睥睨すんの止めれ。せっかく和んでた空気が凍るだろうが! 正直実力テストが控えてたせいで羽柴がアホやる前まで微妙にぴりぴりしてたんだよ。

 なんでって、そのまんま。テストのせいだ。そしてこの学校が良家の子供が集まっているせいだ。

 良い家柄を持つほど見栄だとかそういったモノに縛られる。たかが一学園のテストだが、“たかが”と言える者ばかりではないってことだ。

 またそうでない者にしても彼らの価値観に影響を受けるし、そもそも試験となればより上を目指すもんだろ。

 上位クラスってなれば実際に態度には出ずとも威張れるというか、優越感に浸ることが出来るし誇らしいだろう。

 ましてや学内におけるカーストには家柄、容姿と、当然学力も含まれる。このあたりは普通の学校とはポイントが違うところだ。まず家柄だからな。

 プライドがバカ高い連中が多いし、同等または似たような家柄だったりするとまた競争心がすごい。……らしい。親からプレッシャーかけられたり、社交の場で子供自慢するようなのもいるだろうし。

 ってか、無理やり連れてかれたパーティーとかで自慢してるどっかの偉いさんなオヤジ見たことあるしね! あんたの手柄じゃないんだけどね!

 だから今日は朝から学園全体でピリピリムード。その空気を羽柴が自分を犠牲にして(ぷーすく)ぶっ壊してリラックスさせてくれたってのに。まったくイケメソ二人は頭痛いわ。この問題児め!

 ふんぞり返る鷹成をちょいちょいと指で呼ぶと、素直に顔を近づけてくるし。俺はにやーっと笑うと両手を伸ばし頬を掴んで左右に引っ張ってやった。

ちっとは和やかなツラしやがれ!ぼけぇ。


「!!」

「鷹成ちゃぁ~ん。無駄に威圧すんの止めましょうねぇえええええっ!」

「ふぁなふぇッ」


 暴れる鷹成とびろーんと引っ張る俺に周囲はドン引き。

うん、まあわかるけど。珍しいもん見れてラッキーだね、諸君。

 本格的に怒り出す前に弾くようにダメ押しに引っ張って放した。


「直也、お前なぁ!」

「ドアホ、お前が悪い。これからトップに立とうって人間が愛想笑い出来んでどうする」

「しなきゃならん場ではしてる」

「ド下手くそだけどなっ。練習しとけ。それから無駄に威張るな。敵を増やすぞ」

「チッ、そんなこと言う奴はお前くらいだ」

「イエスマンばっかじゃなくて良かったなー」


 素知らぬ顏で言ってやる。実際のところこいつの周囲には追従したり媚びへつらう奴が多いからな。

 むしろ俺のような奴の方が異端だ。これでアレコレ難癖つけるようなら俺はこいつを見限るけど。イエスマンが欲しいなら俺は必要ないし。  

 鷹成は頬を撫でながら渋い顔をしていたが、ふと息をついてそのまま髪をくしゃりとつぶした。


「ほんと直也はズバズバ言いやがる」

「幼馴染相手に媚売ってどうする」

「…そうだな、熱でもあるかと思う。じゃあ後でな」


 手を振ると鷹成もまた席に去っていった。

 ちなみに最初俺と話をしていた平凡仲間はとっくの昔に退避している。

 ぐるりと教室を見渡せば注目が。おおう、驚愕の目で見られてんよ。まあ仕方ないか。

 俺はにへらっと笑って手をひらひらさせる。そうしたらやっとこ空気が緩んだ気がした。



 テストである。 

 テスト用紙が配れられるのを待つあいつをチラリと見ながら嘆息した。

どうせぶっちぎりの首位なんだろうなあ。αクラス以外有り得ない。

どっちかというと指導する先生ほうがあいつの頭脳に追いつけなくて苦労するんじゃねーかな。

 クラスメイト達は適度に緊張している。クラス分けがかかってるからな。

 教師側は見栄をはらず身の丈に合ったクラスに行けというが、どれだけの生徒がその通りに出来るもんだか。

たとえ授業内容についていけずとも、なんとしてもαクラスにしがみつきたいってもんじゃないのかね。そして中には理解できないまま授業を受け続けて成績がガタ落ちする者もあるらしいけど。

 俺は入学したばかりでどこのクラスが合っているのかわからない。授業レベルもそうだけど、先生って相性ってあるだろ。

 内部進学の連中は中高一貫教育がなされていて、教師は中・高間の授業を行き来しているから生徒側にとってはどの先生が自分たちにとって当たりなのか情報があるが、俺は無いからさっぱりだ。

 α担当が優秀だからといって、俺にとって最善なのかどうかなんて分からない。

 加減をしてβクラスあたりでお茶を濁すって手もあるが、それもなー。テストに全力を尽くさないっていうのは主義に反する。

 どうせなら授業見学出来りゃいいのにと無理なことを考える。

そもそもまだどの先生がどのクラス担当かって発表ないしね!

 まあいいや、出たとこ勝負だ。真面目に受けて普通にαに入れないかもしれないし。いや本当はそれじゃ困るんだけど、初めてのテストだからどの程度の順位が取れるか見当がつかん。

 クラスは本格的授業が始まってから移動は考えればいい。幸いというか、なんというか、鷹成のお陰さまでこちらのテスト形式自体には慣れてますからね!

 ホンット執念深く中学三年間色々やらしてくれたよ……。


 そんなこんなで受けたテストはまあ大方出来たんじゃなかろうか。少々わからんのもあったけど、そんなもんだろ。

 羽柴は……見事に燃え尽きとるな。予想通りだ、問題ない。

 ってか、チャラ男会計って成績どうだったかな。生徒会って家柄、顔面に成績もある程度良くないとダメだったような記憶があるけど。どーだっけな?

 担任が本日の授業終了のお知らせに来る前に羽柴の所にいってみる。突っ伏した茶髪がサラサラだ。その頭に手刀を入れる。


「ぃダッ!」

「おーい、羽柴。生きてるか」

「しんだー。なにあのテスト。すんごく問題数多いわ、細かいわなんだけどっ」

「ここじゃアレが普通らしいぞ」

「とんでもないとこ来ちゃったなーあ。オレどうしよう」


 頭抱えておる。

確かに今までのテストと全然レベルが違うわな。

本当に問題数が半端なく多いんだ。ペース配分間違えるとアウト。最後の問題までたどり着けん。

しかも、ちょっと問題が分からないからといって長々と悩む時間なんかない。問題を見たら速攻で解く、書く。それしかない。

日頃の勉強の成果がその場で、採点されるより以前に解いてる最中に反映されるという世にも恐ろしいテストだ。

 だからとっとと慣れて、とにかく死角なく勉強するしかなかろうよ。


「そういえば、なんでお前この学校受験しようと思ったの」

「それだよ! 芦沢のせい」


 ガバッと頭を上げた羽柴はとんでもない言いがかりをつけやがった!

 もっかい手刀だ、手刀。人のせいにする不届きな奴には制裁である。


「わわわ! きっかけっていうか、うっかりオレが親の前で口を滑らせちゃったんだけどっ」

「何が」

「オレ、生徒会で芦沢に勉強教えてもらって順位あがったじゃん。それ見た親に褒められたんだけど」

「はあ」

「なんで急に成績良くなったのか聞かれて芦沢のこと言ったわけ」


 それがなんで「芦沢のせい」になるのだ。意味わからんのだが。

訝しげにする俺に、情けなさそうな顏でへにゃりと笑う。


「主席で、ここの学園志望なんだってって言ったら、じゃあお前も目指しなさい! ってね」

「ますます意味不明」

「いやー、目の前に具体的な目標があれば頑張れるだろうって。この調子でやればもっと成績が上がって合格も射程範囲内になるに違いないって感じでね。本当はこの学園に行かせたかったらしいんだよ。そんでスパルタカテキョがつけられた……」

「俺は鼻先の人参か」

「まあそんな感じ? 実際目安になったしね」


 なんだかなーっ。

むしろそれなら俺のせいじゃなくて、俺のおかげというべきだろ。畏れ敬えこのヤロウ。


「で、結局今日のテストは手応えなかったってか?」

「なんかねー、とにかく急いで書けるもの書くって感じで全部埋めれなかったな。全然余裕なくてダメージでかいわ」

「大丈夫!みんなそうだから」

「そうそう、心配ないよ羽柴君っ」

「解答欄全部埋められる人ってほとんどないの」


 聞き耳立ててたらしい女子が、羽柴が嘆いた途端にわっと割り込んできてちょっとビビる。

しかし、ちょっと待て。


「なに、慣れてる君らでもそうなわけ? マジで?」


 内心目を丸くする。え、だってあれがここの標準なわけだろ。慣れてんだろ? 本当かよ。


「びっくりした? でも本当だよー。先生たちも全部埋めれると思ってないし、何問か残しちゃうのが普通なの。やれる人って本当に上位の人達だけって話だよ」

「そうそう、だから心配しなくても大丈夫」


 その言葉に元気を取り戻したらしい羽柴は途端に笑顔になった。

うわー、落差激し。つか、お前スイッチ入れ替わっただろ、タラシモードに。


「本当に? それなら安心していいかな」


 甘ったるいキザな声出しやがった! 目を細めて口角を緩やかに上げて明らかに狙ってるぜ、こーいーつーは。


「うん!絶対大丈夫」

「ねえ、どの問題が難しかった?」

「ああ、それなら……」


 なんかもうアホくせー。放置だ、放置。巻き込まれん内に去ろう。

 このまま羽柴に食いついたままならいいが、こちらを伺ってる女子の一部の動きが怖ぇ。完全に視線の標的が俺。どうせ鷹成情報を引き出そうって腹だろ。

 この場合、平凡同士の所に行ってはいけない。殺る気満々肉食女子は歯牙にもかけない野郎には遠慮ないから割って入ってくる。拒絶すれば「か弱い女」を全面に出して「酷いっ」と言ってこちらを悪者にして断れない状況にしてくる確率が高い。

 ならば。鷹成のとこにいってしまえー。ぜってぇ来ないから。はははのはー、なんたる皮肉。

 あいつのお陰さまの厄介事なのに、離れるんじゃなくて近づくことで牽制ってねー! なんだかなあ。


「お前どうして女子に冷たくなっちゃったの。小学の時はそれなりにしてただろ」


 はっきり言って、鷹成に秋波を送る女子へは俺の方が冷たい対応していたのだが。

基本的に女性には優しくが標語だが、あいつらについては別。

俺のこと見下してくるから超ムカついたんだよっ。悪かったな平凡顏で!


「あいつらは煩い。特に家柄が良くて顏の良い奴ほど押しが強くて勘違いが甚だしい」

「それはあれか、入学したら即群がられた、と」

「あの時は酷かった。厚かましいのがいたからな。女には優しくなんて思ってたが、そんな甘いことを言っていられるレベルじゃなかったから切り捨てた」

「で、今に到る…か」

「正直、お嬢様の方が始末が悪い。俺個人より明らかに東雲家目当てでな。親にも何か言われてんだろう」


 純粋にこいつの顔面に惹かれた子もいただろうに。

ん? ツラ目当てって時点で純粋じゃないってか?入学早々じゃ中身に惚れるとかないだろう。

 ただ家柄に顔良し、能力有りの優良物件だから、嬉々として欲まみれで群がるお嬢は多かろう。

 ていうかお嬢様か。

そんなかにライバルキャラいるんじゃなかろうな?

 正直どーでもいいんだけど気にならないといえば嘘になる。

今の幼馴染関係でいる限りこいつと付き合う相手とはどうしたって接触せざるを得ないし。面倒なお嬢は嫌だ。キリッと御免被る。


「あー、ご苦労さん。じゃあ男子の方も似たようなもんか?」


 問答無用で連れて行かれたパーティを思い出した。

あそこはまあ、本当になあ。

表面は華やかで煌びやかだがうんざりする場だ。東雲家に媚びへつらう輩が群がろうとする。

ここでもそういう事なんだろうか。


「取り入ろうとする奴もいるし、逆に敵愾心を燃やしてくる奴もいる」

「鬱陶しいな」

「まあな。だが今年からは直也がいるからな。頼りにしてる」

「へいへい。ま、ボチボチやるさ。期待すんなよ。ここは俺にとってホームグラウンドじゃねーんだから」


 むしろアウェーだろ。小学の時みたいにするってのは無理ゲーじゃね?

 財閥御曹司なんて普通に考えたら雲の上。どんな性格かはっきり分からなければ容易に近づけるもんじゃない。

擦り寄ろうとか考えない場合、東雲家より劣る家柄、でも庶民ではないという立場であれば、何か地雷を踏めば家、会社共に吹っ飛ぶかもしれない。

そうなればその企業に勤める社員にまで影響は及ぶ。そんな風に見れば距離を置かざるを得ないと考えるだろう。

 そういう対応を見れば、庶民な学生もそうそう気楽に声をかけることは多分出来ない。そうでなくとも気後れするだろうし。

 鷹成は別に家の権威を振りかざすような真似をするはずもないが(やってたら縁切ってやんよ)、他家にそういう横暴な振る舞いをする奴があれば警戒するだろう。

 まったく厄介な学校だぜ。

 公立の庶民の有象無象集団と違って、ここじゃ家同士の利害関係という余分な要素まで入ってくるんだから一筋縄じゃいかねーよ。

 こいつは当たり前だが小学生時よりハイスペックになってるし、一般生徒との間にある壁ってのは分厚くなってる。

例え家柄を知らず先入観がなかったとしても、このハイスペックな能力に美形なツラ、カリスマ性に加えて人を寄せ付けない雰囲気だ。普通の生徒じゃそうそう声をかけられなかっただろう。

 小学ではきちんと理解出来てないから同じ子供という対等の立場でいられたが、高校生となった今では背景が邪魔をする。

 たった二日間の学校生活だが本当に友達らしい人物は見当たらない。上の学年には側近確実な先輩がいたはずだが友達枠じゃないしな。

 とりあえず、このクラスは非常に雰囲気がいいから此処からなじませるか。

 ってか、なんで俺が今更そんなことしなけりゃならんのだ! お前高校生だろ、自分で何とかしろ御曹司!


「別にこのままでも構わないが」

「はぁ!? 人材発掘は!? 見極めは!?」

「問題ない。後で話す」

「じゃあさっきの頼りにしてるってナニ!?」


 無言でシェイクハンドすんな。意味わからんわ!

 ホスト担任が入ってきてお開き。お後がよろしいようで?



 本日の日程が終了となれば、午後は部活見学だ。

 鷹成は入る部活は決まってるらしく、見学はせずに帰宅するそうだ。俺はどうするかな。まだ時間はあるから後でゆっくり見学しながら考えよう。

 もっともその前に職員室まで行かなければならない。俺たち外部生四人は連れ立って担任の元へ向かった。

 渡されたのはプリント一式。スケジュール表と課題のようだ。


「なんすか、これ」

「高1教科書に従った問題だな。お前たちは中学で高校の内容は習っていないはずだ。だが内部進学生は既に半分は終えている。受験を突破してきた以上は一応自分たちで習得してきているとは思うが念の為補講を行う。その為のプリントだ」

「随分親切ですね」


 ちょっとびっくりした。

助かるけど、そういうことやる学校ってのは珍しい。

大体において「わかって入学してきたんだから出来て当然」というスタンスを取りケアがないのが普通だ。

だからせっかく入学しても、その空白を埋められず落ちこぼれる場合が多々あるし、とにかく追いつくまで必死になると聞く。


「以前問題になってな。退学者が多数出ることになってこちらも慌てたわけだ。その反省を踏まえて外部進学生にはまず補講をってことになった」

「えっとじゃあ受講日までに指定されたプリントやってくればいいんですか」

「そうだ。教科書を見てその練習問題やっとけ。分からない所をチェックしておくこと。補講のたびに確認の小テストをあわせてする。授業のテストと違うから変に気負わなくていい。お前たちの足りないところをチェックする為のものだからな。素直に分からないところは、どういう所が理解できないのか明白にできれば一番だ」


 おおお! まじか。マジで親切設計! 至れり尽せり具合はちょっと感動もんじゃね?


「それだけお前たちには期待がかかってるってことを自覚しておけ。三年後には最高学府に現役で合格を目指してもらう。特に特待生待遇の芦沢、わかってるな? 常に総合十位以内をキープしろ」

「ういっす」


 これがなきゃなー。自分で決めたこととはいえ、プレッシャーだよな。

普通の学力特待なら二十位以内でOKなんだけど、その上だからなあ。学費に加え寄付金とか設備費の免除が大きいんだよ。一般庶民な家庭にしては裕福だし、それらが出せないわけじゃないんだけどさ。

 うちはとにかく三兄弟で、上は二つ上に兄貴。三つ下に弟だから、全員が大学進学した場合二人重なる時期もある。とにかく金がかかるんだよ。なのにこんな金食い虫学校に(鷹成のせいで!)引っ張られたから、せめて特待得られるならって思うだろ? 

兄貴も普通に公立行ってるし、多分弟もそうだろう。

なのに俺ばかり私立ってのがな。別に後ろめたく思う必要も、気にする必要はないことはわかってるけど、なんとなく、だ。

 苦笑いの俺を面白そうに眺めたホスト担任は椅子をぎっと鳴らして体重を預けると、他の三人を見るとにやりと笑う。


「あとの三人も頑張れよ。……というか、羽柴はまあいいか」

「なんでオレだけ! 差別っ」

「お前はなあ、本気で入試ギリギリだったんだよな。チャラチャラ浮ついてねーで、赤点取らないようにやれよ」

「ギリギリだろうとちゃんと合格してるんですけどーっ! ほんとにオレだけひどいっ」


 嘆く羽柴がホスト担任にギャーギャー噛み付いていたが、そんな事はどうでもいい。問題はそれじゃない。

 ちゃらちゃら……だと?

 思わずふんぞり返る担任をまじまじと見てしまった。

それは大人しく聞いていた二人も同じなわけで。どっからどー見てもチャラさ加減は羽柴より上ダロ。己の姿を鏡で見てみろ。なんであんた教師なの。

 今、残る俺たち平凡外部生三人の心はまさに一つになった。


「「「ホスト教師に言われたくないです」」」


「貴様ら……」


 あっけに取られた間抜け顔。美形はそんな顔しても様になる。

滅びろコノヤロウ。次の瞬間唸るような声がするが、その先はいわせない!


「それじゃあ失礼しましたー!」

「補講頑張ります!」

「ありがとうございました!」


 満面の笑顔を向けて言い放ち、それと同時に離脱! 即離脱!

 目が点になっていた羽柴を掴んでとっとと職員室から逃亡したのだった。  

 

 あー、部活見学どーすっかな。


目薬が合ってたひゃっほー!としてたら油断しました…。ばかぼーん。

ちなみに活動報告で更新まで時間かかりますとか書くと早く書き上がるクセがありまして。なにそれジンクス。

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