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お待たせしました、高校生編です。

短くて申し訳ないです~。

幼馴染の名前がやっと決定したっていう。ずっと「幼馴染」という名前だったw

 ああ、入学してしまった。

 またあいつと一緒の超絶面倒くさい日々よコンニチワ。お久しぶりでございます。


 朝っぱらからどんよりである。

 高校までの道のりは、あいつは自家用車での送迎。俺は自転車。

 一緒に乗っていくように誘われたが断った。せっかくの愛車に載らないとつまらないし何より目立つ! それとあいつが乙女ゲー世界の攻略対象者ということも考慮スマスタ。

 将来的にひょっとしてヒロインと相乗りイベントとかあるかもしれん。そこへ俺が一緒にいたら台無し……というのは建前で、そんな事態になれば脇役Aのことなんざ眼中にねーだろうし、ピンク空間にソンザイするなんざ耐えられねえ!

 ってわけで、雨の日だけ相乗りさせてもらうことに落ち着いた。

だから登校時は絶対雨降るな。断固断る。下校時?んなもん、濡れて帰ればいいじゃん。問題ない問題ない。

 ちなみに脇役Aとは俺が芦沢だからA。間違っても脇役筆頭ってわけじゃなく頭文字A。血液型でもなく、DでもなくA。実に単純な話である。

 だから他にも脇役Aはいっぱいいるし、日本人の苗字比率から言って脇役Sとか非常に多そうである。鈴木とか佐藤とか斎藤、佐野とか。

そういえば前世で鈴木くん佐藤くんとかいう名前のスナック菓子あったよな。意味不明だったけど。どうでもいいけど。

 


 そういえば入学式。そこで俺は驚愕の事実と行き当った。お前それ詐欺だろう!と。

 掲示板に張り出されたクラス分け名簿を眺めていたら肩を叩かれた。この学園での知り合いといえば幼馴染みくらいで、そいつは当然のように俺の隣に立っている。

 おかげで視線が凄まじく痛い。

幼馴染は内部生で持ち上がりなのに対し、俺は今日から通学する外部生。有名人なイケメンの隣に当然のように見知らぬ平凡とくれば「なんだこいつ」という目でも見られるからたまったもんじゃない。久々の状況にうんざりし、正直あっち行け!と言いたいが我慢、我慢で耐えている。


「芦沢~。またよろしくねぇ~」


 耐えていたらこれである。

 肩を叩かれ、馴れ馴れしく肩に肘をかけてきた見知らぬ少年。なんじゃこいつはと思いその腕を払い落とすと「ひっどー」と文句が。

 ちょいと凄んでやろうかと改めて見やるとチャラ男。

入学式というのにシャツのボタンの上の方はとまっておらずはだけていて、首にはシルバーアクセサリがぶら下がっている。髪を三本のピンで留めている。って、お前女子か! 

 この学校にこんな派手な男の知り合いはいないはずなんだが……。


「……んだお前」


 半ば反射的に低音で凄む。

驚くよりもムカツキの方が先に立つあたり我ながら大概だ。

俺の睨みをものともせず、明るい色の茶髪のチャラ男は目を見開いて俺の顔を覗き込んだ。


「副会長ってばひどー。俺とお前の仲やんかー」

「はぁっ!?」


 俺をそんな風に呼ぶ可能性がある奴といえば同じ中学の羽柴しかいなかった。

そういえば何故か羽柴も同じ高校に合格してたと思い出す。

 俺は約束があったから受験したが、何故受験する気になったのか聞いたことはない。三年になった頃は無理せず成績にあった学校を適当に受験するとか言っていたはずが、いつの間にか同じ高校を受験することになっていた。

おかげでとっ捕まって勉強会をやらされた。……眼鏡くんも巻き込んでやったが。

 しかし春休みのうちにすっかり羽柴のことを忘れ去っていた。

幼馴染みなあいつと同じ学校に通う巨大な弊害と、乙女ゲーな世界の主舞台上に入学ってのに意識が全部持ってかれてて忘れてたんですぅー!!

 そもそも中学じゃ、こいつと同じクラスになったことないし、接点は羽柴が生徒会長で俺が副会長だったっていう言わば教師の下僕仲間。いくら勉強会をやってたといっても気分的には知り合い程度。

 っていうか。


「お前、ナニ高校デビューしてんだよ!?」


 つまりはそういうわけである。普通の黒髪の悪ガキ的フツメンちょっと上だった筈だが、なにその変身。

 さすがに中学出たてで、まだまだガキ臭いけどイケメンフェロモン出始めてますよアンタ、詐欺だろう!

 お前エセ関西人じゃなかったんかい!髪まで茶髪にしちゃって、どゆこと。美形にヘーンシーンしてんだけど反則じゃね?

つか、たった2週間やそこらでナニがあった羽柴ーッ!

 しかもなんか、その姿にデジャヴ。正確にはもっと少年を脱した成長後の姿を透かし見て、驚愕する。


「羽柴…下の名前、なんだっけ……」


 力なく、引きつり呟く俺に羽柴が大げさに嘆いて見せた。その間幼馴染は無表情でしらーっと傍観である。


友明(ともあき)だよー。なに覚えてないの。ホントにひどくない?」

「……」


 羽柴友明。

 ちょ、ま。マテ。ちょっと待て。その姿、顔って、なんで今まで気づかなかった、俺! 幼馴染の時は名前でピンと来たってのに、こいつに関しては今の今まで気づかなかった。

 思いきり攻略対象じゃねぇかーッ!

 いわゆるあれだ、チャラ男会計って奴。

 おかしい、こいつただのお調子者なだけで特に美形って感じでも軟派って感じでもなかったぞ。

 本気でナニがあったー。

 おいちゃんに正直に話してごらん。いきなり弾けやがってどったの。


「やだなぁ、芦沢く~ん。似合った格好と趣味を追求しただけじゃ~ん」


 口調まで変えやがった!


「半径3m以内に近寄るなチャラ男」

「え。ちょっと外見変わっただけで酷くない?」


 あいつだけでも厄介なのに、なんで増えてんだよ。女子の肉食的な視線がっ。

また俺出汁に使われんのか!? イケメンなんて滅びてしまえ!

 関わりたくねぇ。心底嫌だ。俺は幼馴染だけで手一杯。

あっちいけ、えんがっちょ!!(古)


「ぢゃ!」


 スチャッと片手を挙げ、羽柴とついでに幼馴染を置いて逃げようとする俺。

だが腕を羽柴に、肩を幼馴染にがっしと掴まれ逃亡は阻止された。

幼馴染よ、今まで他人のふりで傍観してたくせに、いきなり息ぴったりに参戦してくんなっ。

 畜生! 離せっ。イケメン二人に挟まれた平凡を哀れと思わんのかお前ら。もう周囲から視線が痛い痛い。釣り合ってねーのはしってんよー!

 中等部からの持ち上がりで学内で注目度ナンバーワン有名人と思われる幼馴染。その上、系統の違う顔面整った見知らぬチャラ男が並んでるとなれば、女子からすれば垂涎だろう。ああああ、もう周囲の反応が昔よりパワーアップしてる上に二倍!

 眼福な少年二人。なのに真ん中にはそぐわぬ平凡な俺。携帯のカメラを構える女子から邪魔とばかりに鋭い視線が飛ぶ。


 デースーヨーネー。オレ、ジャーマーデースーヨーネー。


 痛い視線は女子ばかりじゃない。男子からもある。

好奇もあるし敵意も。バカ野郎二人に妬み嫉みな敵意ってのはわかるけど、なんで俺にまでくるかね。うぜぇええええ!

 ほんと俺、消えたい。空気って、イイよね。

 虚ろに逃避していると、幼馴染に頭を叩かれ引っ張られた。


「体育館行くぞ」


 嗚呼入学式デシタネ。体育館でしたっけね。


「あ、オレ羽柴友明。あんた芦沢君の幼馴染っしょ?」

「こいつ中学の生徒会長やってたんだわ」

「ああ、押し付けたっていうあの話か」


 幼馴染は不遜にも羽柴の挨拶にスルーして行きそうだったが、その無礼ぶりに慌てて腕を引き止め補足すると、やっと羽柴をきちんと見た。

値踏みするような険しい視線だったのがいただけないが、羽柴の方は何故か面白そうにしている。当人が気にしないならいいが。

俺の幼馴染に対する今までの認識との差に違和感を感じる。

初対面に奴にこんな無駄に威圧感出して睨むような奴じゃなかったはずだが。


「羽柴というのはあの羽柴か?」

「んー。黙っててくれると助かるんだけどー。ついでにいうと『東雲』には興味ないから。単に芦沢のトモダチで今一緒にいたから挨拶しただけの話だから、そこんとこヨロシク」


 あのって……。あー、あー……。そうだよ、こいつも攻略キャラだから家柄良いはずだ。ってか、セレブの端くれ。

ちょっと待てよ。脳内前世辞書検索かけて…。

 やっぱりか。幼馴染の所からしたらかなり格下だけど、とあるアパレル系企業の社長の次男だ!

 うわ、めんどくせ。だからチャラ男か。そうか、だからか。

しかし中学でそんな噂聞かなかったけどなー。別に情報通ってわけじゃないけど、知り合い多いから結構色々情報入ってくる方だったのに知らんかったぞ。

 待てよ。そういう背景があるからこの学校に来たのか?

セレブな階級な家からするとこの学校に在籍するっていうのはステイタスの一つだとかなんとかって話だったよな。最初受験するって話じゃなかったってことは、親に言われたとかそんな感じか。

 さらに社長の息子ってのを黙ってて欲しいと言っていることから考えて、中学では意図的に隠してたっていうのが正解か。

 ついでに幼馴染の態度。

羽柴の背後を見抜いた上で、取り入ろうとしているかもしれないと警戒を敷いていたってことか。

 だけどまず羽柴はナイな。どう見ても、どう頑張っても最初から興味があるようには見えなかった。あくまで俺という友人のおまけというスタンスでしかない。

 そう、あえていえば俺が今まで愚痴ったりしてた噂の幼馴染をちょっと見てやろう程度の軽い好奇心。面白そうならちょっかい出してみるか的な。

 それをわかったのだろう。ブリザードを引っ込めて、口の端を少し皮肉げに持ち上げた。


「なるほど。……俺は東雲鷹成しののめたかなりだ」

「程ほどによろしくー」


 にへらっと笑う羽柴。

あー、握手しないんですね。あー、あー。羽柴もいつの間にかポケットに手を突っ込んでたよ。

警戒は解けたっぽいけど、友好的とは言い難い。あえて言うなら中立?


「あー、もう行くぞ」


 色々面倒くさくなった俺はとっとと歩き出した。

 さっと鷹成が俺の隣を無言で歩く。羽柴はギャラリーの女子ににっこり笑って愛想を振りまくと、ゆったりとした足取りながら追いついてきた。反対側に並んで雑談をする。

 桜の花びらがちらほらと舞う中、野郎三人並んで絵にならない。はずだが。両隣のイケメソのせいで俺的常識が覆される。

 視線が痛い。

 ちらちらと押し殺した黄色い声と共に投げかけられる女子のピンク目線。そして、挟まれる俺への「邪魔!」という殺人光線。


 ……もう俺、泣いていいか。


「ところでさぁ、羽柴。なんでイメチェンしたの。話し方まで変えて」


 まさか乙女ゲー攻略キャラだからっていう電波な理由な訳ねーし。中学の時にも友達感覚で人気があったがモテるキャラではなかった。

それがどうしてこうなった。

周囲を行く女子に愛想ふりまいてんだけど!完璧にイケメン自覚ありな行動だよな。

 あまりの変わりように聞いてみると、勢いよくこちらを向いた。


「オレ、いつも『いいお友達』でふられるんだよ。卒業式前に告ったら、また!今度こそと思ったらまた!で、キャラがあかんのかっつー結論でイメチェン!ほれ、オレ元はいいからー。ついでに趣味と親の会社の宣伝的な。この学校って校則ゆるいし好都合っしょ?」

「あー、あー、ご苦労さん」


 他に言いようがない。モテの為かよ。

いいよな、元が良いからとか言える奴は!滅べっ。


「元生徒会の連中と賭けもしてるから頑張んないとさー」

「賭け?なにやってんだ」

「バレンタインに幾つチョコ貰えるか競争や!」

「あほか!来年じゃねぇか」


 あほだ。アホすぎる。

ふられイメチェンよりもそっちの理由がメインなんだとさ。


「オレはやるでぇー!」


 馬鹿馬鹿しい変身の理由に呆れ果てる。

そんな理由でチャラ男会計が出来上がるのかと思ったら目眩がした。



次は先生が登場予定…は未定←

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